20年目のAED: 数の裏に潜む真実
AEDが一般市民に使えるようになってから、気づけばもう20年が経過した。
日本は普及率が世界一!
まるで街中に点在する自動販売機のように、あちらこちらに設置されている。
「AED?もちろん知ってるよ」と、誰もが答える時代になった。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみよう。
私たちはこの未来を本当に望んでいたのだろうか?
たしかにAEDは広まった。
しかし、肝心の「使う人」が少ない。
AED使用率はわずか4%~5%に過ぎない。
この数字を見た瞬間、「え?」と思わず驚いてしまう。
「せっかく街中にAEDがあるのに、誰も使ってないじゃん!」
まるで宝の地図を手に入れたのに、鍵を見つけられないようなもどかしい状態だ。
ここで注意が必要なのは、AEDが装着された人が4~5%でなく、この4~5%というのは、実際にAEDを装着した人の中で、ショックボタンが押されて除細動が実施された割合であるということだ。
つまり、100人中4~5人がAEDを実際に使用している状況だ。
さらにいうと、AEDを装着していても『ショックは不要です』と言われた人はカウントされていないということになる。
この点を理解することで、数字の持つ意味がより鮮明になるだろう。
この「使用率の低さ」の理由は、単純ではない。
まず、AEDが使えるシチュエーションが限られていること。
多くの人は「倒れてる人にAEDを貼ってボタンを押すだけ」と思いがちだが、実際はそう単純な話ではない。
正確には、倒れていて反応がなく、普段通りの呼吸がない人にしかAEDは使えないのだ。
ここで「呼吸がない」とは、異常なあえぎ呼吸なども含まれる。
つまり、心停止が疑われる状態でなければAEDは効果的ではない。
この知識がないと、いざという時にAEDを使うべきかどうかを見極めることが難しい。
さらに、「AEDを知っている」と答える人たちの中で、本当に使い方を理解している人はどれほどいるのだろうか?
多くの人は、学校の授業や教習所で一度はAEDの講習を受けたことがあるかもしれない。
それでも、毎年定期的に講習を受けている人は少ないだろう。
一度やっただけで、「知ってる」と思い込んでしまうのは危険だ。
現場で「どうやるんだっけ?」と戸惑うようでは、街中にAEDがあっても意味がない。
しかし、未来は変えられる。
今からでも、「数」だけでなく「質」の向上が求められている。
例えば、AED講習を日常の一部に組み込むことだ。
公園や商業施設で気軽にAEDの使い方を学べるシステムが導入され、家族や友達と一緒に練習する日常が当たり前になる。
地域のコミュニティや学校、会社で定期的にAEDの実技講習が行われ、「AED使ったことあるよ」と自信を持つ人が増える社会。
そんな未来は、すぐ目の前にある。
さらに、技術の進歩がこの未来をさらに加速させるだろう。
例えば、ドローンがAEDを運ぶ未来。
急な心停止が発生した際、最寄りのAEDステーションからドローンが自動的に飛んできて、数分以内に現場に到着する。
AEDを探し回る時間が省かれ、誰もが迅速に対応できる未来がやってくる。
ドローンが到着したら、あとは簡単な指示通りにAEDを使うだけ。
未来の技術が、確実に命をつなぐ。
私たちは「一度やったことがある」だけで安心してはいけない。
定期的な講習と実践が、いざという時に命を救う。
そして、そのためのシステムや機会が、日常に組み込まれる社会を作ることが求められている。
次にAEDを使うのは、あなたかもしれない。
そのときこそ、あなたの知識と練習が、誰かの命を救う。
今こそ、あなた自身が積極的にAEDの使い方を学び、周りの人にもその大切さを伝えていく時なのだ。
未来の自分を信じ、今から備えておこう。