ものや金をねだられる
中岡哲郎 『メキシコと日本の間で』 岩波書店 1986年 p.142
「ホテルの前の砂浜でねそべっていると、次から次へ乞食がやってくるのには閉口した。たいていは小さな子と組の女で、金はないというと、人のなめているアイスクリームを指して、それをその子によこせとねばる。優雅な気分は半減してしまう。」
僕が青年海外協力隊員として派遣された南米・ボリビア。南米の最貧国といわれ、確かに町中に物乞いはいたし、ホームレスもいた。だけど直接ものや金をねだられることは、ほとんどなかったように思う。たまに子どもに持っているあめ玉やお菓子をくれとねだられるのはご愛嬌。それよりも「君の力で日本から援助をもらってくれ」と暗に要求する同僚のほうが面倒。
ただ個人的に行った海外旅行先では経験がある。観光地で子どもに囲まれて金を要求されたり、ものを買ってくれと言われる。この時に現地のガイドは相手にするなと言う。そして「この子たちは恵んでもらえると、それを覚えて、自分で働くことも学校に行くこともしなくなる」という言葉を今でも覚えている。
自立を助長するような援助でなければならない、だから与えるだけではダメ。僕はそう思い、青年海外協力隊に参加したが、そのような活動ができたわけではない。自分が現地の人にたくさんのことを与えてもらったと思っている。海外援助をはじめ、援助(支援)するというのは難しいですね。
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