適応障害と向き合って-その2
前回に引き続き、僕が適応障害になったときの具体的なお話です。
前回のお話は↓からどうぞ。
身体の異常
動悸と息苦しさ
2023年4月の部署異動をきっかけに担当することになった業務が自分に合わなかったことから、自分自身の個性が押し込められる感覚を覚え、どんどん窮屈に、どんどん息苦しさを感じるようになっていきました。
また、後輩への劣等感から自分は何の能力も無い人間だと思い込み、さらに過度の焦りから寝不足に陥りながらも英語の勉強を続ける……。
そんな生活が続いた、4月半ば頃だったと思います。
朝、仕事に行く前、妻や子どもたちの朝ごはんを用意するなどしているとき、
「スゥゥ……ハァァァ……」
と大きく呼吸をしなければいられなくなったのです。
動悸がして、呼吸が苦しくて……。
「あれ?なんかおかしいぞ……?」
と、身体の異常に気が付き始めたのです。
朝の時間はとにかく忙しいもので、昼間の数倍のスピードで時間が流れていく感覚があります。
妻は勤務先が遠いので、7時前に家を出ます。
上の娘は部活の朝練のため、妻が家を出た少し後に家を出ます。
そして、最後に、僕と下の息子が一緒に7時30分過ぎに家を出る、といった感じで各自家を出るのですが、それまでに、
6時頃、みんなを起こす
下の息子の着替えを用意する
妻の朝ごはんと水筒を用意する
子どもたちの朝ごはんと水筒を用意する
みんなのマスクを用意する
朝ごはんの片づけをして、洗い物をする
妻を見送る
下の息子にこどもチャレンジをやらせる
こどもチャレンジの丸付けをする
自分の水筒を用意する
↑これらをやる中で、時間があれば何か食べられるものをかきこむ
といったことを全て終わらせてから、僕は出発していました。
前日の夜に洗濯をしていた場合、洗濯物の後片付けも入ってきます。
とにかく忙しい!!
朝のうちにやっておかなければ帰宅してからが大変になる、それがわかっていたので、夜に作業を残さないよう注意しながら、バタバタと朝のルーティーンをこなしていました。
もっといえば、みんなが起きる3~4時間前に起きて、筋トレや英語の勉強をして……からのこれです。
これらを僕一人でやっていました。
なんていうか、とにかく自分がやらなければ!と、意地のような気持ちがありました。
妻は朝出る時間が早いので無理をさせたくない、と思っていました。
また、「民間企業で働く妻よりも地方公務員の僕の方が疲れていてはいけない」という謎の意識がありました。
営利目的で働く民間企業と違って、ノルマも無ければ詰められることもない(期限が迫って詰められることはありますが)地方公務員の方が楽なはずで、そんな自分が妻に弱音を吐くなんてことはあってはならない、と思っていたんです。
そんな忙しい朝、バタバタと動きながらも、とにかく息苦しい。
心臓が嫌な感じの緊張感を伴って、通常よりも速く脈打っている。
自然と、
「スゥゥ……ハァァァ……」
と、大きく鼻で息を吸い、口から吐く、という動作を繰り返していました。
息苦しさと緊張感で、こんな風にしないといられなかったのです。
その苦しさは日を追うごとに増していきました。
最初は少しの間だけだったのが、やがて、朝の時間全てが、その苦しさに塗りつぶされることになりました。
そのうち、家を出て子どもと学校に向かう途中の道でも、息苦しさが止まらなくなりました。
子どもと別れて駅まで向かう道も、
駅のホームで電車を待つ間も、
職場の最寄駅から職場に向かう途中も、
ずっとずっと息苦しさを覚えるようになり、
「スゥゥゥゥ……ハァァァァァ…………」
と大きく息を吸い込んでは吐き出すのを繰り返していました。
それがピークになるのが市役所の建物を前にしたときでした。
息苦しさを抑え込み、建物に入り、自分のデスクへと向かいます。
不思議なもので、仕事が始まると、消えるわけではないものの、ほんの少し息苦しさは和らぎました。
これを僕は、「逆・遠足は出発前日が一番楽しい現象」と呼んでいます。
仕事が始まる前、それが一番苦しかったのです。
そして、仕事が終わり市役所を出ると、いったん動悸は治まり、呼吸も楽になっているのでした。
手足の震え
息苦しさが増してきたころ、手足の震えも起こりはじめました。
職場でキーボードを打ったり、資料を取る時、手がプルプルと小刻みに震えるのです。
また、足がふらつくこともあり、職場で歩いている時、足取りがおぼつかなくなり、右へ左へフラフラと揺れてしまうことが出てきました。
動悸や息苦しさのこともあり、
「いよいよストレスか……」
なんて思っていましたが、そこまで深刻な状況とは捉えていませんでした。
むしろ、こんなストレスが溜まる職場、早く脱出しなければ……!
