16. 19. シックスシグマのメリットを現場に納得させる方法、及びシックスシグマ導入初期段階での小さな成功体験をどう共有するか?
シックスシグマは製造現場での品質改善やコスト削減に大きな効果をもたらしますが、導入に際して現場の理解と納得を得ることが重要です。シックスシグマは工程のばらつきを減らし、品質を向上させることで、製品の不良率を低減します。これによりリワークや廃棄コストが削減され、安定した生産プロセスを実現できます。
とは言うものの、組織がある活動を展開し始めるのは大変なエネルギーが必要です。ただ、その第一歩は、当該手法が当該組織にどの程度のメリットがあるのかを示すことではないでしょうか。
この記事では、シックスシグマのメリットを現場に伝えるための方法について解説していきます。
(1.2 までは理想論なので、興味のある方は1.3からご覧ください)
1. シックスシグマのメリットを現場に納得させる方法
1.1 現場の課題を明確にし、シックスシグマの貢献を示す
まず、現場が抱えている具体的な課題を明確にし、それに対してシックスシグマがどう貢献するかを示します。たとえば、「不良品の発生率が高く、手直し作業が増えている」という課題に対して、シックスシグマを用いて問題を解決できることを説明します。シックスシグマは、問題の根本原因を特定し、効果的な改善策を実施することで課題を解決します。
そして、最も大切なことは、これら享受した成果は、当該組織の結果として扱えることが最大のメリットになることです。日頃、同部署のメンバーとカイゼン活動に加えて、他の部署のメンバーが加わったプロジェクトは、生産現場にとっては大きなメリットとなるはずです。
その上で、課題を具体的に取り上げ、シックスシグマのツールや手法(例えばDMAICや統計的プロセス制御など)を紹介することで、生産現場での取り組みを明確にしていきます。DMAICプロセスを通じて、現状のプロセスを分析し、改善計画を策定し、標準化することで持続的な改善が可能になります。
1.2 現場作業者にとっての具体的なメリットを強調する
シックスシグマのメリットは、現場作業者にも大きな恩恵をもたらします。たとえば、作業の安定性が向上することで無駄な作業が減り、効率的な仕事が可能になります。また、標準化が進むことで負担が軽減され、余分な手直しや再作業がなくなり、日々の作業負荷が軽減されます。
これらのメリットを伝える際には、作業者の日々の仕事がどのように改善されるかを具体的に示すことが重要です。「シックスシグマを使うことで仕事が楽になる」という実感を持ってもらうことが、納得を得る鍵です。また、プロセスの標準化によって新しい作業者でもすぐに仕事に慣れることができ、作業の質が安定することも強調するポイントです。
さらに、シックスシグマを通じて得られたデータを基に現場でのコミュニケーションが活性化し、改善活動へのモチベーションが高まります。作業者が自ら改善に貢献できる実感を持つことで、仕事に対する意識が向上し、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。特に、生産現場の主任クラスがグリーンベルトとして参加し成果を上げていくと、この傾向は顕著に表れます。
1.3 改善事項を実現する資金源
さて、理想論はここまでにしましょう。
実際、上記のことは、これまで多くの経験を積んできた現場作業者の心には響かないでしょう。日々のコスト削減に厳しく取り組んでいる彼らにとって、たとえ改善策があったとしても、その資金の出どころが問題になります。また、予算が組まれていない場合、稟議が必要となりますが、そこに記載する効果が十分でない限り、何度も上司、経営陣に「お願い」をするのは難しいものです(実際にはやりたくないでしょう)。
日常業務に加えて、ボランティア的に参加しているプロジェクトで、なぜそれほどまでに「お願い」をしてリスクを負わなければならないのでしょうか。
これらの一つの解決策としては、シックスシグマ活動による成果として、緊急を要する解決策や(そもそもプロジェクトの成果なので予算に計上しようがない)予算上、当該事業部で予定していない費用が発生した場合、その管掌役の役員に一定の決済権限を与えることが挙げられます。これにより、事業部を超えた柔軟な対応が可能となります。プロジェクトがクロスファンクショナルなメンバーで構成されている以上、資金面の問題は慎重に取り組む必要があります。
あるプロジェクトでは、製品展開が急速に進んだことによる過剰気味の品種展開、プラスそれぞれの品種の更新(性能向上などによる)により、管理する品種数は、期ごとに著しく増加していました。ここで、営業部門が主体となり工場も含んだプロジェクトが発足し、品種削減に乗り出しました。結果、デザインの統一も含め過剰気味の品種を削減(統一)することが可能なことが分析されました。
