ALL STAR SAAS CONFERENCE 2024 に参加してきた
こんにちは、いまふく(@happy_imafuku)です。
2024年11月20日(水)に開催された「ALL STAR SAAS CONFERENCE 2024」に行ってきました。
昨年に続き2回目の参加で、今年も登壇者が豪華で、かつALL STAR SAAS FUNDの方々のファシリテーション力もあり、非常に満足度の高いカンファレンスでした。
会場のデザインやイベントは昨年以上に凝っていて、その場にいるだけでも楽しかったです。
各セッションで深い学びがあったので、当日聴いたセッションについて、まとめていきます。
オフレコセッションについては内容を公開してませんが、他にも記載NGな部分がありましたら、ご連絡ください。(to 運営の方々)
5兆円企業を築いたAtlassian 元Presidentが取った“非常識”な選択
Jiraで有名なAtlassian(アトラシアン)の元PresidentであるJay Simonsさんのセッション。
Atlassianを伸ばしていく上で行った、ユニークな判断5つが紹介されました。
一般的なセオリーとは異なる側面もあって非常に面白く、戦略の幅が広がるようなセッションでした。
要約
圧倒的な低価格で顧客獲得を優先して、マーケットを独占してから顧客単価を上げていく戦略もある
プロダクトが素晴らしいことで、営業費用(固定費)をなくして販売価格を下げられる
短期的な損得に囚われず、中長期的なパートーナーシップ、顧客基盤を大切にする
セッション内容
できるだけ低い値付け
プロダクトの値付けをする際は、普通はできるだけ高い価格をつけることを考える
しかしJiraでは逆にできるだけ低い値段にした(他社の数分の1とか)
一番高いプランでも、法人向けプランで年間4,800ドル(当時)
対抗相手はIBMやマイクロソフトで、彼らは10倍の価格を付けていた
そういった競合と比べて、できるだけ早く多くの顧客を集めることに集中したかった
一旦顧客を獲得して顧客基盤を作ってしまえば、他の商品も売って拡大できるだろう、将来的に楽になるだろうという見込みがあった
価格が参入障壁にもなった
4,800ドルでは営業は雇えないので、PLG(プロダクトレッドグロース)でやっていった
価格が高いと顧客との価格交渉(割引交渉)に時間がかかって、リードタイムが伸びる
割引は既に価格に反映されているので、できないと最初から顧客に伝えていた
法人ではなく個人ユーザーにもJiraを買ってもらえて、彼らが所属企業に導入を促すムーブメントもあったのも大きい
マーケットを勝ち取って、他社が追随できない状態になってから、価格を上げていった
2つ目のプロダクトを2年目に作った
Jiraが1年目で成功できたゆえに、チャンスが見えた
1つ目から2つ目のプロダクトまでが長いと、2つ目のプロダクトのリリースの際の品質やポテンシャルに納得しにくくなる
会社が若いときから、いかにプロダクトポートフォリオを管理するかを学んだから、現在20プロダクトあっても管理できている
経済圏を構築する
パートナー企業と一緒に各国に参入していった
パートナーは、プロダクトのカスタマイズができる人たちの集まり
当時はUSドルだけで見積もりを出していたが、日本に進出する際はクレカでも支払えるようにした
パートナーと組む上で、あまり欲張ってはいけない
マージンは結構提供した
パートナーには成功してほしかったから
マージンをけちると、パートナーは他社のソフトウェアも売っていく必要がある
AtlassianのパートナーはAtlassianの製品だけ売っていればよく、コミットしてくれた
マーケットプレイスも構築した
プラグイン、アドオンを展開できるようにした
Atlassianだけのパートナーで、IPOしそうな企業もある
プラグイン開発でARR4億ドル
膨大な経済圏が生まれた
セールスフォースも意図的にパートナーを構築していて、だからこそ成功した
短期的な成長を犠牲にする覚悟を持つ
2009年の話。2008年のリーマンショックをきっかけにAtlassianから離れる顧客もいた
Jiraの最安プランは売上1割を締めていた
最安プランの顧客はスタートアップが多く、年間1,200ドルはスタートアップにとっては大金で、当時どんどん縮小していた
1,200ドルを10ドルにした
顧客に還元することにした
その時は経済的に払えないが、状況がよくなったら一緒に拡張していきたいと思った
安くしたことでファネルが大きくなった
トラフィック、トライアル導入、有償転換が3倍になった
導入後、継続もしてくれたし、拡張もしてくれた
パートナーへのマージンについても同様の考えができて、マージンを減らすことは短期的な考え
十分なマージンを与えることで周りが応援してくれるし、それによって企業体質も高まる
忍耐力
素晴らしい製品を作って、試しやすくして、できるだけ多くの顧客を集める
今のSaaSではT2D3を目指せとよく言われているが、Atlassianは35〜50%の成長を20年続けている(そういう伸ばし方もある)
