高齢になって、介護が必要になった時のための、大切な備えは?
どこの病院、施設でも問題のある患者さんはいるものです。そんな患者さんが一人いると、患者対応に職員の時間も労力もかなり割かれることになるのです。
こんな患者さんの問題に対して、〇〇部長が私に大声で言うんです。「カスハラだよ!すぐにでも退院させたいくらいだわ!」
それは私も同感ですが、退院先が決まっていない患者さんを強制的に退院させるわけにもいかず、間に挟まれて、私も辛いところです。そして、言いたい、「〇〇部長もカスハラだよ!」って(笑)。言えないけれど(笑)。
と、こんなことが日常によくあるのですが、実際どんなことが起きているのか、少しフィクションも混ぜながら書いてみようと思います。
家に帰りたい患者さん
70代後半の男性、もともと一人暮らし。
介護サービスを利用しながら、なんとか一人での生活をしていました。数か月前に自宅で転んで腰の圧迫骨折になりリハビリテーション病院でリハビリを行ったのですが、1人暮らしは難しいだろうということで、施設を探す間だけということで当院に入院となりました。
入院して2~3週間たった頃から暴言が目立つようになります。
「こんなところにいたくない」
「家に帰りたい」
「思うようにリハビリもしてもらえない」
「ご飯がまずい」
ちょっとここに書けないようなひどい言葉を投げかけられることも増え、そして必ず女の職員に言うんです。大声で。
やっぱり、カスハラと言われても仕方がないですね。
たぶん、患者さん本人はリハビリテーション病院から自宅へ帰るつもりだったのに、別の病院に来てしまった不満が募っているようなんです。そして、入院してから面会に来ない娘さんへの不満。思うようにならない入院生活への不満。それがすべて職員に対する不満、暴言になってしまうのです。
そうなると、当然、退院を早くすすめましょうという話になってきます。
これが現実です。
退院をすすめたいけれど
退院を進めるにはハードルがいくつもあります。だからこそ、入院しているわけで・・・。
・金銭的な問題
・家族の介護力がない(キーパーソンである娘さんは介護はできない)
・独居
・日常生活に支援が必要(移動に介助が必要)
退院の調整を図っていくためには、家族としっかり話合い、退院先を決める必要があります。つまり、自宅に帰るのか、それとも施設に入居するのか。
それを、相談するために娘さんに何度も電話をするのですが、なかなか繋がりません。「わざと?」って思いたくなるレベルですし、こちらの時間も奪われます。
そして、一番の問題は金銭面です。施設で生活するためには、やっぱり少なくとも月に14~15万円は必要になりますが、ご本人さんの年金はその半分くらい。家族は不足分を出すことが出来ないし、預貯金もありません。
そうなると、自宅で介護サービスを利用しながら生活するのが、一番現実的です。完全な自立ではないので、自宅では難しい面もありますが、サービスの組み方である程度の日常生活は支えられるのかもしれません。そして、何より、本人が家に帰りたいと言っているので、それが一番いいんだと思います。
高齢の親を持つということ
それにしても、病院側もしんどいのですが、娘さんの立場になってもしんどい。自分の生活もあるし、親の介護もしなくてはいけないですからね。
家族は、たとえ、直接の介護をしなくても、関係する機関、例えばケアマネージャーだったり、病院やサービス事業者など、いろんなところと調整を図っていかなくてはいけませんし、電話だけではなく実際、仕事を休んで打ち合わせなんてこともよくあります。
家族だって、時間も労力もかかるのです。そして、金銭面の問題があると、やっぱり制約が出来ますから、意思決定の幅が狭まります。
介護保険など、介護の外注化ができるようになりましたが、やっぱりサービス利用をしていく中で、家族と本人の同意はどうしても必要です。なので、完全な外注化は難しいのが現実です。
遠方に住んでいる家族の場合もやっぱり何度かはきてもらったりということもあるのです。
高齢になって、一人で生きていくことはやっぱり難しいことですね。どうしても家族の協力が必要です。
ですから、介護に必要なお金は準備しておくこと、そして、家族関係は良好にしておくこと、そして人に「ありがとう」と言えること、この3つは大事なことだなぁと、つくづく感じます。
あなたはどんなふうに思ったでしょうか。