中間地点
時計を見ると3時2分だった。
早い時間に目を覚ました僕は、この時間帯に目を覚ましたという何気ない出来事にとても深い意味があるような気がしてならず、少しワクワクした。
目に見えない不思議な力のことを恐らくは「スピリチュアル」と呼ぶのだろう、僕は良く分かっていない。調べれば良いのだ。しかし、調べることによって得た知識をそのまま文章として書き記す行為が僕は何故か許せない。
伝わりにくいかもしれないが聞いてほしい、難しい言葉の表面の部分だけを削り取って真っ白な紙の上に重ねていく、この表現は果たして正しいものなのかは分からないが、「うろ覚えであるまま自分の言葉で少しかっこをつけて表現する」ことが僕は大好きだ。
素直に書けば良いものを、僕は遠回しな表現や比喩的な表現をすることに強く憧れを抱くもので誰かに反対されても絶対に辞めないだろう。 意固地になることで自分の書く文章の形は変になっていくことに気付きながらも辞めることはできない。小説やエッセイは向かないと分かってやり方を変えたとしても、結局承認欲求には勝てなかったのである。
3時ちょっと過ぎ、厚めの本を読む。
有名な作家がデビューして間もない頃に書いたであろうミステリー小説だった。
以前から気になる内容であると気になってはいたが全く手をつけていなかった。
それもそのはず、本を読む心の余裕が全くなかったので読書を遠ざけていたからだ。
本を楽しく読めるということはメンタルが少しずつ安定して将来に対しての希望もあるという状態なのだろうと思い幸せを感じる。
一時間ほど本を読み、80ページ読む。
時間は4時前、自分の勝手な行動を反省しながら会ってみたい人のことを考えた。
あの人の声はとあるアーティストにとても良く似ており、とても可愛らしい声である。
個性派といえば個性派であるが、可愛いという芯を確立すれば個性派という印象がガラリと変わる。
強いていえば妖艶な大人びた女性、裏を返せば猫を被ったような素性の知れないミステリアスな女性であり腹黒い一面をのぞかせるような一面を持っていそうな、計り知れない、彼女はそんな人だ。
声を聞いたのが最初で最後だったなんて、悲しいオチで終わらせたくない、だからこそ僕は自分の行動を悔いた。
終わり