乗代雄介『旅する練習』
この本、おもしろそうやん、と思って購入し、読み進めていくうちに、あれ、なんか知ってるぞ、と感じ始めて、自宅の本棚を整理すると過去に読んだことのある本だったりする。
それがこれ。
読むのが二度目でも面白かった。
出会いと別れ
旅は、した方がいい。
特に若いとき、10代から20代前半くらいまでに、何かしら大きな旅をしておく方がいいと思っている。
世界を広げるためとか、成長のためとか、そういうかっこいい理由じゃなくて、絶望を感じるため。
ああ、自分の人生は今日までなのかもしれない、このまま息絶えてしまうのかもしれないって悩むほどの緊張感とか、見知らぬ土地で見知らぬ人らの前で、思い出すだけで顔を覆ってしまいたくなるほどの羞恥を晒すとか、そういう、どん底を味わうのは、若い方がいい。
若ければ、そこから上手に立ち直れる。
上手に起き上がるコツを掴めれば、大人になってから挫折しても、また上手に立ち上がれる可能性が高い。
若いときにその経験がないと、大人になったら怖くて転べないよ。
旅するお金なんてないですって言う。
でもね、貧乏旅行は、若くないとやりにくい。
目的を持てって、大人は言うかもしれない。
でもね、目的のない行動ほど、得るものは大きいよ。
大丈夫、細かいことなんて気にしないで、まず、飛び込め。
江國香織の『彼女たちの場合は』を読んだときに、僕は救われた。
僕がやってきた、周りの大人たちから否定されていた、若かりし頃の行動が、ぜんぶ、肯定された。
自分の人生が、いつ、どのタイミングで肯定されるかなんてわからない。
でも、そんなの気にする暇があるなら、何も考えず、とりあえず、飛び込め。
人は、人と出会って、成長するものだと考える。
誰にも出会わなければ、成長できないとも考える。
出会いの縁は大切だけど、それを大事にしすぎるのは違うとも考える。
イソギンチャクの触手みたいに、僕たちは互いに手を伸ばし合う。
いつか途切れても、それは仕方のないことだ。
僕は、小学校時代の友だちと、ほとんど連絡を取っていない。
中学校時代の友だちとも、ほとんど連絡を取っていない。
高校時代の友だちとも、年に数回しか連絡を取り合わない。
大学時代の友だちとも、年に数回しか連絡を取り合わない。
あんなに毎日、一緒にいたのに。
見ている方向が違うから、そういうもんだと思っている。
同じ机に座って、同じ方向を向いて、同じ歩幅で歩いているときは、同じ話題で盛り上がることができる。
でも、社会に出たら、どんどん違う方向を向いてしまう。
悲しくはない。
さびしくもない。
強がりとかじゃなくて、そういうもんだから。
今度近々飲みに行こうよ!と連絡が入っても、仕事の調整を考えると、年内は難しいから年明けでもいい?っていう返事になってしまう。
それが、今の僕の周りでは当たり前なんだけど、これを、理解できないと思う人もいることは知っている。
大学時代の友人から、9月くらいにそういう連絡が入って、もう年内は厳しいなと思ったから、年明けにしようと提案したら、無視された。
人との繋がりって、尊いものだ。
でも、執着しすぎると、ただの鎖になる。
もう一度会いたいって、望む望まないに限らず、縁があったら、また会える。
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