今は顧客が35万社いる
年間4,800ドルの初年度の顧客が、11年後には年間100万ドル支払っている
最初は、最小限のプロダクトを売る。製品や機能が拡張したら、それに伴って支払う価格を上げてくださいというスタンス
四半期の中で不確実性があると精神やられるが、Atlassianは安定していた
2015年に上場した際は時価総額4億ドルだったが、今では625億ドルにまでなった
Q&A
Q. 創業者の後悔として「価格を低く設定した」という人もいるが、その辺はどう思うか?
A. Atlassianは十分なTAMがあった。世界中の顧客が買うべきだと思った。競合が到達する前にいかに広げられるか。徐々には値上げしていった。マーケット次第だとは思う。
Q. 20プロダクト同士の関係性は?
A. Land and Expand戦略をとっていた。いろいろなプロダクトをいきなりあれこれ売ることはだめ。顧客の認知のキャパを超えて、印象を悪くする。Landなプロダクト(顧客によるが、Jiraなど)を提案して待つ。使ってみて「なるほど、いい製品」と顧客が感じたら、他のプロダクトの提案をする。提供したプロダクトの価値を感じているから、受け入れやすい。
Q. プロダクト開発について。当時競争激化していたが、ロードマップはどうしていたか?
A. 競合の意識もあったが、顧客の意識も相当あった。改善すべき課題は何か、デフォルトであるべきソリューションは何か、顧客は何を考えているか、顧客に対する理解を深める。
ユニークで真似できないことは何かも考える。営業がいなかったから安くできた。パイプラインとかもなかった。好きなときに自由に価格を下げることができた。ビジネスモデルを使って違う形で勝負した。アップセルやクロスセルで単価を上げられるため、単一プロダクトの価格が低くても問題ない。
Q. (Atlassianが買収した)HipChatとSlackとの厳しい戦いで学んだことは
A. 当時は安定性・パフォーマンスに課題があった。もっとマーケットにFixさせことができていたなら、、それができなかったのでSlackに負けた。
大きなカテゴリーのプロダクトが複数あるのは難しい。Slackは単騎で磨いていた。Slackに負けてSlackに売却した。その際は顧客のケアもした。
競争に勝ちたいというのもあったが、いいことをやりたいという思いがあった。当時、競合のSlackが困っているとき、助けられることはある?とかも聞いていたし、Slackにおめでたいことがあれば、ケーキを送ったりもしていた。友好的な競合他社と認識していた。良いカルチャがレバレッジにもなる。
Q. 海外の拠点について
A. ベトナムで開発、オーストラリアでオペレーションしている。エンジニアの構築にあたって、米国以外に進出しようとしてベトナムにいった。ベトナムは数年はうまくいったが、組織が大きくなっていくにつれて必要になってくるEMがいなかった。プロダクトデザインも十分でなかった。プロダクトマネジメントもなかった。後にベトナムからインドに移転した。インドは競争激しいので見ていなかったが、ベトナムにない要素があった。
ARR100億円を突破した後も継続した高成長を達成できている理由
SmartHRのCOO倉橋さんのセッション。
倉橋さんの記事は本当に勉強になる内容ばかりでいつも参考にしていますが、今回のセッションは100億円という大台を突破してのお話だったため情報のアップデートもあり、大変面白かったです。(予算の立て方にまさかアップデートがあるとは。。70%信者だったので。。笑)
要約
リーダーもメンバーもアウトカムにこだわる
権限委譲しつつ、未達ならその原因を追求する
事業規模が大きくなることで、先回りした中長期戦略の重要性が増す
セッション内容
セッションは前田ヒロさんが質問して、倉橋さんが答えていくというスタイルで進行しました。
成長がいつ鈍化するかをどのように予測しているか?
