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20. シックスシグマ・ブラックベルト:現場と経営層の間で板挟みになった時の対処法、 4. シックスシグマ導入による現場のモチベーション低下の防止策

シックスシグマの導入は、生産効率の向上とコスト削減を目的としています。しかし、ブラックベルトは現場と経営層の間で板挟みになることが多く、この課題にどう対処するかが重要な役割の一つです。

この問題の原因は、つまるところ、お金(効果金額)雇用の不安です。


板挟みの原因は「効果金額の問題」にあり

現場と経営層の間で板挟みになる主な原因は、シックスシグマ導入による効果の金額的な評価にあります。経営層は数値化された効果、つまり生産性向上やコスト削減の目標に注目しますが、現場ではその数値をどのように達成するかという実行面での課題が多く存在します。そこには金額のギャップが生まれ、現場でのモチベーション低下や反発を引き起こす要因となるのです。

経営陣「経営的に大事な品質なんだ、これぐらいの金額できるだろ?」
メンバーの思い「(何言ってんだ)こっちは通常の業務もあるんだ」

シックスシグマの成功には、経営層が設定した目標を現場が具体的にどう実現するのか、両者がしっかり理解し合うことが不可欠です。

プロジェクト方式のシックシグマでは、当該事業(企業)における重要事項は時間の経過とともに少なくなっていきます。そのため、シックスシグマも経営層が求める成果を現場に過度なプレッシャーとして感じさせないようにし、現場の現実的な状況を考慮した目標設定を行うことが求められます。

現場の「期待外れ感」を打破するために

シックスシグマ導入後に現場が抱く「期待外れ感」を打破するには、成果がどのように現場の人々に還元されるかを明確に伝えることが重要です。生産現場は、常に生産性が向上することは人員の整理につながる不安を抱いています。従って、例えば、生産性向上による負担の軽減や、新たなスキル取得が将来のキャリアにどう役立つかを示すことで、シックスシグマのメリットをより理解してもらうことができます。今度こそ、人員整理につながらない期待に応えなければなりません。

また、現場からのフィードバックを取り入れ、それを改善プロセスに反映させる姿勢も大切です。現場がシックスシグマの導入によってどのような成長機会やポジティブな変化があるのかを具体的に説明することで、導入への積極的な参加を促進します。現場の人々がプロジェクトを自分たちのものと感じるようになれば、モチベーションの低下を防ぐことができ、最終的な成果も向上します。

生産効率向上による人員整理への不安を解消する

さて、シックスシグマ導入に伴う最大の心理的障壁は、先述の通り、生産効率が向上することで人員が不要になるのではないかという懸念です。

これは、通常の業務においても、「生産性向上」の名目で生産現場に立ち入った際に感じるあの視線のことです。誰かがこの場を去らなくてはならない(生産性が高まったので人員が整理される)不安です。

この不安、懸念に対処するためには、シックスシグマの成果が人員整理に直結しないことを明確に伝え、効率化によって生まれたリソースを新たな取り組みや改善プロジェクトに投入することを強調します。例えば、新たな製品ラインやプロジェクトを立ち上げることで、現場の人々がこれまで以上に価値を発揮できる場を提供することが可能です。さらに、効率化によって生まれた時間や労力を活用して、新しい業務プロセスの改善や従業員のスキルアップに注力することができます。このように、効率向上が新たな可能性を生み出すという前向きなメッセージを伝えることが、現場の不安を和らげるために重要です。

ただ、現在では、上記の対処も生産現場では信用されないことと考えられます。シックスシグマはプロジェクト方式です。当該組織での活動が、いずれ、QCのように各セクションでつつがなく推進できる形にならない(もしくはしない)のであれば、推進室と経営陣とで何年程度活動をすすめるのか、また、辞め時とその後について、最初にその秘密を共有すべきです。