と考え、より一層焦りを深めていってしまいました。
頭が働かず、簡単なことでも考えがまとまらない
個人的には、これが一番辛い症状でした。
うまく言えないのですが、とにかく頭がうまく回らないのです。
仕事で使用する文書を読んでも、中身がちっとも入ってきません。
何回読んでも、どんな内容なのか理解できないのです。
人の話も同様でした。
仕事の話をしているのに、頭に入ってこず、付いていけない。
必死にメモを取りながら聞くのですが、よくわからない。
その結果、何度も同じことを聞くことになってしまう。
電話も恐ろしかったです。
相手が名乗った名前が覚えられない。
すぐにメモを取ろうとしても、メモを取る時点でもうわからなくなってしまう。
誰かに電話を取り次ぐとき、断片的な情報でごまかしながら取り次いでいました。
また、前回お話をしたあの後輩にも、何度も何度も同じことを聞いてしまいました。
後輩が話している内容が理解できない。
何を言ってるんだ?
どういう意味なんだ?
……そんな自分が情けなくて、情けなくて。
自分は一体どうなってしまったんだろうという恐怖がありました。
ケガをしたい
この頃、いつもこんなことを考えていました。
通勤途中の駅では、
「階段から落ちて死なない程度のケガでもすれば、仕事休めるかな」
電車が到着すれば、
「到着した電車の横から接触すれば、死なない程度のケガで済むかな」
歩いていれば、
「この車にひかれれば、しばらく仕事に行かないで済むかな」
犬の散歩をしていれば、
「このガケから落ちてケガすれば、しばらくは仕事行かなくてよくなるかな」
なんてことをいつも考えていました。
命を落とすとか、一生後遺症が残るとか、そういうレベルじゃなければ……なんてことをいつもぼんやり考えていました。
突然の涙
そんな状態が続いていたある日のこと。
仕事中、ふと、スマホケースを開きました。
僕のスマホはケースに入れているのですが、そのケースに、いつでも目に入るようにと、大好きな『僕のヒーローアカデミア』のデクのカードを入れているんです。
デクのように、自分の夢にまっすぐ突き進めるような人になりたいと思って。
そして、開いたスマホケースから、このカードがちらっと見えました。
そのとき。
突然、ブクブクと音が出るほどの勢いで、涙がこみ上げてきました。
頬の筋肉はけいれんし、涙がとめどなく溢れてきます。
「まずい……!!」
その瞬間、僕は椅子から立ち上がり、トイレの個室に駆け込みました。
そして、
「うっうっ……ぶぐっ…ううぅ……」
と溢れる涙を抑えられず、感情のままに泣きました。
「自分は何をやっているんだ」
「デクみたいに夢を追うキャラクターに憧れて、努力をしてるつもりで」
「でも、自分の夢になんて一歩も近づいてる気がしない」
「挙句の果てに、毎日毎日息苦しさを抱えて、足元もおぼつかず、ケガをして仕事が休めればなんて願って、頭だってロクに働かなくなってる」
「そんな状態になって、自分は何をやってるんだ」
「僕はデクみたいになれない」
そんなことを思って、声を殺して、ずっと一人で泣いていました。
そして、5分ほど泣いたあと、自分の状態がおかしいと気が付きました。
次回へ
長くなったので続きます。
自分の状態が異常だと気が付いた僕は、心療内科を受診することを決め、まずは予約の電話を入れるべく行動を開始するのでした。
今日もここまで読んでくださった、あなたに感謝。
ありがとうございました!