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YouTubeを引用(シェア)するとき、気をつけた方がいいこと

この記事の内容
・共有リンクを使えば問題ない?
・再生テストで気づいた広告
・投稿者はどんな人?
・広告表示の有効、無効
・クリエーターを支援するために広告を許可する
・著作権の未来
・YouTubeのロゴはパブリックドメイン?

YouTubeコンテンツの自サイトへの掲載(引用)で、最近まで気づかなかったことがあります。わたしの場合、動画をアプリではなく、Webブラウザ(アドブロッカー設置)で見ることが多く、またスマホではなく、PC(Mac)でほとんど見るので、広告がどのように表示されるかについての経験があまりありませんでした。
*実はMac用のYouTubeアプリはないようで、Windowsの場合も、2021年までは同様だった模様。(↑ のタイトル画像については、文末に詳細あり)

結論から言うと、自分が利用する(共有によってシェアする)コンテンツは、その発信元を調べてからにした方がいいということ。誰がその動画を、どのような権利で投稿しているか、ということです。一個人として自分が鑑賞する場合は、そこまで気を使えないかもしれませんが、noteやSNS、自分のサイトなどで他の人とシェアする場合は、著作権上、倫理上の問題がないか、検証した方がよさそうです。

一般的には「共有リンクをつかってシェアする方法をとれば、利用した人間に著作権侵害の問題は起きない」となっているようです。著作物をダウンロードして利用するのではなく、提示されたリンクを使って「シェアする」だけであれば、著作物にはタッチしていないという理解でしょう。

しかし、もしその投稿が著作権侵害の上に成り立っていて(テレビやDVDからの無断借用など)、さらに広告収入をそこから得ているとしたら、と考えると、その動画をシェアした人間も、(法的に罰則はなくとも)一定の責任を感じる必要があるのではないか、問題のある投稿に加担したことになるのでは、そう思いました。

このことに気づいた経緯を以下に書きます。

先日、葉っぱの坑夫のコンテンツ『モーリス・ラヴェルの生涯』の原稿をnote上で作っていて、『ピアノ協奏曲ト長調』の引用をYouTubeで探していました。マルタ・アルゲリッチやチョ・ソンジンなどのコンサート動画がいくつも出てきました。その中からとりあえず、上位にあったチョ・ソンジンのものを選び、共有のためのURLをコピーして原稿に貼り付けました。サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィルの2017年の演奏で、動画の登録は1年前、登録者は「John Music」となっていました。その時点で、10万人がその動画を視聴していました。

ブラウザ上で再生テストしていたときは全く気づかなかったのですが、その動画をスマホ(YouTubeアプリ)で見てみたところ、音楽の途中で突然広告が入ってきました。聴いていたのは第2楽章だったのですが、静かな音楽の途中で、突然大音響の広告が入り、びっくりしてしまいました。SpotifyやAmazon Musicでも無料版だと広告は入りますが、さすがに曲と曲の間です。

それでYouTubeの広告の入り方、動画の発信元、というものに注意が向きました。

この動画の発信元であるJohn Musicの詳細を見てみると、クラシック音楽のコンサートの動画ばかりが投稿されていました。「登録者数 5130人、24 本の動画」の説明があり、「2021/10/04 に登録、1,314,567 回視聴」となっています。チャンネルの紹介など発信者の情報はなく、いわば身元不明者による投稿でした。

もしこの動画に広告が入っていなかったら、どういう人が投稿しているのかに関心が向かなかったかもしれません。しかし広告は入っていました。つまりこの投稿者は、著作権侵害を犯しているだけでなく、自分の作ったもの(自分に著作権がある作品)でないものから、利益を得ようとしているわけです。

