国際バカロレアDPの何が大変ですか?
国際バカロレア・ディプロマプログラム(DP)は、大学入学資格として国際的に認められることを目的に考えられた教育プログラムです。
国際バカロレアDPには理念に基づいた特徴的な教え方や学び方があり、大学入学資格として国際的に認められるための評価のやり方があります。このDPの評価のやり方は世界共通です。
DPを説明するとき、DPの評価のやり方は日本のやり方とは全く違うことを伝えています。日本のやり方の発想でDPに取り組んでも国際バカロレア資格の取得は難しい仕組みになっています。
今回は、大学進学のための評価にしぼって、DPの何が大変かについて説明します。
※国際バカロレアには、年齢の応じて、PYP(3ー12歳)、MYP(11ー16歳)、DP(16ー19歳)、IBCP(16ー19歳)の4つのIBプログラムがあります。ここでは、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能なディプロマプログラム(DP)に限定して説明します。
得意を伸ばす日本のやり方
日本の大学進学を目指す場合、自分の得意分野を伸ばし、いかに苦手分野を克服するかを考えることが多いと思います。また、自分の得意分野を活かせるように大学入試の傾斜配点や大学の入試科目数から志望大学を考えることもあると思います。
日本のやり方には、自分の得意を伸ばせば自分の苦手をカバーできる発想があるのかもしれません。
得意も伸ばすが前提があるDPのやり方
DPも得意を伸ばすことに変わりはありません。しかし、日本のやり方と決定的に違うのは、その前提として、全てのことを「ある程度」できる、または「それなりに」やりきることが求められます。仮に、一つの得意分野が飛び抜けてできたとしても、他のやるべきことが基準に達していないと国際バカロレア資格の取得はできないような仕組みです。
DPは、社会人の仕事と同じ
このように説明すると、受験生の保護者から「仕事と全く同じですね」と言われたことがあります。やりたい仕事に集中したいが、他にもやるべき仕事がある。他のやるべき仕事もある程度の質が求められ、また、時間も限られている。それができないと仕事では評価されない。
DPのやり方は、社会人の仕事と全く同じやり方です。
教室の掲示物
私は、DP生の教室に画像のような掲示物を掲示しています。
この掲示物は、岩瀬大輔著『入社1年目の教科書』をヒントに、DP生に必要な心構えとして作りました。この本では、「頼まれた仕事は必ずやりきる」「50点で構わないから早く出せ」「つまらない仕事はない」の3つの仕事の原則が紹介されています。DP生にとってIAはやらなければならないものなので、仕事をIAに置き換えて作りました。
※IAは、DPで内部評価と呼ばれる各科目ごとにIBが設定している課題で、この内部評価IAと最終試験のそれぞれの結果を合わせたものがDPの最終的なスコアになります。各科目のスコアに含まれるIAの評価はそれなりの割合を占めています。IAが提出できない場合は、各科目のスコアがDPの基準を満たさない可能性があるので、国際バカロレア資格の取得は難しくなります。
各科目の内部評価IAは、複数の文献を読み込んだり、実験データを集めたりと数日取り組めばできるような簡単な課題ではありませんし、評価される課題です。
IAは決められたものなので提出しなければ評価されません。やりきるしかありません。
IAは評価されるからと考え、何度も練り直していると提出〆切に間に合わなくあなります。また、複数のIAがあるので、ひとつのIAにこだわりすぎると他のIAに取り掛れなくなります。
簡単には終わらない課題なので、途中で投げ出したくなります。投げ出すと提出できないので、やるしかありません。
DPをサバイブ
DPは「〜をやれば良い」というようなやり方ではありません。自分の性格や能力を見極めながら、全てのことを「ある程度」できる、または、「それなりに」やりきることが最低限求められます。その上で得意分野を伸ばしていく。それがDPのやり方です。
社会人の仕事と同じやり方なので、(できる人もいますが)全てのことに全力で取り組むと心が折れるに違いありません。やることに優先順位をつけ、自分を見極めながら一つ一つクリアしていくしか、DPはサバイブできません。
DPで国際バカロレア資格の取得ができたというのは、確かに大変ですが、社会人の仕事のやり方のマインドを最低限身につけた証拠と言えるとも思います。(どの程度できるかは別です。)
国際バカロレア(IB)の示す『より良い、より平和な世界を創造するためのスキル、価値観、知識を若者に与え、生きる力を身につけさせる』教育は、いつの時代でも世界中のどこでも求められる社会人の働き方の教育なのかもしれません。
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