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『虎に翼』に見る             ~コミュニケーションのコツ~

 いつも様々な気づきをいただけるNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
今週は航一のプロポーズに対する寅子の反応で始まりました。
朝から「永遠の愛」の存在をとやかく議論するつもりはないのですが、
結婚の意味を考えることの必要性ってある?と思いながら、四の五の言わず、結婚してしまえばいいのでは?一緒に暮らしてしまえばよいのでは?とつぶやいた視聴者は、私だけではないと思います。

寅子は答えを見出そうと、もやもやした気持ちを航一にぶつけるわけです。
航一は、かき氷を食べながら、
「僕は東京に戻る日まで寅子さんとおつきあいが続いていたら、結婚を申し込む気でいました。」と、その理由を「その1…」と指を1本おもむろに出して話し出しました。
ここで注目してもらいたいのは、数字の「3」です。

何かを説明するときに、とりあえず3つのポイントを並べると、
すわりがよく、わかりやすいと言われています。
3つを並列でその1、その2…と話すのが説明の基本です。
2つだと物足りなく、4つだと多いため、3つぐらいが覚えやすいのです。私自身は、「言いたいことは4つあります。」と言われたら、たいてい4つ全てを覚えていられません。絶対メモです。
そして、そもそも1つめはなんだっけ?と考えてしまうぐらい、記憶力の悪い人間です。メモの用意がない普段の会話では、3点にすると重宝される
話し方と言えるでしょう。

さて、航一のプロポーズの理由。
その1「新潟は単身だから時間の自由がついたけれど、東京ではそうはいかない。」
その2「婚姻することで互いの家族を養い、財産を残すための法的な後ろ盾が生まれる。死んだあとに安心し合える」

なるほど。
ここまで聞いていて、きっと、3つめは感情的なものではないかと思いました。すると、「寅子さんといっしょにいたいからです」などと、気持ちが示されるだろうと。
しかし、期待は裏切られました。…なんと民法が提示されたのです。
「民放763条。(協議離婚できる)婚姻自体が永遠の愛を誓うわけではなく,永遠を誓わない愛であることに気づいたんです。」

「ん?」わかったような、わからないような…
「誓うわけではなく?」「誓わない愛である?」
そのあとのカットは二人でもくもくとかき氷を食べる数秒間。
いったいこれは、何を意味するのか…。

物事を3つの観点で説明する時には、2つめに最も話したいことを持って来ます。例えば、「ランチにカレーを食べたい理由は3つあります。」
①    お店が近い ②辛いものが食べたい ③値段が安い
強調したい理由を②に持ってくるというのは、食欲と気持ちが一致しているからで、理由として自然です。お店が近いとか値段などは関係なく、辛いものが食べたいという気持ちを伝えたいわけです。
2番目が際立って聞こえませんか?
心理的なルールがあるかどうかはわかりませんが、
①お店が近い ②値段が安い ③辛い物が食べたい 
と、このような順序にすると値段が安いが強調されると感じます。

もう一度、航一の話に戻ります。
理由その2の「財産の法的な後ろ盾のため」きっとこれは大事なことなんだろうなと思いましたが、3つめの「婚姻自体が永遠の愛を誓うわけではなく,永遠を誓わない愛であることに気づいた。」としたセリフ。
2番目を強調したいのであれば、
3つめは思いつきやついでのように言った感覚があります。
適当に作った理由だから、まさか補足するために民法を入れた?
話した内容を強化するには、データを示すのが一番です。
民法763条(協議離婚)をつければ、納得感が際立つ…はずでした。

とはいえ、協議離婚ができるからと言って、
”離婚を前提にした結婚を申し込む”というのは、普通ありえません。
「どうしてお昼ご飯にサンドイッチを食べたの?」と聞かれて、
「ラーメンを食べたくなかったから」とか
「サンドイッチを食べたらだめと言われなかったから」と言っているようなものです。
最近はやりの○○構文でかき回している感があります。
そのような意味が通りにくく、3つ理由を言ったから説得に応じる、応じないという違和感が、数秒の無言でかき氷を食べる点に表れていたと、
私は受け止めています。

さて、木曜日。ひとつの結論が出ました。二人は遺言状を記したものを契約書にして「結婚のようなもの」の契約を行ないました。
つまり、3つの理由の2つ目を重要視した結果になったのです。

今回のブログで言いたかったことは次の3つです。
1. 説明や理由を言う場合は3つのポイントを言う。
2. 3つ並べる際に、最も重要で、印象に残したい場合は2つめにする
3. 無理に3つ言わなくても3つめは適当に付け加えればよい。

実は、過去に3にこだわったのは東京都の小池知事です。
「三密」(密閉、密集、密接)の3つを避けることが感染症への対応と
アナウンスし、コロナウイルスと戦う方法を示しました。
その他にも、Stay Home、Stay in Tokyo、Save Livesなど、3つのスローガンにして会見でコメントしました。(英語であることは賛否両論ありますが…)

3という数字の重要性は、まず覚えやすいことが挙げられます。
私たちは3つならば暗記できそうですし、意識して覚えようかと思えます。またゴロがよいということも挙げられます。
音で表すと「ド、ミ、ド」のように、
座りがよく頭に残りやすい音程を形作っています。
また、私たちは三次元(縦、横、高さ)の世界に生きていることから、
感覚的に自然だとも考えられます。いずれにしても簡単に口に出せるほど短く、覚えやすいフレーズであることが大事で、3は丁度良いということなのです。

さらに、「石の上にも三年」「二度あることは三度ある」「三度目の正直」など、ことわざは3にまつわるものが多くあります。

いかがでしょうか。説得力ありますか?

コミュニケーションに関わるお悩みをお持ちの方は、
いつでもご相談ください。お待ちしております。 
株式会社AUBEこと葉 柿崎元子
https://www.aubeleaf.com/ 

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