このことに気づいて、この動画を『モーリス・ラヴェルの生涯』で使うことはやめました。他の候補としてEuroArtsというところが、マルタ・アルゲリッチの演奏を投稿していましたが、動画のクォリティ(解像度など)が低く、使えないと判断しました。このEuroArtsは、チャンネル紹介にオフィシャルサイトの記述があり、自社製または権利を有しているものの投稿に見えました。2039本の動画が登録されていて、動画の質はアルゲリッチ以外のもは問題ないようでした。(なぜアルゲリッチの動画がクォリティが低いのかは不明)

トルコのピアニスト、ファジル・サイの動画があったのでこれはどうかな、と思い検証してみました。Ana Cojocariuという人の登録で、どうも個人のようです。画像的には問題なさそうでしたが、おそらく著作権侵害を犯していると思われます。ただ広告表示は無効にしているようで、罪は小さいかな、と。利益を得たいということではなく、「素晴らしい演奏を共有したい」という気持ちからしていることかもしれません。しかし積極的に利用したい気持ちにはなれませんでした。このあたりは非常に微妙です。(これまで気をまわすことなく、この種のものをコンテンツに利用してきたと思います)

では著作権侵害もなく、広告もない動画は、YouTubeで見つけられるのか。探していたところ、France Musiqueというところが発信元のマルタ・アルゲリッチの『ピアノ協奏曲ト長調』の演奏動画がありました。「登録者数 32万人、6768 本の動画、2013/12/16 に登録、107,548,095 回視聴」となっています。チャンネル紹介の文章もあり、「教育コンテンツや音楽セッションを通して、音楽に特化したプログラムを提供している」といった説明と、オフィシャルサイトへの案内がありました。これなら大丈夫でしょう。

France Musiqueは、このコンテンツの制作者自身ということかもしれません。オフィシャルサイトのリンクがRadio Franceに導かれていて、動画のイントロ部分に、Radio Franceの名がありました。このような公式サイトの場合、一般の広告が入ることはありません。自社の作品を紹介するツールとしてYouTubeを使っているわけで、広告収入のために投稿しているわけではないからです。

今回のモーリス・ラヴェルのコンテンツ制作で、『左手のためのピアノ協奏曲』の動画として選んだのは、Hochschule für Musik FRANZ LISZT Weimar(フランツ・リスト・ヴァイマル音楽大学)のものでした。こちらも公式のもので、オリジナル・コンテンツなので映像的にもきれいで、著作権的にも問題がありません。

もう一つ今回ラヴェルのコンテンツに利用したものに、Alexis Descharmesという人のYouTubeチャンネルがあります。『マダガスカル島民の歌』の動画を探していて見つけました。Alexis Descharmesさんはチェリストで、この動画のステージで演奏をしています。動画内にテキストで「Stéphane Degout (baryton), Michaël Guido (piano), Matteo Cesari (flute), Alexis Descharmes (cello)」と各演奏者の紹介があり、欄外には、演奏日時、場所、会場名の記述がありました。このような投稿者のコンテンツには、普通広告はありません。念の為、スマホのアプリで確認しましたが、広告はありませんでした。

もしこのコンテンツに広告があったとしても、つまり自作の(あるいは権利をもつ)コンテンツに広告をつけていたとしても、それは構わないと思います。そこから収益をあげて活動の足しにする、ということは正当なYouTubeの使い方だと思います。

おそらく制作者自身が広告をつけるときは、作品の邪魔にならないよう注意して広告を入れる(コントロールする)と思います。楽曲の途中で、突然まったく関係のない広告が入るなどということは、作者は望まないからです。

問題は広告が入る入らない、ということではなく、投稿作品をどう考えているか、広告をどう扱おうとしているか、そのあたりの神経の使い方だと思います。アドブロッカーでは、視聴者がYouTubeなどで自分のサポートしたいクリエーターに対して、広告を許可するというオプションがあるようです。見る人が応援の意味で広告表示を許可し、クリエーターをサポートする、これは納得がいきます。

