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父の本棚

今、わたしには実家がふたつあって、どちらにも、意味不明な量の本がある。

夫の実家には、父の古い本が多い。小説、詩集、画集、美術展の図録、建築設計の書籍、デザイン本、どれも30年以上前のものだ。
日に焼けて紙が傷んでいて、タイトルも決して今様ではない。
でも、たとえば田中康夫、井上ひさし、五木寛之のハードカバーが帯付きで、新作として本棚に並んでいるのを見ると、そこには風化していない過去の時間が確かにあるのだった。
日の当たらない和室、畳の匂い、古い紙の匂い、必要とされていなくても捨てず置かれている諦念の風合い。
本棚は、動かなくなった時間を守り続ける優しい場所なんだろうなと思った。

触ったらいろんな意味で崩れ落ちそうな本棚の前に座って、ただじーっと見ているのが好きである。
息子の嫁の不可解な行動に目をつぶってくれる義両親も、優しい。

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