トップがどんな目標線(成長曲線)にするか、それでどこまで無茶するのかが決まる
努力や覚悟でどうにもならないところもある
TAM
リード発生ペース
マーケでも数%しか変化しない。マクロの変化がないと劇的な変化はない
いつからTAMの拡大を意識したか?
ARR3〜10億円くらい(企業やマーケットにもよると思う)
当時のペースだと、T2D3が難しくなりそうで、SmartHRはT2D3を掲げていたので、TAM拡大に動いた
TAMのイメージとして、1/3:とれる、1/3:いつかとれる、1/3:一生とれない
ARRと10億円→100億円で見る指標は変わったか?
生産性の指標(1人あたりARRなど)
投資家から利益に対するプレッシャーも出てくる
成長曲線の仕込みのタイミングはいつか?
成長するに従ってどんどん前々から準備していないといけなくなる
ARR100億円とかにいなると、1〜2年前とかから仕込んでおかないといけない
今のSmartHRは5年後10年後を見ている
イノベーションのジレンマは発生しているか?
発生している
新規プロダクトとしてやっていることに、社員は「なんでそんな小さいところにリスク背負ってリソース割くの?」っていう反応になる
彼らには決して悪意がないという点が怖い
彼らは責任感あるから、(新しいことは)やれないですって反応になる
イノベーションのジレンマについては、全社で過去3回くらい話している(新規プロダクトがなぜ大事かをとにかく伝え続ける)
新規プロダクトチームを独立させることも重要
組織力で乗り越えられるし、それはSmartHRはできる
目標設定でも工夫できる
SmartHRはやり切る力がすごいが、その秘訣は?
やり切り力の秘訣
いい人を採用する
アウトプットとアウトカムの違いを踏まえてアウトカムにこだわる
社員が予算期間の最後の日まで動いている
各営業の達成状況にあわせて、倉橋さんが営業に声かけにいっている
リーダー陣がアウトカムにこだわる
喜怒哀楽の共有
登用
アウトカム出せる人を登用する
頭のいい人でも気合と根性ない人もいて、そういった人はアウトプットはすごいが、アウトカムが出なかったりする
権限委譲について
SmartHRは任せるスタイルの強い経営
組織が大きくなって、任せることと制御するところが曖昧になってきた
感情的に詰めることはないが、指摘と質問はする
淡々となぜ目標と乖離があるのかと聞いていく
課題解決能力が高い(3ヶ月後の次の経営会議では課題が解決している)が、その理由はあるか?
ネクストアクションと、いつまでに誰がやるかを決めているだけ
誰がボール持つかはこだわる
担当が決まってないと動けない。担当だけ決めて「後はよろしく」ってすることが多い
優先度高くないIssueは「戦略的後回し」という言葉で合意形成して、劣後に回す
担当をアサインするポイントは?
以下3つを考慮する
得意な領域
余裕あるか
やる気あるか
予算の立て方はどう工夫している?
4年前:「達成可能性70%」
半年前:「達成可能性50%」
企業が拡大して保守的な人が増えてくるとヨミが固くなってくる
最新:「チーム次第!」
組織が壊れる目標を立てている人いたりするので、経営陣からもっと抑えるよう指摘することもあり、決まった数字で表せなくなってきた
70%を参考にしてきた皆さん、本当に申し訳ない
COOとして数字見る以外で何かしている?
今は数字だけ見ている
規模が1,200人になって、それしかできなくなった
未達なるかもってなるときはどうしている?
Biz定例で質問する
ドラスティックなこともする
早く動きすぎると良くないケースもある
意思決定が早すぎることがよくある。喋りすぎる傾向があるので、会議の冒頭15分は話さないようにしている笑
数字の達成においては、早すぎるということはない(たいてい遅いことが多いので)
倉橋さんのプレゼン力すごいですね
メンバーには同じ方向を向いてもらうこと大事
リーダーは演説力重要で、そこはこだわっている
月1回の全社集会は25分の尺に、構想10時間、準備10時間かける
できるだけ社員全員に関係することに話すことを絞る
最低でも80%の人には関与するように
全社のミッションは、大事なことのうちの30%程度しかない。他にも大事なことあるので、全社ミッションだけに囚われないようにともいっている
良い戦略とは?