現場と経営層の橋渡し役としてのコミュニケーション

シックスシグマ・ブラックベルトの役割は、現場と経営層をつなぐ橋渡し役です。そのためには、双方の立場を理解し、適切な言葉でコミュニケーションすることが求められます。経営層には、現場の課題や苦労をデータや具体的な事例を用いて説明し、期待と現実のギャップを埋めることに努めます。一方、現場には、経営層の期待する成果やその背景にある理由を丁寧に伝え、共感を得ることが重要です。具体的な数値目標やビジョンを示すだけでなく、経営層がその目標を設定した理由についても丁寧に説明し、現場のメンバーが納得できるようにすることが必要です。また、現場の人々が提案や意見を気軽に出せる環境を作ることも、双方向のコミュニケーションを促進し、プロジェクトの成功に寄与します。このような環境が整えば、現場と経営層の間での相互理解が深まり、より円滑にシックスシグマを進めることができるでしょう。

このような役割を担うブラックベルトは、やがて、当該事業の中核を担うことになります。ブラックベルトを通常業務と兼任しているのか、専任化されているのかにもよりますが、シックスシグマ導入を決めた経営陣は、ブラックベルトの人選にも注意を払う必要があります。

ある企業では、シックシグマの導入を決めた際、ブラックベルトの人選は次のようにしました。「役職は管理職手前で、ここ数年の査定の高い順」です。ここには、当該企業の次世代を担う管理職を育てる意図とともに、シックシグマによる何らかの変革(当該企業の悪弊など)を狙ったことが考えられます。

また、ある企業では、シックスシグマではありませんが、品質改善手法の全社運動を企画し展開し始めました。ここでの担当役員は、当該品質改善手法の概要を当該組織の部長クラスへ教育し、後は、部長自身が考え自部門へ展開してください、というものでした。その後の通達は、発表会のスケジュール、リマインダーとなりました。

いうまでもなく、活動当初から総スカンを食らったのは後者で、粛々とイベントをこなしていく、かつての形骸化したQC発表会がよみがえったそうです。こうなると、当該組織において、再び何かを何かを展開していくのは心理的な障壁が高く、困難になるでしょう。


シックスシグマ導入による現場のモチベーション低下を防ぐために

シックスシグマ導入時の現場のモチベーション低下を防ぐには、導入プロセスにおいて現場の声を積極的に取り入れ、彼らがプロジェクトの一部であると感じられるようにすることが重要です。決して、雇用の不安を煽ってはいけません。

また、シックスシグマの取り組みが成功した際には、その成果を現場の努力として認識し、適切な評価や報酬を与えることで、さらなるモチベーション向上につなげることができます。現場の人々にとって、自分たちの取り組みが評価され、組織全体にとって重要な成果を生み出していると感じられることは、非常に大きなモチベーションの源となります。

実際、筆者の所属していていた企業では、”絶賛シックスシグマ展開中”の期間は、プロジェクトに参加したメンバーの査定は、(プロジェクトがうまくいかない場合でも)プラス査定が追加されていました。

さらに、現場の成功事例を組織全体で共有し、その努力を称賛する文化を築くことも重要です。全社単位でのシックスシグマ発表会、時には、ポスターセッションを実施することは、担当者の教育にもつながり、他事業との横の連携も発達するため有効です。

このような取り組みを通じて、シックスシグマが現場にとっても経営層にとっても有益なプロジェクトであることを示すことができるでしょう。

まとめ

シックスシグマ導入において、現場と経営層の間で板挟みになることは避けられないこともありますが、上記のことから、効果金額の評価や人員整理に関する不安に適切に対処し、現場と経営層の間で相互理解を深めることが、モチベーション低下を防ぐための鍵となります。シックスシグマ・ブラックベルトとして、現場と経営層をつなぎ、互いの立場を理解し合うことが成功に直結します。

ブラックベルトが現場と経営層の橋渡しを行い、経営層のビジョンを現場に浸透させるだけでなく、現場の声を経営層に伝え、相互理解を深めることで、シックスシグマは単なる生産効率向上の手段ではなく、組織全体の成長を支えるプロジェクトとなります。現場がプロジェクトの一部であり、自分たちの努力が組織全体に対する成果に直結するという認識を持つことで、シックスシグマの取り組みはより効果的に進められ、長期的な成功を収めることができるでしょう。シックスシグマの成功は、現場と経営層の協力と信頼によって支えられ、それが組織全体の持続的な成長へとつながるのです。

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