AEDのある風景
密かに続けていることがある。
当初、それが未来に何か意味を持つとは思わなかったし、SDGs(持続可能な開発目標)に関連するとも予想していなかった。
単に、自分の小さな行動がどこかに繋がるとは考えていなかったのだ。
それは、AED(自動体外式除細動器)の設置場所をグーグルマップに落とし込み、その地域に特化したAEDマップを作ること。
大げさなことではないが、いつか誰かがその情報を必要とする瞬間が来るかもしれない――そう思うと、自然と続けられている。
もう一つやっていることがある。
せっかく設置されたAEDが、看板に隠れていたり、取りづらい場所に置かれていることが多い。
だから、施設の人に頼んで、もっと見やすく、取りやすい場所に移してもらうようお願いするのだ。
前者は正直、途方もない作業だ。
町中を歩きながらAEDの場所を確認し、デジタルに記録していく。
これを続けるには根気がいる。
後者もまた、微妙な依頼で、余計なお世話と思われることもある。
施設側からすれば、「置き場所に困っているから仕方ない」と言われるかもしれない。
しかし、実際に使う瞬間を想像すると、その重要性は一目瞭然だ。いざという時、目に見える場所に、すぐ手が届く場所にAEDがあるかどうかが命を左右する。
想像してほしい。大切な人が倒れた時、AEDを探している最中に、大きな看板に隠れて見つけられなかったとしたら。
あるいは、探し当てたAEDが、脚立に乗らなければ手が届かない場所に置かれていたとしたら。
誰も気に留めないかもしれない。
けれど、たった一度でいい。
そのAEDが誰かを救う瞬間が来たなら、密かに続けているこの行動も報われると思っている。