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カナダから日本に帰国して
以前の記事でも少し書いたのだが、私と旦那さんは何度も話し合いをした結果、カナダに長期滞在するのではなく、とりあえず日本に帰国して日本で生活基盤を築いていくことを決意した。
カナダ滞在の最終夜。
こないだ紅葉が美しいと感動していたかと思えば、ちらちらと雪が降り始めた。
日本へ出発の当日の朝、目覚めてベランダに行くとまだ残った紅葉の上にうっすらと雪が積もり、美しい銀世界が広がっていた。
私たちは、出発の9時半に間に合うように8時半から義理両親の愛犬のペニちゃんを連れて最後の散歩に出かけた。
散歩をする頃には、ちらついていた雪は止み、頭上には澄んだ美しい空が広がっていた。地面には差し込んだ朝日に照らされてキラキラと光り輝く。
その日はちょうどハロウィンの日。
仮装をした子どもたちが登校している姿が見えた。バンパイヤやプリンセス、蜂さん、ピカチュウなどなど。
中には、子どもと同じように仮装している親の姿もあった。
子どもたちは今年初の雪に興奮して遊び、またお互いのハロウィン仮装を見せ合って楽しそうに学校に向かって歩いている。
ペニも雪が嬉しいみたいで、敢えて雪上を走ってみたり、足で雪を
蹴ってみたり、楽しそうだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1698968270249-kiuH3V05PW.jpg?width=1200)
最後の最後にこんなに素敵な雪景色と子どもたち、ペニの楽しそうな愛しい姿を見ることができてとても幸せな気持ちになった。
それは、まるで、神様からのギフトみたいだった。
そんな楽しい散歩の時間はあっという間に過ぎ、いよいよ出発の時間になった。
私たちは車と玄関を行き来して重たい荷物を運び出した。
いつもなら、はしゃいで外に出ようとしたり、私たちに戯れてくるペニだが、その時ばかりは静かにソファに座って、私たちの姿を遠目からただじっと見つめていた。
ペニは義理両親の犬ではあるものの、私たちが滞在している間はどんな時も一緒だった。寝る時ですら、彼女は私と旦那さんの間に割って入って3人で寝るのが当たり前だった。
家族同然のように過ごしてきたのに、突然ペニを置いて私たち2人だけで日本に帰る。
そもそも犬のペニには私たちと一緒に日本に来るという選択肢は与えられていなくて、なんだかペニに不公平なことをしてしまっているような気がして胸が痛んだ。
またなんと言っても彼女としばらく会えなくなるのはとても辛く、悲しかった。
私たちは沢山のハグとI love youをペニに伝えてお別れをした。
最後までペニはソファから動かず、私たちが家を出るその瞬間まで私たちを見つめていた。
きっと私たちが去ることを感じ取っていたのだろう。
空港に向かう道中、日が高くなるのに伴って景色から雪が消えていった。
すっかり雪が溶けてなくなった空港に辿り着き、最後に空港まで送ってくれた義理両親と大きなハグをしてI love youとまた絶対に帰ってくるからねと伝えてお別れをした。
やっぱり家族とのお別れは寂しい。
カナダ滞在は本当に幸せな時間だった。
カナダ人はフレンドリーだし、みんながありのままの私を受け入れてくれるし、愛する家族(もちろんペニを含めて)、そして友だちがいて、、、。
カナダはもはや私にとって外国というよりは第二の故郷になった。
一方、私の中で日本は第一の故郷であるものの、カナダに比べると、なんとなく生きづらい社会が待っているような感じがしていた。
もちろん家族や友人に再会できるのは嬉しいけれど、それと同時に、せっかくカナダで自由に軽やかになった私の心と魂は、日本に戻ったことによってまた萎縮してしまわないだろうかという不安が過った。
そんな感じで私はやや憂鬱な面持ちで飛行機の窓から小さくなっていくカナダの景色を見つめていた。
ふと、実の家族や友人たちが沢山カナダにいる旦那さんの様子はどうだろうと右隣の彼の様子を見る。
一応落ち込んでいる私に気を遣ってあまり興奮しないでおこうとしているらしいが、彼は自分がワクワクしているのを隠しきれていない。
私が呆れたように
「何、日本に帰るのそんなに嬉しいの?」
と聞くと、
「まあジェリーは落ち込んでいるからあんまり言わないでおこうと思ったけど、そういうこと」
と、満面の笑みを浮かべて答える。
当たり前だけど、外国が好きな私が日本大好きの外国人と結婚したらこういうことが起きる。
こりゃ、彼を説得してまたカナダに帰るのはなかなか難しいぞと腹を括る。
14時間ほどの長いフライトを経て、ようやく羽田空港に到着した。
横で旦那さんは「おにぎり、おにぎり〜」と楽しそうだ。
乗り継ぎの手続きをしているとなんやかんやで時間がなくなり、コンビニに寄る時間すらないままにターミナルに行くことになってしまった。
旦那さんは、せめてもと自販からお茶を買ってきて、ごくごくとすごい勢いで飲む。
「こんなに美味しいペットボトルのお茶カナダで飲めないよ〜、
やっぱりいいよね、日本♡」とややウインク気味で私を見る。
ようやく乗り継ぎ便に乗って関西に到着し、念願のコンビニにも行くことができた。
近くのゲストハウスで、2人して夜な夜なコンビニから買ってきたおにぎりと味噌汁をいただく。
「ウッっま」
旦那さんは目を回してみせる。
これは旦那さんがおいしさに感動した時にみせる表現だ。
確かに久しぶりに食べるおにぎりと味噌汁はすごく美味しかった。
帰国してやや落ち込んでいた私だったが、今までの海外旅行から日本への帰国と大きく違うところは、今回の私には愉快で、時折大げさまでに日本が大好きな旦那さんがいることだった。
そう思うと、日本に帰ってきたことも悪くないかもしれない。なんなら楽しい経験になるかもしれない。
日本の悪いところばかりじゃなくて、素敵なところを見てみよう。
それ以来、新鮮な気持ちで日本に住む人々や物を見始めるようになった。
そして、意外にも、日本に否定的な気持ちを抱きがちだった私が、日本は結構素晴らしいことに気づき出した。
これからは、そんな私の視点で見た日本での日々についても書いていきたいなと思う。