ただ、それには予算に計上していない生産設備の補強が必要なことが工場から報告されました。通常の業務の場合であると、工場が費用を計上し進めていくのですが・・・。そもそも過剰気味の品種展開の問題は工場要因とは言い難く、また、営業(マーケ含む)要因とも言えません。
いやらしい話、これは成果の具合を横目に見ながら、声の大きな部門が資金を捻出する部門を決めてしまうでしょう。こういう時は、経営陣での決済が、のちのちの通常業務を考えれば穏便に済むでしょう。
余談ですが・・・
通常、種々の報奨金の支払いは、給料と合わせて振り込まれていると思います(規模の小さな企業では企業では、一部の経費の支払いは現金で行われていることもあるかと思いますが)。筆者が経験した企業では振込でしたが、シックスシグマの報奨金は現金払いと思っていたメンバーもいて、がっかりされた方もおられました。お金の問題は・・・ですね。
2. シックスシグマ導入初期段階での小さな成功体験をどう共有するか
シックスシグマ導入の初期段階で、小さな成功体験を共有することは現場の支持を得るために非常に重要です。初期の成功体験は、作業者にシックスシグマの有効性を実感させ、さらなる改善活動へのモチベーションを高める効果があります。例えば、「特定のプロセスで不良品を5%減少させた」や「特定の作業時間を10分短縮できた」といった小さな成功をチーム内で共有することが効果的です。
また、このような成功体験を共有する際に報奨金制度を導入することで、現場作業者のモチベーションをさらに高めることができます。小さな改善が達成された際に個人やチームに報奨金を支給することで、シックスシグマ活動への積極的な参加を促せます。報奨金は金銭的なインセンティブだけでなく、改善活動に対する感謝と評価の意味も持ちます。
意外かもしれませんが、表彰式での表彰は、周辺従業員への効果は大きいものです。ちょっとした休憩の会話でも「〇〇(名前)って表彰されてたよな?」「あれって△△を改善したかららしいよ」など話題に及びます。朝礼ではダメなのです。格式を高めた表彰式を開催してください。
これらの小さな成功体験は、作業者にとってシックスシグマが実際に役立つものであるという確信を与えます。また、成功体験を共有する際には簡単なグラフや図を用いて視覚的に結果を示すことで理解しやすくなり、多くの作業者がその効果を実感できます。小さな成功を積み重ねることで、現場全体の信頼感が高まり、シックスシグマの導入がスムーズに進むことが期待されます。
トレーニングとサポートの重要性を強調する
最後に、シックスシグマの導入を成功させるには、十分なトレーニングとサポートを提供することが重要です。シックスシグマのツールや手法は一見難解に感じることがありますが、現場作業者がそれを使いこなせるようにするには適切な教育が欠かせません。一時的な導入であれば、教育したブラックベルトに任せていて問題ありませんが、継続的な改善を望むのであれば、「教育」に力点を置くことも重要です。
まずは、トレーニングを通じて、作業者がシックスシグマの考え方や手法を理解し、それをどのように自分たちの仕事に活かせるかを実感できるようにします。次に、サポート体制を整えることで、導入初期の不安や疑問を解消し、スムーズな定着を図ることができます。
例えば、トレーニング後のフォローアップや現場での実践サポートを通じて、作業者が自信を持ってシックスシグマを活用できるようにします。企業の階層別教育のカリキュラムの中に何らかの内容があってもいいかもしれません。
さらに、現場のリーダー層(特に主任クラス)にもシックスシグマの理解を深めてもらうことで、現場全体での一体感を醸成し、改善活動を推進する力を強化できます。リーダー層が積極的にシックスシグマを支援し、現場作業者に対して励ましや指導を行うことで、導入の成功率が高まります。
まとめ
シックスシグマの導入を現場に納得させるためには、具体的な課題解決に対する効果を強調し、作業者にとってのメリットを伝えることが重要です。シックスシグマを用いた品質向上やコスト削減の事例を共有し、現場作業者にその価値を実感してもらうことで、積極的な改善活動への参加を促すことができます。
導入初期の小さな成功体験を共有し、報奨金制度を導入することで、モチベーションを高め、改善文化を定着させることが可能です。さらに、十分なトレーニングとサポートを提供し、リーダー層の積極的な支援を得ることで、シックスシグマ活動の成功率を高めます。
現場とのコミュニケーションを重視し、共に改善を進める姿勢を持つことで、品質向上と効率化を実現し、競争力のある現場を作り上げることを目指しましょう。
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