マネジャー体験ワーク:退職が続く介護施設の施設長
「施設長、すこしお時間いただけますか」
パソコン画面を見つめていた木村は、平静をよそおって答えた。
「ん?どうした?」
今月だけで3人かよ……独り言のつもりが思った以上に大きな声だったらしく、周りの職員が一瞬ハッとこちらを見た。
それぞれ事情があるとはいえ、3人も立て続けに退職の申し出をうけると、いつも冷静な木村もさすがに気持ち穏やかではいられなかった。
一人目は26歳の男性介護職員。将来を考えると今の給料では不安があるので退職したいと話した。
二人目は入社2年目の女性介護職員。介護以外の仕事を経験してみたいという理由だった。
そして今日の介護職員。勤続12年ベテラン。来年開設する有料老人ホームのオープニングスタッフとして転職する予定だという。
「私はこの施設が大好きでした。入居しているお客さまもスタッフも皆いい人たちばかりで、12年間楽しく仕事をしてきました。ただ、このところスタッフが減り、毎日時間に追われて、気づいたら一日が終わっているんです。
お客さまと会話する時間も減り、日々のケアがただの作業になっている気がして、“これが私のやりたい介護だったのかな”と考えるようになりました。
そんな矢先、オープニングスタッフ募集の広告を見て、もう一度、新しい施設で本当にやりたかったケアを追求したい、と思い転職を決意しました。」
「あと…」表情から明るさが消えた。
「今の施設の方針に不満を持っているスタッフ何人かから、私と一緒に新しい施設に転職したいと相談を受けています。私は思いとどまるよう話をしていますが。」
今の方針に不満?そんな話は寝耳に水だ。
たしかに最近、人が減って現場はバタバタしているが、クレームは出ていないし、何とかうまくいっていると思っていた。
いったい何が起きているというのだ!?
【ワーク】今この状況で、木村と施設の幹部職員たちは、何をしたら良いのでしょうか。