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使われるマニュアルのつくりかた

マニュアルはあるけれど、使っていない。
せっかくみんなで作ったのに、使ってもらえない。
マニュアルをみたけど、使えない。

マニュアルを作るのには、かなりの労力を使います。
それなのに、出来上がったマニュアルがほとんど活用されないのは、とても悲しいですよね。

「活用すること」に徹底的にこだわったマニュアルを280以上作成してきた僕が、作成に当たって意識しているポイントを簡単にお伝えします。

知りたいことが分かる

マニュアル作成する人が一番陥りやすい落とし穴で、かつ、マニュアルが使われない最大の理由が、マニュアルには作成者が伝えたいことばかりが書いてあり、使う人が知りたいことが書いてない、という問題です。

マニュアルを作ろうと言い出すのは、たいてい管理職などマニュアルを使って人を指導する側の人です。それ自体は全く問題ないのですが、実際にマニュアルを使う人の目線に全く立てていないというのが問題です。

自分が使う側になったときのことを想像してみましょう。

マニュアルはどんな時に使いますか?
・新しい仕事を覚えるとき
・めったに行わない仕事をするとき(PCのシステム更新作業など)
・仕事を教えるとき

大体このあたりだと思います。
逆にマニュアルをみなくてもできる仕事について、都度マニュアルを開く人などいないでしょう。

しかし、自分が伝えたいことを書こうとするマニュアル作成者は、すでにマニュアル化のニーズがない仕事について、その注意点を羅列して、読者に注意を促そうとします。
ところが、そもそもそのマニュアル自体が開かれることがないので、せっかく書いた注意点は、メンバーの目には届かないのです。

まず、マニュアルを開く習慣をつけるには、メンバーが必要としているマニュアルから整備していくことが基本です。
そのためには、業務を観察したり、ヒアリングをしたり、といった準備が必要になります。

文書形式よりステップ構造

マニュアルを開くのは、その業務のやり方や考え方を知りたい時です。
Wordの文書形式で、法律文章のような構成のマニュアルもよく見かけます。
規則やルールについては、解釈の揺れが生じないように文書形式にすることもありますが、そういう類の文書は、開いただけで嫌になってしまいます。
知りたいことが、パッとわかることが良いマニュアルの条件です。

そのためには、行動が順番に示されるステップ構造が最もシンプルでわかりやすいと思います。

何をしたらいいのかがわかる

使われないマニュアルの2つ目の特徴として、注意点や禁止事項は書いてあるけど、「では何をしたらいいのか」が分からないという問題があります。

たとえば、
「机の上に介護記録を放置してはいけません」というマニュアル
これを読んだ人は何をしたらよいのでしょう?

ある人は、「介護記録のファイルを閉じておけば机の上においてあっても良い」と考えるかもしれませんし、別の人は「すぐに戻るから放置ではない」と考えるかもしれません。
このように注意事項や禁止事項だけ書かれても、人それぞれの解釈によって行動はバラバラになります。

したがって、「~してはいけない」という書き方ではなく、「~する」という書き方に揃えます。

例)介護記録を記入もしくは閲覧中以外は、キャビネットに戻す。

読む人目線である

僕がみてきたマニュアルの中には、読んでいてちょっと嫌な気持ちになるものがありました。その理由を自分なりに考察し、共通点を発見しました。

それらのはマニュアルの語尾に以下のワードが多発しているのです。
・「~してはいけません」
・「~してください」
・「~しましょう」

すべて、上から下へ見下しているような感覚があります。
「~してはいけません」は強い禁止なのでわかりやすいですが、実はよくありそうな「~してください」も優しい指示です。「~しましょう」は、先生が子どもに向かって諭しているような印象を受けます。

僕がマニュアルを作るときは、「読む人を主語にする」ことにこだわっています。
これは料理のレシピを参考にしました。

①人参とジャガイモを切ります
②肉と野菜を炒めます
③水を加えて10分間煮ます

これを、「してください」調に書き換えると
①人参とジャガイモを切ってください
②肉と野菜をいためてください
③水を加えて10分間煮てください
となります。
何であなたに指示やお願いをされなければならないんだ!?という気持ちになってきます。

上の例を「しましょう」に換えると、幼稚園の先生が子どもと一緒に料理をしている場面の会話になります。

できる気がする

社員は不慣れな仕事をするときにマニュアルを開きます。
マニュアルを見たときに、複雑で難しそうだったら、やる気が失せて、後回しにしたくなります。

人は「できる気がしない」と、行動しません。
精緻なマニュアルにこだわるあまり難しくなって、読み手に「できる気がしない」と思われたら逆効果です。

「自分にもできそう」と思ってもらうため、特別なスキルがなくてもできる仕事に関するマニュアルは、7ステップ以内に収めるようにしています。
7ステップ以内であれば、何度かやれば覚えられるので、マニュアルからの自立も早くなります。

デジタル化

介護現場でも、記録や社内コミュニケーションツールのデジタル化がすすんでいます。
業務中、日常的にPCやスマートフォンを開いて仕事をすることも増えてきました。ですから、マニュアルもデジタル管理を推奨しています。

デジタルマニュアルは、紙に比べて版管理やマニュアルの検索がかんたんです。
WordやExcelなどで作成しても良いのですが、オンラインのマニュアルソフトがお勧めです。
マニュアルソフトは、フォームが固定されているで見やすく、マニュアルごとに書式が違うといったストレスもありません。
動画や写真、ファイルの添付ができるソフトも多数あります。

僕が使っているのはCOCOMITEというソフトです。
STEP形式になっており、作成編集が容易なこと、PC/スマートフォンのどちらでも閲覧できること、そして料金がリーズナブルなことが導入の決め手でした。


「使われるマニュアル」は、とても奥が深く、僕もまだ研究を重ねているところですが、まずは今回の記事のポイントを参考にマニュアルを作成し、実際にメンバーに使ってもらってその反応を聞くところから始めてみてはいかがでしょうか。


めでたしめでたし

立崎直樹


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立崎直樹@めでたし〃
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