記事一覧
道徳の読み物「ずるいぞ!」(小学校:公正、公平、社会正義) 創作教材
対象学年:小学校(3・4年)
内容項目:公正、公平、社会正義 (13)誰に対しても分け隔てをせず、公正、公平な態度で接すること。
教材の種類:創作
ずるいぞ!
森にくらすみんなはなかよしです。
今日は、みんなでいっしょに森の中を歩き回って、たくさんの木の実を見つけました。
クルミにどんぐり、野イチゴまで――
木の実はみんなの大好物です。
からだの大きなくまが言いました。
「ぼ
このnoteについて(やりたいこと)
涌井(わくい)学(まなぶ)といいます。小説家です。作品は映画やアニメなどのノベライズが多くなっています。(プロフィール)
このnoteでは、主に「創作小説」と「道徳教材」を扱っていきたいと思っています。
■道徳
涌井は、十数年「道徳の読み物教材づくり」に関わってきました。「読んでおもしろい道徳の読み物」を目指して、涌井が創作・収集した教材を、学習指導要領の内容項目に沿ってまとめています。
※
短編小説「麻子とアキ 第二話 詐欺師」(4)
(はじめから「麻子とアキ 第二話 1」へ)
(前「麻子とアキ 第二話 詐欺師3」へ)
4
ぼくのスマホにポンちゃんから着信があったのは日曜日の午前十時。ぼくと麻子が遅めの朝食を取ろうと出かける寸前のことだった。ポンちゃんは押し殺した声でボソボソとしゃべる。どうやらトイレかどこか、狭い室内にいるみたいでただでさえ小声で聞き取り辛いのに、それが反響してなお聞きにくい。ぼくはスマホを顔に貼り付け
短編小説「麻子とアキ 第二話 詐欺師」(3)
(はじめから「麻子とアキ 第二話 1」へ)
(前「麻子とアキ 第二話 詐欺師2」へ)
3
その日からひと月。ポンちゃんは相変わらず超自己中心的な思考パターンで生きている。麻子経由で状況を聞いたり、ポンちゃん本人と話をしたりする限り、二人の奇妙なお付き合いは継続しているらしかった。ポンちゃんは相変わらず商売熱心でエーちゃんと会うたびに何らかの商品購入を迫る。エーちゃんは快くそれに応じる。二人
短編小説「麻子とアキ 第二話 詐欺師」(2)
(前 「麻子とアキ 第二話 詐欺師」1へ)
2
「何でおれまで」
「探偵みたいで楽しいじゃん」
麻子の付き添いで池袋西口のバス停にたたずみ、ぼくはふてくされている。時刻は午前の十時。天気は快晴。バス待ち客用のベンチに腰掛けて、体を捻ってポンちゃんを見ている麻子はなぜかサングラスだ。下品な太縁と薄いオレンジのレンズ。麻子の視線は昔丸井があったビルの方向に向かっていて、その途中、正面に見えるマッ
短編小説「麻子とアキ 第二話 詐欺師」(1)
1
------------------------------------------------------------
< Eisuke Nakamura
8/10
今日はありがとうございました!
玉石(たまいし)杏子(きょうこ)様
今日はほんとうに、信じられないくらい楽しい一日でした。今でも信じられません! こんな冴えないぼくに、あなたみたいな素敵な人が声をかけてくれるなんて……。ほ
短編小説「麻子とアキ 第一話 トラブルメーカー」(2)
(前 「麻子とアキ 第一話 トラブルメーカー」1へ)
2
〈シバさんと連絡とれたか?〉
本条の声だ。ぼくはジェスチャーで麻子を部屋から出し、心を落ち着けるために深呼吸した。本条は、例の「ん?」という耳障りな声でぼくの返事を促す。
「取れた。たしかに麻子はあんたの財布を掏ってた。すまない」
本条の声が甘ったるくなった。呟くような声でそおかあと言っている。
〈そおかあ。それじゃ話は解決や。三十
短編小説「麻子とアキ 第一話 トラブルメーカー」(1)
1
勝手な言い草なんだ。もし、彼女の口にした言葉を一言一句書き留めて、それを箇条書きにして相手に見せたらきっと裁判沙汰になるだろう。けれど、彼女がその薄い唇を震わせて雨に濡れた小犬みたいな声を搾り出してそれを言うと、それがまかり通る。道理が引っ込んで無理が通るんだ。麻子(あさこ)はひどい嘘つきだから。
最近は大人しかった。今朝、出社前に見た彼女はぼくがローンで買ったソファに足を投げ出して、ソ
道徳の読み物「死者を嗤う」(中学校:礼儀) (原作:菊池寛「死者を嗤う」)
対象学年:中学校(3年)
内容項目:礼儀 (7)礼儀の意義を理解し、時と場に応じた適切な言動をとること。
教材の種類:菊池寛「死者を嗤う」を部分的に省略・語の置き換えをしたもの
死者を嗤(わら)う
二、三日降り続いた秋雨がやんで、からりと晴れ渡った快い朝であった。
江戸川の近くに住んでいる啓吉(けいきち)は、いつものように十時ごろ家を出て、東五軒町の停留所へ急いだ。彼は雨の日が致命的に
道徳の読み物「白丸の死」(中学校:感動、畏敬の念) 創作教材
対象学年:中学校(3年)
内容項目:感動、畏敬の念 (21)美しいものや気高いものに感動する心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めること。【関連:生命の尊さ】
教材の種類:創作
白丸の死
父からはよく、「お前は優しいのではなく、甘いのだ」と叱られたことを思い出します。昭和三十年代の中ごろ、私はまだ十二、三歳の子供でした。
その頃、私の暮らしていた村では、ほとんどの家が畜産