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成瀬は天下を取りにいく。の天下とは

本屋大賞などの賞を十五もとったという今作を読みました。
成瀬との出会いはAudibleというサブスクサービスです。Audibleは小説や実用書などを声優やナレーターが朗読するサービスです。
たまたまおすすめにでてきたのです。
「成瀬は天下を取りにいく」という戦国時代みたいなタイトルと表紙のかわいい女子のイラスト。そのアンバランスさに惹かれました。
Audibleで聞き、はまりました。
原作小説も購入し、一気に読みました。

成瀬は天下を取りにいくの主人公はその名の通り、成瀬という中学生の女の子です。成瀬あかりの周囲の人々の視点から物語は進みます。
兎にも角にも成瀬あかりという女の子が魅力的なのです。
いわゆるキャラ文芸といってもいいでしょう。
成瀬あかりは奇抜でトリッキーな行動を繰り返します。ただ不思議と成瀬あかりに嫌味はないのです。

まず成瀬の目的の一つが二百歳まで生きるということです。それだけでも突拍子もないのに、けん玉で優勝したり、でかいシャボン玉をつくりテレビに出たり。

物語の冒頭からして成瀬は想像のはるか上のことを言い出します。
親友の島崎みゆきにこの夏を西武に捧げると言い出します。
舞台はコロナ禍の滋賀県大津市。
その大津市にある西武百貨店が八月いっぱいで閉店するというのです。
それに合わせて地元のローカル番組が閉店まで生中継を行うというのです。
成瀬はそのテレビ番組に毎日映り込むことを計画するのです。
ただの目立ちたがりかなと思うと実はそうではない。
成瀬はある人に向けてメッセージを送っていたのです。
この小説はいわゆる短編連作という形で物語が進みます。
そのどのエピソードをとっても成瀬あかりという一本筋が通った主人公のおかげで、物語から目が離せません。

さて、成瀬は天下を取りにいくの天下とは何でしょうか。
物語の舞台は滋賀県で、地元愛が半端ないのです。
続編の成瀬は信じた道をいくでは、成瀬あかりは滋賀県大津市の琵琶湖観光大使になります。
小説内では成瀬あかりのビジュアルは詳しくは描かれていません。
表紙のイラストぐらい。
そこがまた良いのかもしれません。
読者一人一人の成瀬あかりを思い描くことができるのです。
天下とは読者の中にあるのかもしれません。
その人がもっとも大切だと思うものが、天下なのかもしれません。
この物語を読めば、我々は成瀬あかりと共に天下を取りに行くことができるかもしれません。



ラストの話ではやっと成瀬あかり視点で物語が進みます。
島崎みゆきと組んだゼゼカラというコンビで夏祭りの司会をするのです。
ラストは青春の爽やかさを感じさせてくれます。
読了したら、きっと成瀬あかりという風変わりな女の子の事を好きになっているでしょう。
そして僕は成瀬あかりにはまりすぎて、休日の朝ごはんはハムエッグ丼を食べています。

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