虫歯が教えてくれた、歯の健康とAEDの関係
僕には虫歯があった。
しかも、1本ではない。
最近になって、もっと早く歯医者に行けばよかったと痛感している。
しかし、どうしても歯医者には行きたくないという気持ちが、心のどこかにずっとあった。
ある日、街を歩いていたときに目にしたものがあった。
それは歯医者の自動ドアに貼られた「AED設置施設」のステッカーだった。えっ、歯医者にAED? 驚きながら次に行った歯医者でも、同じステッカーを見かけた。
「なんで歯医者にAEDが必要なんだろう?」と、不思議に思った。
歯科治療中に突然心停止することがあるのだろうか?
疑問を持ったまま、少し調べてみると、驚くべき事実がわかった。
実は最近、AEDを設置する歯科医院が増えているという。
その理由は、歯科治療中に局所麻酔を使用することでアナフィラキシーショックを引き起こすリスクがあることや、麻酔後に極度の緊張状態で心拍数や血圧が急激に変動する可能性があるからだという。(※諸説あり)
なるほど、命を守るためには、確かにAEDが必要な場面があるかもしれない。
けれど、歯医者でAEDが必要だなんて、ちょっとドラマのワンシーンみたいに感じた。
子どもの頃、僕は歯医者に行くのが怖かった。
虫歯が痛くなる前には絶対に行かない。
痛い思いをするのが嫌で、痛みが来てからようやく「行かなきゃ」と思うタイプだった。
でも、治療が終わった後のスッキリとした気分には、少しだけ満足感があった。
しかし、その時、「歯の健康が命に関わる」と考えたことは一度もなかった。
でも、AEDと歯医者の関係を知ったことで、少し考え方が変わった。
歯医者に行くことが、ただ虫歯を治すためのものだけではなく、命を守るための大切な一歩だということに気づいたのだ。
今では、口腔ケアが健康全体に与える影響についても考えるようになった。歯医者で「歯周病が心臓に悪影響を及ぼすことがある」と教えてもらった時、衝撃を受けた。 「歯の健康が心臓にまで影響を与えるんですよ」と言われた時、ようやく実感した。
歯を守ることが、命を守ることにもつながるということを。
その日以来、毎日の口腔ケアをしっかり行うようになった。
こまめに水分を摂り、寝る前には甘いものを避け、しっかりと歯を磨く。フロスや歯間ブラシを使い、歯と歯の間を丁寧に掃除する。
これで心臓まで守れるなら、毎日の努力には価値があると感じるようになった。
健康な歯を維持することこそが、AEDの出番を減らすための予防策になる。
歯医者で受けたアドバイスは、単に虫歯を治すためのものではなく、命を守るための知恵だったと、今は心から感じている。
もし、このエッセイを読んでいるあなたが心臓に不安を感じているなら、もしかしたらその原因が歯にあるのかもしれない。
でも、まだ手遅れではない。
AEDを使うことになってからでは、本当に「手遅れ」なのだから。歯医者に行くことで、その前にできることはたくさんある。
だから、歯のケアを怠らずに、命を守る一歩を踏み出してほしい。
AEDが設置されている歯医者は、厚生労働省から「歯科外来環境体制加算施設」として認定されているところが多い。
そのため、歯医者を選ぶ際に、AED設置の有無を参考にするのも良いかもしれない。