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H a p p a n o U p d a t e s - No.264

7月の葉っぱの坑夫の更新情報です。
・【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
 短編小説(第3回)
・最近思ったこと、考えたこと

Title photo by Peter Voerman (CC BY-NC 2.0)

□【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
アフリカ短編小説集 もくじ  巻頭エッセイ(ニイ・パークス)

3. 癒合:Fusion ハワード・メブ・マキシマス (カメルーン)
「今日、キミはきみになり、ボクはぼくになる。…. わたしたちは奇異で、人騒がせで、…….. 複数であり、異常に接近していて、1人、2人とも数えられるし、1人の中に2人とも言えた」

このような書き出しで物語は始まります。ここでいう「癒合(ゆごう)」とは癒合双体、あるいは結合双生児のこと。体の一部が接合して生まれる双子のことです。

お気づきの方もいると思いますが、先日、芥川賞を受賞した朝比奈秋さんの『サンショウウオの四十九日』と同じ題材、あるいはテーマによる小説です。朝比奈秋さんが医者であるのに対し、ハワード・メブはバイオテクノロジーの理学修士です。これが題材選びと関係あるかどうかわかりませんが。

ある意味ショッキングなテーマといえますが、現代の作家たちは(朝比奈氏もハワードも)、普通の生活をする普通の人間として主人公の双子を描写しています。たまたま体の一部が接合しているだけ、といった。確かに困ることや不便なことはあるけれど、と。

わたしはこの『癒合:Fusion』を翻訳したことで、結合双生児を扱った小説に興味をもち、いくつか読んでみることにしました。どのように描かれているのか、そこに関心がありました。最初に『サンショウウオの四十九日』を読みました。そのあと、江戸川乱歩の『孤島の鬼』『わたしの全てのわたしたち』(サラ・クロッサン)と読みついでいます。これについては近々、記事として書いてみようと思っています。

□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
07.04/24 言語の可能性を押し広げるのが文学の役割(by 李琴美)であるとき、翻訳は何をすれば? 言葉のUpdateについて

07.18/24 民謡は世界の音楽をつなぐ「結合組織」。バルトークの発見に新たな視点! 『トランシルバニア舞曲』 8月30日リリース(ECM)

07.23/24 ルチャン・バン&マット・マネリ『トランシルバニアン舞曲』から「Poor is my Heart」がプレリリース(ECM)

李琴美のエッセイ集を読んだことがきっかけで、日本語を第二言語とする作家の作品を読んでみました。アメリカ出身の作家、グレゴリー・ケズナジャットの『鴨川ランナー』『単語帳』『開墾地』と続けざまに。内容も書き振りも非常に面白く、日本人である自分を改めて鏡に映して見るような感じで、もしかしたら日本人の必読書?などと思いました。

ルチャン・バン(ピアノ)とマット・マネリ(ビオラ)のルーマニア民謡の探究とそこから生まれた演奏は、音楽のもつ深みを改めて体感する経験となりました。このアルバムを作るきっかけとなったバルトークの民謡採集のこと、この作曲家が20世紀初頭にろう管で録音した当時の民謡の音源、スロバキアで撮影された録音の様子の写真も掲載しています。

□ 8月の【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
Summer break essays and more …」と題したスペシャルイッシュー。
二つのエッセイ(ザンビアとウガンダの作家)とショートショートのようなごく短い小説(ガーナ)を13日から一つずつ、火曜日に掲載する予定です。


Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org


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