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八首抄 令和7年2月号

秋の日のさびしいひなた鶏頭が鬼ごっこする声を聴かんか

青山良子



受難曲バッハが部屋に流れつつ塩鮭の刺選りながら昼

臼井良夫



ひと雨をもらひ菜花の立ちあがる晩秋の畑に土を寄せをり

橋本俊明



引き出しにテレホンカード数枚が日の目を見ない過去を引きずる

奥井満由美



バックヤードにつながる扉を封鎖してクマを労る姿が解る

高貝次郎



この部屋を出たら施設に移りますあますことなく秋の空見る

田中春代



言葉とう武器を持ちたる壮真とのおやつ時間の交渉ねばる

仲野京子



玄関の鍵は寝る時だけ掛けた信じられるもの溢れし昭和

高橋美香子







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