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どうやってシックスシグマ・ブラックベルトになったのか?
シックスシグマ・ブラックベルトは公的な資格ではないため、コンサルティング企業や当該企業が独自に認定を行っていることがほとんどです。そのため、ブラックベルトが当該企業内でどの程度評価されるかはまちまちです。少し見てきましょう。
シックスシグマ・ブラックベルトのライセンサー
筆者の場合、ライセンサーは米国のコンサルティング企業になります。また、コンサルティングが進み、ブラックベルトが企業に増加してくれば、マスター・ブラックベルト:MBBの認証もあり、これに認められると自社内にてブラックベルトを認証できます。
従って、筆者の経験では、①ライセンサー(公的ではない)、または②自社内のMBB、にてブラックベルトが認証されている企業でした(グリーンベルトには特に資格、基準は設けていませんでした)。
ただ、現在では、国際規格化が進み、ISO 18404:2015(プロセス改善における定量的方法-シックスシグマ-シックスシグマおよびリーン実施に関する主要専任者の能力と組織の適格性)では、それぞれの能力、要件が規定されているようです。
長くシックスシグマに関する事業を営んでいるのは、上記の記事を記載している株式会社ジェネックスパートナーズが挙げられます。
ブラックベルトの待遇
ブラックベルトは公的な資格でないため、各企業によって扱いは異なるかと思います。筆者の場合は、当該企業でシックスシグマが全社運動であったこともありQC検定1級相当の待遇でした。また、現在の企業でもQC検定1級相当の待遇となっていることから、シックスシグマを知る方が当該企業にいるかどうかで決まるかもしれません(一昔前は名刺に「シックスシグマ・ブラックベルト」と記載してる方もいらっしゃいました)。
シックスシグマでの悲しい思い出
筆者の属した企業において、シックスシグマ活動が下火になり、やがて、他の運動に変わっていった頃、通常の業務でもMinitabを使用しているので(統計を業務で用いるので当たり前なのですが・・・)、Minitabを使用し最適化した結果をDR(デザイン・レビュー)で報告していたとき、発言ではない程度の声で「いや、シックスシグマは終わってるから」と発した方がおり、その周囲も同調している様子でした。
これは、様々な意味合いを込めたものであることは容易に想像がつきますが、DRの場では不適切であることは言うまでもありません。
こういった全社運動にはコンフリクトはつきものですが、ZDを完全に否定し、確率論で進んでいったシックスシグマの組織への展開の仕方を考えさせられるものでした(実際にアンチは多数存在していました)。”シックスシグマ”というリトマス紙が示した反応は根深いものです。
結局、この組織ではシックスシグマは終わってしまうのですが、このようなプロジェクト方式の活動の継続は、組織に根付いて全社運動化したQCと比較しても考えさせられる活動となりました。
ブラックベルトは何ができるのか?
ブラックベルトはどういったことができるように教育されているのか?筆者の経験をもとに振り返ります。よければ御参照ください。
D(定義)フェーズ
このフェーズでは、プロジェクトの概要がメインになります。ブラックベルトの上司;チャンピオンが任命されており、プロジェクトとして始動していることが前提です(組織的なフォロー含む)。その中で以下の記述が求められます。
・課題の記述、説明
・ゴールの設定(第1メトリック、第2メトリック含む)
・COPQの算出
M(測定)フェーズ
このフェーズ、次のA(分析)フェーズでは統計的な技法が増加してきます。M(測定)フェーズでは、測定システムを確立し、工程能力を算出します。また、ここでのデータを用いて次のA(分析)フェーズで統計解析を実施するので、どのようなデータを取得するのかも大切になってきます。
・プロセスマップの作成
・パレートチャート(マルチレベル)
・特性要因解析/なぜなぜ分析
・FMEA
・多変量管理図
・Gage R&R
・工程能力の算出
シックスシグマでは例えば「3.5シグマ」レベルとppmなどから算出し、6シグマレベルを目指す。
A(分析)フェーズ
このフェーズは、前フェーズで収集したデータを分析するフェーズになります。筆者の経験した研修でも、最も時間の長い研修となったことを覚えています。あらゆるプロジェクトに対応するため、多くの統計技法の教育があるためです。以下は、伝統的な製造系(QC的な)プロジェクトでのものをリストアップします。
・要因(X)の列挙、絞り込み
・統計解析(等分散分析、t検定、分散分析、カイ二乗検定、比率の検定、相関分析など)
I(改善)フェーズ/C(管理)フェーズ
このフェーズでは前フェーズで挙がった有意な要因Xの最適化が実施されます。
・実験計画法
・コントロールプランの策定
・リーン生産方式の適用
あれ?FTAがないじゃない?主成分分析は?クラスター分析は?タグチメソッドは?
など、物足りないことがあるかもしれませんが・・・上記はブラックベルトの基本形かと思いますので適宜補正していただければと思います。
また、発展的には、QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)により、顧客の声から設計FMEAを作成し、設計段階から取り組むことも挙げられます。これはDFSS(Design for Six Sigma)に代表されます。筆者はDFSSの研修を受講しましたが、設計段階では、公差の設定、財務的な分析等も含んでいました。*これをメインにした活動は展開されませんでした。
まとめ
ブラックベルトは、いくつもプロジェクトを抱え、動きが派手に見えます。特に、分析、改善フェーズでの試行錯誤の末の改善策の最適化は外科医のごとく目立ちます。
ただ、プロジェクトから日常管理へとつなぐのはCフェーズです。実施された改善効果を維持管理する行為は、上記のフェーズほど目立たないものの、確実にそして、継続的に実施しなければ、折角の改善策も水泡に帰してしまいます。
逆に言えば、日常管理しているメンバー;季節に関係なく、毎日、同じ作業を繰り返し、同じ品質で後工程に繋げている工程を守っている行為こそ、称賛していく雰囲気づくりが大切です。小さな違和感を見抜く目は、未然に事故も防ぎます。
品質を維持することは総力戦です。
(おわり)