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3. シックスシグマを導入したが、目に見える成果がない場合の対処

シックスシグマは、多くの企業でプロセス改善やコスト削減に利用されてきた効果的な方法です。しかし、導入しても目に見える成果がなかなか出ない場合、企業や現場で不安が高まることがあります。本記事では、成果が見えない場合にどのように対処すべきか、効果的な見直し方法や現場での受け入れ方について解説します。


1. 効果金額が少ないと感じるプロジェクトの見直し方

シックスシグマを実施したプロジェクトの効果が、期待よりも少ないと感じることはよくあります。いや、ブラックベルトは、その上司にあたるチャンピオンから指摘されることも多いことかと思います。しかし、その効果は単純にコスト削減の面だけで測れるものではありません。ここでは、プロジェクトの効果が少ないと感じた場合に見直すべきポイントを紹介します。

1-1) 実際に効果金額が少ない場合:教育プロジェクト

実は、プロジェクトのなかでも、生産部門のマネジャークラスの方から、「〇〇(名前)を教育して欲しい」とブラックベルトへ依頼があることも少なくありません(グリーンベルトとしてプロジェクトに参画すること)。このような教育目的のプロジェクトでは、すぐに目に見える成果が出るとは限りません。従業員へのトレーニングや能力向上に関する取り組みは、長期的な視点で見る必要があります。このようなプロジェクトでは、効果金額は小さくとも、後々の業務改善や生産性向上に大きく寄与することが多いため、短期的な判断に陥らないよう注意が必要です。

対策:教育プロジェクトの場合、単にコスト削減ではなく、従業員のパフォーマンスやスキルアップの指標を設定し、効果を測る必要があります。例えば、業務効率の向上やミスの減少、プロジェクトのスムーズな進行度など、具体的なKPIを設定して実務との相乗効果を可視化しましょう。

1-2) COPQの錯覚:目に見えないコストを算出している

シックスシグマのプロジェクトでは、目に見えない「コスト・オブ・プア・クオリティ(COPQ)」が重要な要素です。COPQとは、品質の欠如やプロセスの非効率によって発生する隠れたコストを指します。これらのコストはしばしば見逃され、短期的な効果が小さいと錯覚されがちです。
COPQについての参考記事

生産現場で発生した不良を例に挙げると、これまでスクラップ費用のみが計上されていたものが、シックスシグマのプロジェクトにおいては「不良が原因で受注を断ったことによる機会損失」や「不良による欠品を補うための余剰生産費用」など、目に見えにくいコストも含めて効果金額として算出されます。そのため、実際よりも大きな金額として算出されることがあります。

従って、年間数十億円の売り上げの企業で数億円のCOPQが計上されることもあり、実際の経理上での効果との差異に経営陣は?となります。

対策:COPQを算出することで、実際には大きな効果をもたらしている可能性を確認できます。例えば、品質問題による顧客クレームの減少、作業ミスによる修正コストの削減など、目に見えにくい効果も評価している点です。従って、実際の経理上の効果と合わせて報告することもプロジェクトの総合的な成果を正しく認識していただく行為と言えます。


2. 改善案が現場に受け入れられない場合の対応策

シックスシグマの改善案が、現場での受け入れに時間がかかることもあります。従業員が新しいプロセスや手法に対して抵抗を示す理由はさまざまで、特に慣れ親しんだやり方が変わることに対して不安を感じることが原因です。

対策:改善案が現場に受け入れられない場合は、従業員への説明や教育が鍵となります。まずは改善の目的やその重要性を明確に伝えることが大切です。また、現場のリーダーを巻き込み、彼らが率先して改善案を導入することで、従業員も前向きに取り組む可能性が高まります。

上記のことを筆者も経験しました。プロジェクトは生産現場での組立不良に関するもので、当該生産ライン導入時より悩まされていた問題でした。

プロジェクトメンバーには、設計部門や生産技術部門のキーマンが加わり、実験設備を設置して試験を繰り返しました。最終的には、シックスシグマのプロジェクトであまり使用されることのないタグチメソッドも取り入れられ、従来とは異なるアプローチで、不良を大幅に削減する改善策が示されました。

ただ、統計的に有意差があるとはいえ、改善策は最後は信じるか、信じないかになります。どんな立派な改善策も、最初の量産テストで少しでも不具合があると(例え、それが関係のない要因であっても)、生産現場は激しい抵抗を示すものです。

実際に動き出したキーマンは、生産現場の主任やマネージャー、さらにはプロジェクトメンバーでもない、ベテラン社員でした。実は、プロジェクトチームのメンバーの一人が、このベテラン社員と以前に一緒に仕事をしており、親しい間柄にありました。そのため、プロジェクトの課題についても何らかの形で耳に入っていた可能性があります。

緊張感漂う最終テスト。多くの人が見守る中で、組立が開始されました。量産設備相当の試験機による実験データ(統計解析を含む)が期待通りだったのか、はたまた、設備修正に関与したベテラン社員の腕前が優れていたのかはわかりませんが、その組立工程は問題が解決された状態で、無事に操業が再開されました。


まとめ

シックスシグマ導入後、目に見える成果が出ない場合でも、短絡的に失敗と判断せず、長期的な視点での効果を検証することが重要です。また、現場での受け入れを促進するためには、リーダーシップとコミュニケーションが不可欠です(いや、チームを結成する時点でのメンバーの選定は、背景の人間関係を把握できていれば、かなり大きな要因となります)。これらの要素を踏まえ、シックスシグマの効果を最大化させましょう。

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