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【わたしのジョブ・カード】11,刑務所と心理学と

実は、横浜に行く前になかなか刺激的な出来事があったのです。
それは、刑務所に通うこと。

別に、悪いことをしたわけではありません。

刑務所はほとんど工場となっていて、中に印刷工場がありました。
その中に、私共の機械を導入していただき、その技術指導ということで
通うようになったのです。

本来は、「技官」という先生がいて、この先生に教えて「技官」の先生が
受刑者に教えるということらしいですが、私が取りあつかっていた機械は、
とにかく複雑で、業務を熟知していないと教えることができません。

ということで、私が塀の中に入ることになりました。
一回での時間が大変限られているので、毎回か分けて入るようになり、
そのうち、毎月通うようになっていきました。

初めて入った日のことは、今でもしっかりと覚えています。
とても険しい表情の人たちが多く、非常に厳重な警備の中、トラックと共に塀の中に入りました。
後で聞いたことですが、この日の搬入経路は非常時のみ実施されるということで、
通常の搬入経路ではない為に、いつもより警備が厳重だったとのこと。
確かに、その後その門を通ることもなく、とてもとても貴重な体験をしていたということです。

といっても、そんなことは全く知らず、生まれて初めての体験でドキドキしていました。
極め付けは、技官の先生に聞かれた一言。

「刑務所は初めてですか?」


冗談なのか、本気なのかの判断もつかず、「はい」と答えるのが精一杯。
後々となりますが、この技官先生とのやりとりが、私のキャリアの転機となっていきます。

塀の中から見る塀は、とてもとても高いものに感じました。
この中に、長期間閉じ込められたらどんな気持ちになるのだろうと、
そこから見たどこまでも続く空の広さに、息苦しさを感じたものでした。

納品日は、作業が休みの日で作業している人もなく、とても静かな普通の工場といった感じです。
特に異常もなく、納品作業は淡々と終わり、この日は無事解放されたのでした。

翌週から、刑務所へ通う日々が始まります。
当時の刑務所は、定員をオーバーするくらい入っていました。

聞くところによると、世の中が不景気になると収容される人が多くなり、働く先が多くなると収容者が減るというのです。
仕事に就くことができないと、犯罪者が増える。
一見繋がっていないように思えることですが、とてもとても密接に繋がっていたのです。

最新(令和4年)の収容率は、50数%で、ここしばらく戦後最小を更新し続けています。
犯罪が減っていることも確かなのですが、景気が良くなったというわけではなく、人不足で働けている人が多いとも考えられます。
このように、世の中のことを深く深く考えることができる場所が、刑務所というところでした。

毎回、事務所でコーヒーをいただきながら伺う技官先生の話がとにかく面白く、同時に尊敬をしたものです。
「いつか、こんな仕事についてみたいな」と思うようになっていました。
「困っている人の力になりたい」「働く人が困らないように助けたい」など、
この時感じた思いは、今でも埋み火のように私の心の中にともり続けています。

話を元に戻します。

刑務所で感じた思いを抱きながら、横浜での挫折を味わいました。
大阪へ帰った後、何かを学びたい、学ばなくてはならないという思いに至ります。

「バーチャル・ハリウッド」の仲間と議論した中によく「心理学」というキーワードが出ていたのです。
宣伝広告やセールスの現場でも、心理学めいたものは使います。
でも、これまできちんと「心理学」を学んだことはないと思ったのです。

学生の時、まともに勉強したことはありません。
自分でも、どこまで勉強できるか全く自身もありません。

色々調べてみました。
ところが心理学を教えてくれるようなところは、なかなかなかったのです。
(今では、なぜなかったのか意味がわかるのですが、この頃は全く無知でした)

中で、ある新聞社の文化センターで教えていただけるということがわかりました。

早速、申し込んで月1回の講座から、学ぶことを始めたのです。
仕事が休みの日に、月一回でも学ぶことは、新鮮で面白い体験でした。

次第に、もっと学びたいと思うようになっていきました。


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