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【導入事例】地方創生に取り組む、三重県いなべ市×ハピキャンの情報発信。──目指す方向を同じくするパートナー関係から生まれた共創

三重県いなべ市は、日本有数のアウトドアシティであり、SDGs未来都市にも選ばれている自治体です。キャンプ場をはじめ、豊かな自然に恵まれた環境が魅力で、近年では、積極的に関係人口の創出や市民増加に取り組んでいます。

ハピキャンとのコラボレーション企画も多く、火を教育素材としたイベント「ハピキャン de 火育」や、落書きをアートに昇華させる「落書きタープアート by ハピキャン」などのイベントをこれまで実施してきました。

そこで今回、いなべ市役所商工観光課の佐藤様にお話の機会をいただき、ハピキャンとの活動を振り返ることに。積極的なコラボレーション活動を支える原動力に迫るほか、メディアと連携して企画を打ち出すことの狙い、実感している成果、今後の展望なども併せて伺いました。

いなべ市役所商工観光課 佐藤様

地方創生に向けた活動へ。ハピキャンとの出会いと協働の歴史

(左)いなべ市役所商工観光課 佐藤様 (右)ハピキャン編集長 大西

──まずは、いなべ市の概要とともに、佐藤様の自己紹介をお願いしてよろしいですか?

いなべ市は2003年に4つの町が合併して誕生した自治体で、私自身は旧員弁(いなべ)町へ1999年に入職しました。

13年ほど会計課に勤め、2013年からは政策課で市の計画策定や行政改革を中心に担当。2021年からは商工観光課の業務も兼任するようになり、観光を切り口とした地方創生とまちづくりに力を入れてきました。

2024年4月には政策課の兼務が外れ、現在は、観光や都市整備を中心に取り組んでいます。

──ハピキャンとの出会い、取り組みが始まった経緯について教えてください。

いなべ市としては2016年頃から、アウトドアを中心としたイベント企画・プロモーション活動を始めていました。ハピキャンがスタートした2019年春頃には、編集長の大西さんとはいなべ市のキャンプイベントなどを通して会話をするような関係になっていたんですよね。

本格的なコラボレーションがあったのは、2022年の「ドデ祭り」でお披露目した「ハピキャンカー」だったと記憶しています。メ〜テレ(名古屋テレビ)朝の情報番組「ドデスカ!」の放送20周年を記念して開催されたお祭りで、昔ながらの懐かしいお祭り×音楽ライブやマルシェも掛け合わせた新感覚イベントです。

いなべ産の甘夏やみかんを使ったジュースなどを販売し非常に好評だった「ドデ祭り」(2022年9月)

その後は、WebメディアやYouTubeの動画コンテンツ、地上波の番組放送を組み合わせた
「複合型アウトドア情報発信メディア」であるハピキャンの恩恵を受ける形で、さまざまな情報発信に取り組んできました。

──行政や市が、ハピキャンと連携することのメリットは何でしょうか?

一番のメリットは、自分たちにはない発信力をお借りできることだと思います。複数のメディアを掛け合わせた相乗効果が期待できるほか、継続的なお付き合いを続けていくうちに「人と人との繋がり」も増えていく。そこがまず何よりの魅力です。

特に私が意義を感じているのは、ハピキャンという1つの枠組みの中でコンテンツを作ることで生まれる共創の価値です。回数を重ねるたびに、イベントの企画やアイデアがブラッシュアップされ、発信力がますます高まっていることを実感しています。

また、「いなべ市SDGs推進パートナー」として名古屋テレビと協力関係を結んでいる関係もあり、お互いの目指す先が似ているのも重要なポイントです。自然の中での “時間を楽しむ” ことに興味をもってほしいと考えるハピキャンと、アウトドアを楽しむことができるまちとして打ち出すいなべ市。自然を大切に思い、自然の中で遊べることに感謝をする点において、両者には共通の価値観があると考えています。

遊びの中に教育要素の隠し味、カジュアルなSDGs体験

──ここからは改めて、印象的だったこれまでの取り組み事例をご紹介いただければと思います。

2つご紹介させてください。1つ目は2024年3月に実施した「ハピキャン de 火育」という野外イベントです。青川峡キャンピングパークに焚き火マイスターの猪野正哉さん、新富士バーナー(SOTO)さん、トヨトミさんをゲストにお呼びし、2日間にわたって開催しました。

ハピキャンといなべ市による火育プロジェクト「ハピキャン de 火育」(2024年3月)

日常の中で火に触れる機会が減っていたとしても、生活に必要なものであるのは確か。「正しく学んで、楽しむ」をテーマにした企画で、先導役の先生がいるワークショップにしたことで、保護者の方々も子どもたちも安心して火に触れてもらうことができたと思います。皆さん笑顔にあふれ、家族で充実した時間を自然の中で過ごせる、非常に良いイベントになりました。

いなべ市「にぎわいの森」にて開催した『落書きタープアート by ハピキャン』(2022年12月)

2つ目は「落書きタープアート by ハピキャン」です。「日常生活・体験から気づくSDGs」をテーマに、子供たちの好奇心を刺激し、おもいっきり落書きができる環境を提供しました。

アーティスト(クリエイター)と自治体が協働することで、地元住民の皆さんから良い反応も得ることにも成功。陣幕にはアーティストがオリジナルでいなべ市をイメージした作品を書下ろしてくれていて、タープとセットで今後のイベントでも繰り返し活用する予定です。

できあがった作品はいなべ市役所のシビックコア内に、イベントの意図や狙いを解説したパネルとともに併設

──企画のポイントはどこにありますか?