構造的優位性があるかどうか
なぜ私たちがやるのか
他社が真似できない構造か
COOが持つべきキャラクター
ロジックと根性をバランスよく持っている
根性だけだとエンジニアと関係性を築けないが、(倉橋さんは)根はロジカルなので、エンジニアとも関係性を築けていると思っている
話しかけやすい人間でありたい。規模が拡大するにつれて、現場の声入りにくくなるが、それはやばい。現場の情報は教えてほしい。
間違っていたときは素直に認めることも重要
倉橋さんの時間の使い方は?
単発社内MTG:29.6%
1on1:20.5%
社内定例:19.7%
社外MTG:19.7%
作業時間:4.6%
その他:5.9%
100億円後も成長できた理由トップ3
成果にこだわる組織
権限委譲の文化
先回りした中長期戦略の立案と投資
短期の問題で炎上しないように先手を打つ
これまでのSaaSではもう戦えない:最速の成長を実現する戦略とオペレーションの新条件
LayerX福島さんと福山太郎さんのセッション。
オフレコなのでセッション内容はまとめられないですが、新規事業開発やAI台頭によるSaaSの変化について解像度が上がる内容でした。
さすがの人気で、満席で立ち見客もあふれる状態になっていました、、!
エンタープライズSaaS成功への道筋。Veeva Japan 元代表が語る実践的戦略と教訓
Veeva Japanの元代表取締役である岡村 崇さんのセッション。
こちらもオフレコセッションだったため、セッション内容は記載できませんが、バーティカルでの攻め方やエンタープライズへの攻め方など、普段あまりインプットできない知識について学べるセッションでした。
“超”圧倒的エンタープライズSaaSのポジションを確立するためのCoupaの「外せない戦略」
エンタープライズ向けにビジネス支出管理(BSM)アプリケーションを提供しているCoupa Softwareの元CEO Rob Bernshteynさんのセッション。
エンタープライズにSaaSプロダクトを提供していく上で、どう刺していって、どう対応していくかについて生々しい話が聞けました。
特にカスタマイズに関するお話は非常に納得度が高く、エンプラにSaaSを売っていくためにはCoupaがやったことができるくらい強いプロダクトを創っていく必要があることを実感しました。
要約
既に参入している企業が攻めてない(気づいてない、放置している)領域を攻める
顧客の成功は顧客の満足度よりも重要で、カスタマイズは顧客の成功の可能性を下げるので避けるべき
SaaSマジックナンバーを算出して、営業やマーケティングというアクセルをどれくらい踏むかの指標にする
セッション内容
CoupaのCEOになるまでの道のり
アクセンチュアでインターンシップやって、B2Bのソフトウェアが複雑でわかりにくいと分かった(複雑なクエリ、バッチジョブ、古いコード、紙の記録)
エンタープライズ ソフトウェアの世界に入った
SAP のプログラマーとして世界中にSAPを導入してもらう
MBAを取得
Siebel Systems でPdMとしてCRMを開発
人材管理分野のスタートアップSuccessFactorsに移り、そこで会社を立ち上げ、株式公開
その後、サプライヤーリレーションシップ管理(SRM)、支出管理、ビジネス支出管理(BSM:私たちが名付けた)の分野で、約14年間Coupaを牽引
エンプラのソフトウェアで、何が機能し、何が機能しないかについて、非常に幅広く深い理解を持つようになった
エンプラのソフトウェアはSAPやOracleなどの企業が独占していたなか、ビジネス支出管理を開拓して成長させた方法
ビジネス ロジック層では実際に 4 つのことが起きている
顧客
CRM
サプライヤー
支出管理
上3つはやっていて、残ったのは支出管理だけだった
企業の支出管理は、かなり難解なテクノロジーがあり、簡単に使えるものではなかった
as a Service、On Demandとして展開されていなかった
ビジネスを構築していく中で、「ビジネス支出管理」という言葉を作り出した
ビジネスには支出が必要で、Coupaのソフトウェアは支出を最も効果的に管理するのに役立つという謳い文句
セールスフォースは情報技術を利用して企業の販売支援に重点を置いていたが、その反対側に立った
基礎的なイノベーションの4つの領域として、調達・請求・支払い・経費がある
Coupaは調達から始めた
ほとんどの企業が支出の事前承認を得るのが非常に苦手
ワークフローと承認を備えた非常に直感的で使いやすい調達エクスペリエンスを作成した
その後、請求・支払いへと拡大
