警察にお世話になりました? ①

 警官は日常的に見かけるが、積極的に関わるような場面は殆どない。と思っていたら、以前、珍しい形で声を掛けられたことがあったのを思い出した。
 夜、例の十中八九行く大きめの公園に、犬と散歩に出かけた。
 この夜は私たちしかいなかった。公の園のど真ん中で『よっこらしょっ』と腰を下ろす犬。彼の散歩には、半分くらい〝休憩〟が入る。休憩すると言い出したら押しても引いても動かないし、挙句の果てに身を横たえて寝だしたりするので、ある程度はこちらもお付き合いしなければならない。
 公園のど真ん中で〝休憩〟している犬をなでなでし…上から下までブラッシングする。したらあかんことだが、誰もいないのを良いことにノーリードを許していた。とはいえ突発的に暴走することはこのところ殆どない。公園内では、野良猫が飛び出してくることはない。突如鳥が羽ばたくこともなければ、車輪の付いた乗り物が目前で走り出すこともないからだ。そして彼も年を重ね、電池が切れるまで果てしなく走り続けていた時代は遠い過去の栄光となっているらしかった。
 ふと、公園の入口に二台のバイクが止まるのが見えた。園内はバイク乗り入れ禁止だが、やんちゃな人間たちは度々乗り入れている。外に止めたところを見ると良識ある人間なのだろう。
 中に向かって歩いてくる人が二人。懐中電灯を照らしている。
 街灯からは遠い地面で小さくまとまっている犬と人。しかもノーリードで、犬は懐中電灯が怖い。。
 子犬の時、初めて行った母の実家から夜の散歩に出た際、街灯が全くない真っ暗闇を歩くので懐中電灯を持参した。足元を照らしているだけなのに、怪しんでいた犬。彼が振り返ったとき、人間が自らの顎の下から顔面を照らして見せると、犬は飛び退いた。昔、コントか何かでこんなシーンがあった気がしてふざけたのだったが、犬にとっては余程の恐怖体験だったらしい。自宅周辺はある程度街灯が完備されているので懐中電灯を用いて散歩することは基本的にないのだが、とんでもないトラウマを抱えさせてしまったのかも知れなかった。
 懐中電灯の持ち主は、制服に身を包んだ警官だった。外していたリードをこっそり着け、懐中電灯に反応しないよう、半分馬乗り状態で犬を羽交い絞めにする。警官が近付いてきた。
「この辺りで小学生ぐらいの女の子を見かけませんでしたか?」
 職務質問されるのかと思ったので拍子抜けした。
 夜も九時を回っている。小学生がうろうろしていていい時間ではないし、平日なので、明日は学校があるはずだ。
 女の子の特徴を聞いている間、もう一人の警官は懐中電灯を片手に茂みの裏を覗いている。そんなところに隠れていたら、私はとっくに気付いている。と思ったが、万が一倒れていたりしたら気付かないかも知れない。しかし公園到着時点で、一通り園内の散策は済んでいるので、人の気配がないことはほぼ確かだった。
 夕方、友達の家へ遊びに行ったっきり、まだ帰っていないという低学年女児。ニュースを賑わす数々の事件を想像して、ぞっとした。
「何か思い当たることがありましたら、ご連絡ください」と言い残し、懐中電灯の警官たちは去って行った。
 あんな探し方で見つかるものなのかな。
 隅から隅まで…という様子でもなかったので、捜索活動自体があのような調子なら、見つかるものも見つからない気がした。
 その後、女児が見つかったのかどうかはわからない。知る術がないので仕方ないが、ニュースにはなっていないようなので、無事帰宅の途に着いたものだと思いたい。

いいなと思ったら応援しよう!