路上トイレ化問題
大人になってから、大人の立ちションを目撃したのは十年ほど前のことである。犬友のお父さんが、散歩中、犬を連れたまま我が家の向かいにある溝に向かって用を足していたからギョッとした。しっかり陽が沈んだ夜半で、冬場だったから、呑んだ後に散歩に出た後、冷えも手伝ったのだろうと思う。
しかし目の前を通った者としたら、「こらーっ!」と叫びたい。一瞬、怒鳴ってやろうかと思ったが、知人だし、怒鳴ったところで出している最中のものを引っ込めることは出来ないだろうから、見なかったフリで挨拶だけして通り過ぎた。但し、あの親父は路上で立ちションするとんでもない輩だ!という印象は、一生私の中で消えない。そもそも、立ちションを大人が路上でするなんて場面、今まで見たことがなかったから、衝撃以外の何ものでもなかったのだ。
ところがここ最近、大人の立ちション現場に再々遭遇する。決まって夜で、季節は冬。しているのは大方、ウォーキング中の爺だ。本来、私が老齢である人生の大先輩を爺婆と呼ぶことはない。口にも出さないし頭の中にも浮かべない。昔、子どもが「くそばばあっ」と悪態をついたのを見て、「そのうちあんたもくそじじいになるんやから心配しな」と伝えたが、じじいばばあと呼ばれて不愉快な思いをする人の方が圧倒的に多いだろうから、私の世の中にはじじいもばばあも居ないことにしている。
とはいえこの件に関しては、敢えて爺と叫びたい。トイレが我慢できなくなるほどウォーキングって必要か?しかも来ているのはトレーニングウェア。パンツにファスナーなどついていないようで、後ろから見たら半ケツ若しくは下着丸見えである。ある人は他所の畑に向かって、ある人は車道の隅で、わざわざ車を路駐してやっていた。すぐ側には、オープンしたばかりのパチンコ屋や24時間営業のスポーツジムが、ネオンきらきらに営業中であることをアピールしている。中にはコンビニも軽食屋も数店舗入っているし、いずれも大容量の駐車場完備だ。少し歩けばスーパーやドラッグストアなど、夕方の歩く時間帯ぐらいは充分開いている店がそこかしこにあるではないか。
調べたら、立ちションは、軽犯罪法違反に当たるという。やり方によっては、公然わいせつ罪だ。
私が遭遇するのは、決まって、犬の散歩中であるということも大きな懸念を生む。犬は友達の匂いを辿って歩くから、くんくんした先が犬の友達ではなく人間の爺だったとしたらと思うと、ゾッとして吐きそうである。