ここで買収戦略を検討
コアコンピタンスを活用しないが、顧客にとっての価値を高めることができ、取引支出と相乗効果のある企業を買った
サプライヤーとバイヤーがすべてCoupaのプラットフォーム上に存在することで、ネットワーク効果(ユーザーの増加に伴い製品やサービスの価値が向上)を狙った
Coupa Pay について、その背後にある考え方
中規模から大規模の企業の内部で総勘定元帳を削除するのは非常に難しい
大規模なERPのいずれかを導入すると、長期間にわたって使用され続けるので、それを中心にビジネスを構築するには、ERPから特定の機能の一部を引き出し、常にERPに統合し直すという方法がある
中間市場で構築し、どんどん高いレベルへと押し上げていく
これをすべてのモジュールで行ったことで、ERPから多くの価値を引き出すことが可能になり、OracleやSAPに備わっている機能をコモディティ化できた
買い手と供給者の間に割って入ることができると考えている企業が世の中にはたくさんあり、ビジネスを行っている双方から何らかの価値を引き出せると考えているが、Coupaの仮説は少し異なる
方程式のもう一方の側を収益化することを検討する前に、方程式の一方の側に十分な価値をもたらす必要があると考えていた
年間数十億ドルの取引ができるようになってから料金を課し始め、供給側を収益化する方法を探し始めた
顧客や購入者にとって十分な価値を生み出し、年間 5 万ドルから 500 万ドルまでのサブスクリプション料金を喜んで支払ってもらえるようにする
その時点で、ネットワーク効果の機会が実際に定着し始め、それは今日も定着し続けている
需要と供給のネットワーク効果ビジネスを構築できる立場にある場合、創業者が実際に注意すべき最初のステップ
どちらか一方を選び、その一方に十分な価値を提供すれば、もう一方から何かを要求できるような影響力を持つことができる
両方の分野に参入し、両方から同時に収益を得たい場合は、提供するユースケースが非常にシームレスで直感的であり、世界一になること、より早く到達すること、または他社の参入を阻止できるものを構築することで、その周りに参入障壁を構築できることを確認しないといけない
2つの組織の間に割って入り、価値を引き出そうとする多くの企業は、そのように考えなければ、たらい回しにされてしまう
販売機能における成長率の決め方
会社を経営していてCEOなら、会社で最高の営業マンにならなければならない
自社の提供するサービスを販売するのが本当に上手になれば、自社の能力の 90% を実行できる人材を雇用して、それを拡大できるようになる
成長率については、販売とマーケティングの効率性のガイドラインについて取締役会やメンバーと合意をとる
SaaSマジックナンバー を活用した
SaaSマジックナンバー
= (今四半期の経常収益 – 前四半期の経常収益) × 4 / 前四半期の営業マーケティングコスト
出典:https://scalecloud.jp/blog/saas/mnumber/四半期ごとに、営業やマーケティングといったアクセルペダルをどれだけ踏んでいるかを見る
一定のガードレール内に留まるように努める
私たちのガードレールは、SaaSマジックナンバーが0.5〜0.8
これらのガードレールを 56 四半期にわたって使用することで、特定の年には年間 100%、特定の年には 50%を超える成長率を達成
他国に進出するときもガードレールを守りながら進めた
新しい市場に参入し、非常に非効率だったり、牽引力が得られないことに気づいたら、ビジネスが破綻する前に撤退することができる
パートナーについて
導入の 70% はパートナー
当時のオンプレを提供するコンサルでは、サポート費用を取るために、わざとサポート期間を長引かせているなどが行われていた
SaaSは、ユーザーを永久に保持することが目標
パートナーについて、双方の営業チームが財布からどれだけのシェアを搾り取ることができるかを競うことになるが、それを避けるために、規模が大きくなるにつれて、パートナーとの共同事業計画を開始した
日々顧客と接しているのはコンサルティング会社。顧客のCIOやCFO、CEOと定期的にゴルフをしていて、どのような新しいテクノロジー機能を導入すべきかについてアドバイスを求められている
これらすべての会話に参加することはできないので、製品主導の成長は重要だが、ある時点では新しい軌道領域に押し上げるエコシステムを持つ必要がある
それを回避する方法は見当たらない
大規模な企業顧客からのカスタマイズのリクエストはどのように対処しているのか?
