【詩】嘔吐
きみは知らない
きみが幸せそうな顔をしているのを見て、吐きそうになっているひとがいることを
綺麗さっぱり吐けてしまったのなら幸せなのだけれど、そもそも吐き気がこないのならばどれだけいいか、と確かにそう思っているのだけれど。ただそんな願いはすぐに、思い出せない夢みたいに消えていき、今日も今日とて路傍でとどまることのない嘔吐をするのです
そして何も知らないきみはきっと、ごくごく一般的な感性から、いとも簡単にその吐瀉物が気持ち悪いと言ってしまう
他人の幸せを願っている、そんなことを本気で言ってしまえるきみはきっと
今日も明日も何十年後にも
どこまでも途方もない、空ばかりを見ていて、
それでも、地面に広がる吐瀉物を避けながら、死ぬまで器用に歩いていく