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1. シックスシグマ導入の際、抵抗勢力との向き合い方

シックスシグマの導入は、企業が品質管理やプロセス改善に取り組む上で非常に効果的な手法です。しかし、導入過程で多くの企業が直面する問題の一つに、従業員や現場リーダーの「抵抗勢力」が挙げられます。特に、長年同じ業務プロセスで働いてきた従業員や、既に別の改善活動を浸透させた場合、反発や抵抗が発生することが少なくありません。本記事では、シックスシグマ導入時に遭遇するであろう抵抗勢力とその対処法について記載します。



ZD(ゼロ・ディフェクト)が浸透した従業員との確執と解決策

ZD(ゼロ・ディフェクト)とは?

ゼロ・ディフェクト(Zero Defects)は、全ての作業や製品において「欠陥をゼロにする」という目標を掲げた品質管理の手法で、伝統的な日本の製造業で浸透している考え方です。従って、多くの従業員が長期間にわたりこの考え方を実践してきた場合、新たな品質管理手法であるシックスシグマの導入に対して抵抗を示すことがあります。

確執が生じる理由

ZDが従業員の中に深く根付いていると、シックスシグマが必要以上の複雑なプロセス改善手法だと感じられ、現状維持のほうが効率的だと考えることがあります。具体的には、シックスシグマの確率論です。シックスシグマレベルと言えども「ゼロ」ではないので、根底に拒絶感が生まれます。

また、プロジェクトの開始時に、現状は〇〇%(もしくはppm)の欠陥があり、目標は◎◎%(もしくはppm)であることを表明していくと、ZDに親しんだメンバーは、現状が「ゼロ」でないため、現状を否定された気分になってしまいます。

ですので、ZDがある程度成功している企業では「なぜ新たな手法が必要なのか?」という疑問生じます。

解決策

このような確執を解消するには、シックスシグマが単なる品質管理手法ではなく、ビジネス全体のプロセス改善に繋がることを示す必要があります。具体的には、シックスシグマの成功事例や、ZDの限界を超えることで得られるメリットを明確に説明し、既存の手法との併用が可能であることを強調します。また、従業員の経験や知識を活かしつつ、シックスシグマの利点を最大限に引き出す方法を模索することが重要です。

さらには、それぞれの企業にて、ブラックベルトがチームに説明する内容は事前に決めておくか、経営者が従業員に説明する機会を設けることは有効です。

中堅社員からの反発にどう対処するか?

中堅社員の心理的抵抗

中堅社員は、通常、現場での豊富な経験を持ち、企業内での中核的な役割を担っています。そのため、新たな改善手法や改革に対して強い抵抗を示すことがあります。シックスシグマの導入においても、特に中堅社員が「自分たちのやり方が否定されるのではないか」という懸念から反発することが考えられます。誰もが嫌なものでですが、構成員は「変化」を嫌うことが根底にあります。

本記事執筆者は、初めてのチームの際、生産現場のオペレーター、主任クラスのメンバー、及び生産技術のメンバー(いずれも中堅社員)と打ち合わせを予定していましたが、時間になっても誰も集まらず、ひとり苦いコーヒーを飲んだ苦い経験があります。

対処方法

中堅社員の抵抗を和らげるためには、まず彼らの経験を尊重し、シックスシグマの導入が彼らの価値を損なわないことを明確にする必要があります。彼らは経験的に、組織がこのような動きをする場合(=生産効率を高めるとの口実で何かする場合)、その先には必ず人員削減があることを知っています。シックスシグマを導入する組織の責任者は、導入目的を周知していくこともチーム運営のフォローになります。

ブラックベルトと呼ばれるシックスシグマプロジェクトリーダーは、多くの場合、グリーンベルトと呼称する実行面の実質的なリーダーを任命できます。彼らに主導的な役割を与えることで、責任感と協力意識を高めることは効果的です。

さて、最初の会議に誰も集まらなかった筆者は、そのプロジェクトの課題は、日頃から彼らが悩む生産効率を低下させる問題であることを説明することで、彼らの通常業務の目標と共有できることを認識してもらいチームは動き始めました。

ただ、任命したグリーンベルトの上司には、業務時間を取られるシックスシグマ活動について、かなり嫌味を言われましたが・・・

現場リーダーがシックスシグマを嫌がる理由とその克服

現場リーダーの不安

日々のオペレーションを管理する立場にある現場リーダーは、シックスシグマの導入が彼らの業務に過度の負担をかけることを懸念する場合があります。特に、既存のプロセスがすでに高効率で動いていると信じている場合、シックスシグマの導入に対する抵抗が強くなることがあります。

また、シックスシグマが理由で残業が発生してくことは、プロジェクト開始当初は理解が得られるかもしれませんが、時間の経過とともにそれは薄れていくことを懸念しています。

克服方法

このような抵抗を乗り越えるには、シックスシグマが現場の業務効率化に寄与するだけでなく、リーダー自身の管理能力向上に繋がることを伝えることが大切です。例えば、シックスシグマのツールや手法を用いることで、現場でのデータ主導の意思決定が容易になり、無駄を減らし、目に見える改善を実現できることを説明します。さらに、シックスシグマ導入に伴うトレーニングやサポートを強調し、リーダーが新しい手法に適応できるよう支援することも効果的です。

それは、単に工程能力を統計ソフトを用いて算出することでも構わないのです。24時間操業している中で工程を管理してる彼らは、直感的にどのタイミングが工程能力に不安定さがあるかわかっています。それを説明する手段を持つことは品質が安定するための大きな寄与になります。

筆者の経験では、現場リーダーが嫌がる最大公約数的な理由は「わからないものはやりたくない」です。現場リーダーの上司にシックスシグマの教育をする時間を願えば、品質管理に関する教育なのでNoという上司はいません。その上で現場リーダーをグリーンベルトに任命し、教育目的も兼ねたプロジェクトとすることで運営がスムーズになりました。

まとめ

シックスシグマの導入は、企業全体のプロセス改善において非常に強力なツールです。しかし、従業員やリーダーの中には抵抗する人々が存在することも事実です。この記事では、ZDが浸透している従業員、中堅社員、そして現場リーダーが示す抵抗の理由と、それに対する効果的な対処方法を紹介しました。これらの抵抗を克服するためには、従業員一人一人の経験を尊重しながら、シックスシグマの利点を具体的に伝えることが鍵となります。

こぼれ話)経営陣の抵抗

シックスシグマはどちらかと言えば、経営トップ(経営陣)が導入を決定し、組織へ展開されていきます。ボトムアップ的な展開は考えにくい活動です。ですが、コングロマリットな企業では、否定的な経営幹部はいるもので、それを表明する方もいます。どうすればいいのか?よくある話ですが、その幹部は、「シックシグマ推進」の担当役員に任命されました。

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