あらゆる企業が求める、参入障壁が高く、高額な料金を請求できる、非常にユビキタスな機能を求めているが、これらを見つけるのは困難
顧客満足度には興味がなく、注力するべきではない。顧客を成功させることに注力している
承認者や決裁者を満足させることには興味がない
カスタマイズは長期的には顧客に損害を与える
製品はサポートされず、持続可能ではなくなり、ビジネスが機能しなくなるから
コードが急増し、解決すべき問題が発生する
(特に初期の)顧客と話をするときにはまずビジョン=ベストプラクティスで提供することを伝える
顧客が当社に来るのは、ベストプラクティスを組み込んでほしいから
規模が大きくなるにつれて、カスタマイズのために支払う金額の多さを考えると、プレッシャーは常に存在するし、カスタマイズやった時期もある
カスタマイズ少しやり過ぎだと分かったら、その顧客との取引を終了した
当時の最大顧客であるサブウェイで、ACV110万ドル
ほぼカスタム開発
その収入はCoupaのプラットフォームの拡張に充てられていた
ただ、サンドイッチに関する細かいカスタマイズ要望が出始めた際に、撤退しなければカスタム開発ショップになってしまうと気づき、取引を終了した
またACV450 万ドルの当時最大顧客(カスタマイズに期待していた)に対して、「今ここでさよならを言うか、Coupaの新しいアプローチに同意するか(ベストプラクティスを受け入れるか)」を迫った
結果的に意見は一致して、カスタマイズの多くを解明して、よりベストプラクティスに近づけることができた
顧客は満足していなかったかもしれないが、成功はしていた
満足度は定量化しにくい、成功は定量化できる
400万ドル、500万ドルを断るには勇気がいると思うが、何がそんなに勇気を与えている?
勇気は、自分が正しいという確信に基づいている
正しいこととは、顧客に測定可能な価値をもたらし、顧客を他の誰よりも成功させたいということ
ベストプラクティスの開発には、そのレベルの勇気と信念が必要
時代が進んで、エンタープライズ ソフトウェアでは何が変わったか? また、それに関する戦略と実行も変化したと思うか?
エコシステムに投資する必要性、マルチ製品を構築する必要性、自分が宇宙の中心にいると考えない必要性などは変わらない
顧客の期待は大幅に高まり、選択肢も大幅に増え、競争環境はより熾烈になっている
AIについての見解と、それに関する投資基準は?
独自のデータを入手することが最重要
今は数十億ドルが投資されて構築されている多数の LLM にアクセスできる
現在 LLM は特異性の最後の 2% に取り組んでおり、幻覚などから抜け出すことなどに取り組んでいる
しかし、RAG原則※を効果的に適用する場合は、独自のデータストアで実行する必要がある
※検索拡張生成:入力内容をそのままLLMに与えずに、まずは入力内容に関係する情報を外部から収集し、収集した情報と入力内容をLLMに与えることで回答精度を上げる技術(出典:https://www.cloud-contactcenter.jp/blog/what-can-it-do-rag.html)継続的に、できれば毎日、毎時間、毎分、独自のデータを収集する情報技術プラットフォームを構築する必要がある
データ取得の周りに堀があり、そのデータ取得は一貫性があり、簡単に構造化され、それをLMSがアクセスできる世界中のインテリジェンスやデータに適用することで、文脈的な洞察を提供できる
企業買収に関する学びは?
自社の中核となる能力が何であるかを知る必要があり、その中核となる能力に固執し、中核ではないものを買う
コアコンピタンスではないが、自分の事業と相乗効果をもたらすものを購入した
買収する会社の文化を本当に理解する必要がある(価値観の一致)
すべてをできるだけ早く統合する(遅くて失敗しているケースが多い)
社内に力をつけ、相乗効果を追求し、すぐに統合ロードマップを作成し、文化の統合に留意する
「最高を超える」最強の組織の築き方 — 経営陣たちがスケールさせなくてはいけないこと
Stripeの元COOであるClaire Hughes Johnsonさんのセッション。
チームの組成や気をつけるポイント、人間の特性ごとのコミュニケーションの方法などについてお話されてました。
私の理解力ではまとめられるほど解釈できなかったのですが、2025年の2月にClaireさんの書籍『Scaling People』の日本語訳版が出るそうなので、こちらを予約しました。
ちなみに第6章がALL STAR SAAS FUNDのサイトから無料で読めます。
2024年のSaaS、2025年のSaaS
前田ヒロさんと湊 雅之さんの今年1年のSaaS業界を振り返って、来年のSaaS業界について語るセッション。
SaaS企業の誰もが気になる「SaaS is Dead」について深堀りしていた点が特に興味深かったです。
セッション内容
PSR(時価総額 / 売上高)と相関する財務指標は売上規模によって変化し、売上規模が小さいフェーズでは利益率、売上規模が大きくなると売上成長率により強い相関がある
全社
Rule of 40(売上成長率 + 利益率 が40%以上)
Rule of X((売上成長率 × 倍率) + 利益率)
該当なし
売上100億円以上
Rule of X
売上成長率
Rule of 40
売上50億円以上 100億円未満
営業利益率
EBITDAマージン((営業利益 + 減価償却費) / 売上高)
Rule of 40
売上50億円未満
Rule of 40
営業利益率
EBITDAマージン
なぜ「SaaS is Dead」と言われるのか?
