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【第172回直木賞候補作品 受賞作予想&感想】

半年に一度の直木賞、今回は明日、1月15日に発表予定です。
発表日前に、5冊のノミネート作品を全て読破することが出来ました。
そこで、今回の受賞作を予想してみたいと思います。

《個人的な好みランキング》

  1. 『飽くなき地景』 荻堂顕

  2. 『藍を継ぐ海』 伊与原新

  3. 『虚の伽藍』 月村了衛

  4. 『秘色の契り阿波宝暦明和の変 顛末譚』 木下真輝

  5. 『よむよむかたる』 朝倉かすみ

今回は、全体的にものすごく面白いと思える作品は少なかったかなと思いました。

その中でも『飽くなき地景』が面白かったです!荻堂顕さんの作品は初めて読んだのですが、語り口がめちゃくちゃ好みだったこともあり、他の作品も読んでみたいなと思いました。

伊与原新さんは、幅広い科学の知識を活かした作品を書かれる方で、『藍を継ぐ海』もその特色をもって読者を惹きつけている作品でした。

『虚の伽藍』は、この中では一番エンタメ性は高い作品だったかなと思います。
僧侶とヤクザという、普段生活している限り頻繁にはお目にかからないような方々が描かれていて、ドラマのような急展開がたくさん用意されていました。

《受賞作予想》

『藍を継ぐ海』 伊与原新

上記の作品が受賞すると予想。
一番面白かった『飽くなき地景』が受賞して欲しいなとは思うのですが、
『藍を継ぐ海』は図書館の予約件数が多い(=人気が高い)し、テーマ性もしっかりあって、短編集で読みやすく、評価されやすい要素満載なので、受賞されるのではないかな?と予想しました!
ちなみに、私が住んでいる近隣の図書館での予約件数は『よむよむかたる』が一番多かったので、こちらも人気のようでした。
果たして、当たるかな??

《1/15追記:実際の受賞作は…》

今回は初めて大当たりでした!
予想がドンピシャで嬉しいです。
『藍を継ぐ海』受賞の伊与原新さん、おめでとうございます。

やはり、伊与原新さんの作品の特徴である"理系の知識×文学"が高い評価を得たのではないかな、と思います。
最近NHKドラマになった『宙わたる教室』の放映直後、というのも大きかったのではないでしょうか。
これを機に、様々な方に読んでいただきたいですね。

《各作品の感想(読了順)》

◆『藍を継ぐ海』 伊与原新

日本のどこかにある、人間の力が及ばない自然や科学の力の痕跡、そして人生のどこかでそれらを見つけていくこと---そんなことをテーマにした短編集でした。
土、オオカミ、原爆、隕石、ウミガメがそれぞれのモチーフでしたが、私は、投下されて間もなく原爆が及ぼした影響について研究を行った人、そして遺っていたそれらを大切な遺産として扱った人々をテーマにした話が一番好きでした。
今回、すごく驚いたのが、伊予原新さんが書く方言のクオリティの高さ。
描かれていた日本各地のすべての場所のネイティブなんじゃないかと思うぐらいでした。

◆『虚の伽藍』 月村了衛

仏教、暴力団、古都の金脈に群がる魑魅魍魎…読む前は本の紹介文のどのワードにも惹かれなかったのですが、直木賞ノミネート作品に挙がったということなので、手に取りました。
結果、すごく面白かったし読み応えのある一冊でした。
序盤を読んだところで、このキャラクターは絶対後半裏切るよね、そしてマネーゲームの末、最終的に誰も救われないパターンよね、と予想しまして、それは(わたしには珍しく)当たっていました。
展開が見えたからといってつまらないものでもなく、むしろどういう結末が待っているのか確認したくて後半は一気読みでした。

◆『飽くなき地景』 荻堂顕

一振りの刀にまつわる、父子の愛憎ストーリーでした。
とても面白かったです!ぜひ直木賞受賞して欲しいなと思う作品でした。
萩堂顕さんの著作は初読みでしたが、真面目な顔をして冗談を飛ばすような文体がとても私の好みで、すいすい読めました。
内容的にも、実話をミックスして再構成したこれまた私好みのストーリー展開で、とても読み応えがありました。
淡々と進むも、え!と本を取り落とすような展開が要所要所に配置されていて緩急がありました。
欲を言えば、ラストにもう一度衝撃展開があったらなお良かったかなと思いますが、それは贅沢かな?

◆『よむよむかたる』 朝倉かすみ

小樽の町の坂の途中にある『喫茶シトロン』を舞台に、定期的に開かれる平均年齢85歳の読書会---という設定は、読書好きなら誰でもわくわくしてしまうはず。
その設定に期待し過ぎてしまった面もあったかもしれません。
セリフにカタカナが多くて(「チョット」とか「ダイジョブ」など)読みづらく、完全に好みの問題なのですが、あまり好きな語り口ではなかったです。
ストーリーに起伏がないし、仕掛けも少なく、主人公の成長も心に響いてこない感じで…、正直、エンターテイメント作品としての価値はあまり感じられないなと思ってしまいました。

◆『秘色の契り阿波宝暦明和の変 顛末譚』 木下真輝

江戸時代中期の徳島を舞台にした、私の好きな『史実に基づいたフィクション』でした。
ミステリー要素あり、アクションあり、ブラザーフッドもありの盛りだくさんの内容で、文章も読みやすかったのですが、何かが物足りないような気がしました。
他家から養子に入った藩主の重喜と、家臣の忠兵衛がメインの登場人物なのですが、十五年間の物語の中で、忠兵衛の気持ちや、その2人の関係性の変化は描かれているけれど、重喜の内心についての記述が少ないなと感じたのが原因かもしれません。
面白いキャラクターなので、人柄をもっと知りたかったです。

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