YouTubeは動画を無料で投稿したり、見て楽しんだりするツールでありサービスですが、その中にシェアするという(思想と)機能が組み込まれていて、システム的に他者との共有が簡単にできるようになっています。この機能が加わったとき、わたし自身、すごいなと喜び、その後ずいぶん利用してきました。発信元がどういう人か、著作権の問題はないのか、まったく気にしていなかったわけではないですが、仔細に調べることは必ずしもしていませんでした。シェアの仕組みの中では、普通の(当然の)行為と思っていたため、著作権侵害に対して気持ち的に緩くなっていたのでしょう。

しかし許可なく他者のコンテンツをYouTubeに投稿することは、著作権上問題があるのは当然です。もう一つの動画サービスVimeoの場合は、自作品のみ投稿できる仕組みとなっており、動画公開に関する規約は厳しいようです。ではYouTubeの規約はどうなのか。実際には多くの無許可と思われる動画が、作者以外の人によって投稿されていますが、規約自体はVimeoとほぼ同じです。

クリエイターは、自作の動画または使用許諾を得た動画のみをアップロードできます。

YouTube Creators 「ポリシーとガイドライン」より

著作権について厳しいチェックを始めたら、YouTubeで公開されている多くの動画が、削除扱いになってしまうかもしれません。著作権侵害の動画でもたくさんの視聴者がいて、コメント欄に「貴重な動画をありがとう」などの感謝の言葉がたくさん寄せられているのも見かけます。

倫理的な側面から見て、投稿者が盗作によって広告収入を得ている場合、それはやはり非難されるべきだし、そういう動画はシェアの対象にしない方がよいと考えます。また広告なしであっても、著作権を侵害して投稿している動画については、シェアしない方がいいのかな、と思います。そのためには投稿者の身元をチャンネルで確認する必要があります。

著作権に対する考え方は、今後50年、100年の間に変わっていくものなのか、そのあたりはわかりません。所有ではなく共有という思想が広まった社会になっても、一旦不特定多数の場に提示された作品は「著作」という概念を失う、なんてことにはならないでしょうね。現実的には著作権は、日本でも50年から70年へと厳しい方向に変化しています。

YouTubeの利用の仕方としては、他者の作品を共有リンクでシェアする場合、発信元のチャンネルをまずチェックすること。今後はそのようにしていくつもりです。また過去にシェアした動画についても、問題のない動画に差し替えをしていくつもりです。まずは連載中の『モーリス・ラヴェルの生涯』から、検証と差し替えに手をつけようと思っています。

タイトル画像:YouTubeの▷マークを☆マークにした自作グラフィック。おそらくこのグラフィックには、著作権は発生しないと思われます。赤ベタの四角形に白の星マーク、ここには作品としての独自性がないから。
Wikipediaによると、YouTubeのロゴの画像は、同様の理由からパブリックドメイン(公有財産)だそうです。YouTube側は、ロゴの使用には申請が必要としているようですが。ロゴに著作権がない理由として、Wikipediaには以下のようなことが書かれていました。

この画像は、単純な幾何学図形およびまたは文字のみにより構成されています。著作権による保護の対象となるために必要とされるいわゆる独創性のしきい値を満たしていない(日本法においては、思想又は感情を創作的に表現したものではない)ため、パブリックドメインに帰します。この画像は著作権による制限を受けませんが、それとは別に他の制限を受ける可能性があります。

Wikipedia: ファイル:YouTube Logo 2017.svg

赤い四角に白の三角マーク。そしてYouTubeのフォントは「Alternatet Gothic No.2」というフリーフォントです。

下の画像は、このフォントを提供しているサイトで「YouTube」とタイプして生成したもの。

Alternatet Gothic No.2というフォント
カラーが自由に選べる
サイズも自由に選べる
本物のロゴ:YouTube Logo 2017.svg

葉っぱの坑夫(Happano)とタイプしてみた。

*パプリックドメインに分類されてしまうようなロゴデザインって、ある意味すごいかも。フォントをアレンジなしで使っているブランドとして、他にskype、Instagram、flickrなどがあるようです。

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