顧客の変化
SaaSからAIに予算シフト
SaaS内製化
SaaS企業の変化
成長率鈍化
追加ID余地の限界(飽和)
上場・未上場市場の変化
AIインフラ銘柄は好業績で株価上昇
SaaS銘柄は停滞
日本でも「SaaS is Dead」は起こるか?
顧客の変化
→ ×:日本ではSaaSの浸透が始まったばかりで、社内にエンジニアいない企業多数SaaS企業の変化
→ ×:SaaS企業は成長率キープしていて、エンプラ需要はむしろ高まっている上場・未上場市場の変化
→ △:AIインフラ銘柄は限定的で、AIにもSaaSにも資金が集まっている
日本ではSaaSベンダーがAI実装の柱
日本は理工系人材の供給が他国と比べて少ない
ITエンジニアがITプロバイダーに偏っている
AIはSaaSスタートアップの成長と利益の両方に貢献する
売上アップ(SOM拡大)
ソフトウェア予算より巨大な人件費予算にリーチ可能
マルチモーダル化で顧客価値向上し、ARPA(売上高 / アカウント数)向上
IDベースでの課金から、消費量・価値ベース課金でSOMの制約から解放
コストダウン
コーディングAI活用でエンジニアの生産性が向上
AIツール活用で、営業・マーケティングの一部人件費がオンデマンド化して、スケール時間の短縮化
AIが進化しても生き残るSaaSスタートアップの条件
価値の高い固有のデータ・ワークフロー・コラボレーションを押さえる
ポイントソリューション→コンパウンドに進化する
社内でAIをフル活用してオペレーション・コスト構造を差別化する
IDベース課金から消費量・価値ベースへシフト可能性がある(労働人口減少によってIDベースだとSOMは中長期的に縮小する)
2025年のSaaSの6大テーマ
業種・職種ワークフローを自動化する「バーティカルAI・エージェント」
既存産業のあり方を変える「AI社内活用・AI実装型サービス」
構造・非構造データを組み合わせた「マルチモーダルAI × SaaS」
物理世界とデジタル世界の融合「ハードウェア × AI × SaaS」
莫大な決算取引市場までカバーする「Fintech × SaaS」
AI普及でニーズが急速に高まる「サイバーセキュリティ」
SaaS企業の強いファンダメンタルの構成要素
三方よしの財務数値(成長力 × 成長維持力 × 利益創出力)
でかいマーケット(巨大なTAMとTAM拡大力)
最強チーム(人材 × 組織カルチャー × AI活用)
強いファンダメンタルを構成するために
ARR3億円を超えたら、成長に加えて効率性を意識したGTM投資
でかいマーケットを狙える「ニッチ市場」を狙う
日本では採用狂気 & 熱量高い組織づくりは最大の差別化戦略
プロダクト × ディストリビューションの二刀流
最強の相棒であるAIを徹底活用してプロダクト・組織・財務的優位性を築く
Rule of 40やRule of Xについては、以下の記事をご参照ください。
最後に
当日取ったメモをもとに、セッション内容をまとめてみました!
英語セッションについては同時翻訳(人間)の他に、AIによる日本語字幕もあったのですが、この精度が非常に高く、英語セッションもストレスなく聞くことができました。
AIのパワーを改めて実感。。
今年のALL STAR SAAS CONFERENCEも最高に面白かったです!
来年の開催も期待しております!!