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管理職は何を管理すべきか

マネジャーは日本語で管理職と訳されます。

管理職の役割とは何か、と問われたとき、多くの人が思い浮かべるのは「メンバーを監督すること」「業務を進行させること」などではないでしょうか。しかし、管理職の真の役割は、組織の目的や目標を達成するために、メンバーや資源を最適に運用する(なんとかする)ことにあります。

今回は管理職が管理すべきことと管理すべきではないことを明らかにしつつ、介護現場における実践的な管理についてお話しします。

管理はするが、監視はしない

まず大切なのは「管理」と「監視」の違いを理解することです。

監視とは、メンバーの一挙手一投足を細かく見張ることを指しますが、これは必ずしも生産性や信頼関係の向上につながりません。むしろ、過度な監視はメンバーの自主性を奪い、士気を低下させる恐れがあります。

メンバーの能力に関わらず、すべてに報告を求め、その内容に対してその都度良し悪しのジャッジをする管理職がたまにいますが、そういう管理職の下で働くメンバーは、常に管理職の顔色をうかがいながら仕事をしているので、自分で考える力、自分の判断に責任を持つ力が育ちません。

一方、管理とは、目標を達成するために必要なリソース(時間、人員、予算など)を適切に配置し、全体の進行を把握することです。たとえば、介護現場では、シフト調整や業務負担のバランスをとることが管理の一例です。

管理職が行うべきは、メンバーの行動を逐一チェックするのではなく、成果を最大化するための環境を整えることです。

成果とプロセスを管理する

チームの成果に対しする管理は管理職がします。
具体的には、組織やチームが設定した目標に向けて、計画通りに進捗しているのかを見定め、その要因を分析したうえで、必要に応じて計画に修正を加えます。

ただし、管理するのは成果だけではありません。プロセス、すなわち目標を達成するための道筋や方法にも目を向ける必要があります。

介護現場では、利用者満足度や利用率(入居率)といった成果だけでなく、チーム内の連携や業務フローの効率性など、プロセスの改善も重要です。

強引な手法を使えば、短期的に数値目標をクリアすることは可能です。
しかし、それは長続きしません。チームが常に目標を達成し、成長し続けるには、メンバー一人一人の能力とチームワークを高めていくことが必要です。
管理職は個人の成長・変化、チームバランスの変化にも目を配ります。

主体性を育む管理

監視は主体性を奪い、チームの成長力を奪いますが、適切な管理は個々の主体性を伸ばし、チーム全体の成長を促進します

主体性を育む管理のポイントは、以下の3つです。

1.目標の明示と合意形成: チームの理想像や目標を明確にし、繰り返し伝えます。さらにはチームの目標達成のためにメンバー一人ひとりに期待する役割や目標をそれぞれと話し合い、合意します。

たとえば、労働環境改善のために、月の残業時間を20時間以内にするという目標を立てた場合、どのように残業時間を減らすのかはそれぞれに任せます。本人が計画に沿ってコントロールできているのなら、残業のたびにグチグチ指摘してはいけません。

2.権限の委譲と報告基準の明確化: 責任の範囲に応じて判断や決定の権限をメンバーに与えます。その際、どういう場合には報告がほしいのか、メンバーと合意しておきます。

たとえば、食器の選定を任せたとします。「予算を超える場合、または予算よりも20%以上低い金額になりそうな場合には、即報告すること。逆に範囲内であれば、自由に選定し、最終の選定結果を報告すれば良い」というように、あらかじめ取り決めておきます。
すると管理者は「報告がない」とか「いちいち確認するな」という思いをすることがなくなりますし、任された相手も「いつ」「なにを」報告をしたら良いのか、迷わずに済みます。

3.承認とフィードバック: 権限を委譲したら口を挟まないのが原則ですが、口を挟まないことと無関心は全く違います。無関心は丸投げであり、委譲ではありません。
メンバーは管理職から気にかけられていることがわかるだけで安心します。ただし監視されている思うと萎縮します。
このバランスはメンバーとの関係性にもよるので難しいのですが。

メンバーの様子を観察し、時には声をかけ進捗を確認したり、困りごとはないかと尋ね、メンバーが言い出せずにいる問題がないか把握します。これは管理の範囲です。特に問題がなければ、現状を承認します。
また、進捗に問題があれば、理想と現状の差についてフィードバックをしたり、メンバーの求めに応じてアドバイスを行います。
ただし質問攻めをしたり、求められてもいないアドバイスをすることは監視と受け取られかねないので注意が必要です。

介護現場では、日々の業務の中でスタッフが主体的に動くことが求められます。そのためには、管理職が信頼を持って任せる姿勢を示し、失敗を学びの機会と許容する風土を育てることが重要です。

管理職自身も管理する

最後に、管理職自身の管理について触れましょう。

管理職は多くの責任を負う立場ですが、自分自身の時間やエネルギーの管理を怠ると、ストレスや過労につながり、結果的にチームにも悪影響を及ぼします。

以下は管理職が自身を管理するためのポイントです。

  • 優先順位をつける: すべてを完璧にこなそうとするのではなく、委任のスキルを発揮して、自身は重要度の高い業務に集中します。

  • 内省の時間を設ける: 日々の業務を振り返り、改善点や成功体験を整理し、次への教訓や活力を得ます。

  • サポートを求める: 困難な状況に直面したときは、同僚や上司、専門家に相談することをためらわないようにします。

介護現場の管理職にとって、自分自身の状態を整えることは、チームの安定と成果に直結します。


管理職の役割は、メンバーや業務を「監視」することではなく、組織の目標を達成するために最適な環境を整え、メンバーが主体的に働けるよう適切に「管理」することです。

管理職にとっては「監視」の方が簡単です。すべて自分のコントロール下に置けばいいのですから。しかし、介護現場のような複雑で人間関係が重視される職場では、「監視」と「管理」を間違えると、大きな差が生まれます。
管理職は「監視」したい欲求を抑えて、適切に「管理」するスキルを習得していきたいものです。


めでたしめでたし

立崎直樹

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立崎直樹@めでたし〃
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