どちらの企画も、遊びだけでなく教育的要素があり、記憶にも残りやすい体験設計になっていることです。市の魅力を知ってもらい、将来的に市に住んでもらうことを目的するのであれば、カジュアルに(=わかりやすく&楽しく)、SDGs未来都市・いなべ市らしい発信をすることが大切だと考えています。

ハピキャンと共に作り上げる企画はエンタメ要素が満載で、遊びの中で自然とSDGsに繋がる行動をワークショップを通して体感できる。だからこそ、私も企画の仕上がりにはいつも高い満足感があるのだと思います。

官民連携、楽しさと学びを深めるイベント企画のコツ

──これらの企画を創り出していく過程についても、印象的だったことを教えてください。

お伝えした2つのイベントに関しては、私から大枠のラフイメージを出して、ハピキャンの大西編集長と内容を詰めていくスタイルを取りました。

「ハピキャン de 火育」を例に出すと、いなべ市では以前から少人数制の自然体験イベントを開催していたので、そこにアウトドアの魅力や教育要素を盛り込んだ形でまず案を出しました。

そこで大事にしたのは、参加者の一人ひとりと会話をする機会を用意しながら、いなべ市のファンになってもらえるような体験設計にしたこと。大西編集長は1つのアイデアに対して、具体的かつ複数の提案をすぐに返してくれるため、ディスカッションパートナーとしても非常に頼りになりました。

企画力が高いのはもちろんのこと、ハピキャンの有するメディアや人脈などリソースも豊富なので、認知獲得など、イベント後の成果もイメージしやすかったのが嬉しかったです。

──市のプロモーションをする上で、佐藤さんが大切にされていることもぜひ教えてください。

もっとも大切にしているのは、私自身が企画にワクワクできているか、参加者として考えた時に自分が楽しんでいるイメージを持てるかどうか、です。究極的には、それさえできていれば参加者の方も絶対に喜んでもらえると思っているので。

あとは、ハピキャンに依頼後も丸投げにならないように、積極的にかかわり続けることでしょうか。私自身も熱量高く取り組ませてもらっていますが、土台として、市長が商社出身のキャリアということも大きく影響していると思います。

保守的になりすぎず、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢があるんです。だからこそ、ハピキャンとも楽しみながら取り組めている気がします。例えば、イベント当日に少しハプニングがあったとしても、それも含めアウトドアイベントの魅力をお互いに認識できる関係性があるというか。

ケガの可能性がある場面では事前アナウンス・安全指導がもちろん大切です。でもそうでなければ、あえて不確定要素を残すほうが良かったりもします。スタッフが当日の予想外の展開で焦っている様子などは、参加者も見ていて和むと思うんですよね。

──楽しさと真面目さのバランスが重要なんですね。

その通りです。そこで重要になるのが、自主的に取り組みたくなるような仕掛けを用意できるかどうかです。例えば、災害時に向けた備蓄の必要性を上からの目線で説いても、関心が生まれないばかりか反発も起きかねません。

しかし、キャンプを楽しめるように促せば、食料も日々ローテーションしながら消費することになるので、自然と備蓄がなされます。テントでの過ごし方や車中泊の練習も家族でできますよね。遊びを通して、楽しみながら防災に関する大切な知識が身につくような仕組み作りをアウトドアの企画では意識するようにしています。

もし大変なことが起きても乗り越える力を身につけてほしい。そんな願いも実は込められているんです。

いなべ市のファンを増やすため、さらなる共創活動へ

──最後に、いなべ市の今後の展望を教えていただけますか?

もっともっとファンを増やしていきたいと考えています。仕事や家庭の事情でいったんは市を離れる人でも、心の片隅にいなべ市が残っていたら嬉しいなと思っていて。あるいは、戻ってきた時にボランティアスタッフとして取り組んでもらえるような、そういった関係性が作れたら最高です。

最近では、商工会の人が東京でイベントに出ても「三重県の北部ですよ」「名古屋市の隣にあるんですよ」と説明する必要がなくなってきた、と聞きます。いなべ市の認知度は着実に上がってきました。より多くの人たちに知ってもらう意味でも、今後も継続的に体験型のイベントを開催し、市の魅力をアピールしていきたいです。

そのためには、待ちの姿勢ではなく、私たちが外に出てプロモーションする姿勢が大切だと考えています。今後もハピキャンをはじめ、多くの方々と共創をしながら市の魅力を発信していきたいですね。

今後も楽しい企画、ワクワクするイベントを開催したいと思っているので、どうぞよろしくお願いいたします。

取材協力:三重県いなべ市
https://www.city.inabe.mie.jp/


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