イヤリングが痛い

 子どもの頃、イヤリングに憧れた。大人が様々な貴金属で飾り立てる中、指輪でもネックレスでもなく、一途にイヤリング。落書きで描いた女の子にも、イヤリングを着ける。大人になったら素敵なイヤリングでお洒落するのが楽しみだった。
 アクセサリーを着けても、イキっているように見えないくらいええ年の大人になった時、イヤリングに挑戦してみた。通販の安物だが、服装に合わせようと、気に入って買った物。友達4人で出掛けた京都の観光先にて速攻で落としたらしい。帰りの電車では、既に片方無かった。
 ネジで締めるタイプのものは、きつくすると痛い。痛くない、ほどほどを目指すが、目指したところで確実に落とすということに、その後何度も挑戦して気付いた。
 クリップ式のものならしっかり留まるかと思い、こちらも挑戦。ところが、クリップ式だとは加減が効かないので、着けるだけで痛く、落とす前に外す羽目に…。耳は真っ赤、耳たぶは鬱血&くぼみくっきり。お洒落には努力と忍耐が必要…とか何とか、美しくしている人に言われるかも知れないが、私の耳は拷問に耐えきれるような忍耐を持ち合わせていなかった。
 インターネットで、イヤリング用の【シリコンクッション】なるものを見つけたので、痛み軽減に一役買ってくれるかと思ったが、お金がかかっただけで何の意味も無かった。クッションの厚みで余計に圧迫される。直接的でハードな食い込みから守ってくれているように感じるのは、気持ちの問題でしかないように思えた。
 イヤリングが痛いなら、ピアスにすれば良いではないか。痛いのは最初だけ…と言う人もいるが、お洒落のために自分の耳に穴を開けるなんぞとんでもない。最初だけでも痛いのは嫌だし、後々付き纏う〝ケア〟だって面倒。それに、ピアスを着けていない時の穴が空いたままの耳たぶは美しくない。(この時点で努力と忍耐が大分足りないということをしっかりと自覚)
 
 最近お洒落になった友達は、会う度に素敵なイヤリングをぶらぶらさせている。靡かせているロングヘアーの隙間から、キラキラと光が揺れる姿は何とも女性らしい。まさに少女だった私が憧れた姿。
 一方の私は、癖毛の手入れに時間を割く努力が出来ないばかりに、それを少しでもカバーする為、常に髪をひっ詰めている。その頭で、耳たぶにきらきらをぶらぶらさせたとして、色気もへったくれも無いことは、一応〝挑戦〟というものをして、鏡を見たからよくわかった。そもそもイヤリングが痛いのだから、どの道無理なのだ。
 
 アクセサリーは好きだが、子どもの頃の憧れとは全く違う方へ向かっている。
 一途に想い続けたイヤリングちゃんとはそりが合わなかったし、指輪はごろごろ感が気持ち悪く、気になってぐるぐる回してしまう。結婚指輪さえ着ける機会には未だ恵まれていない有り様。
 肩凝りが酷いのでネックレスも警戒していたが、このところ大分着けていられるようになった。しかし夏場は金属アレルギーを起こしそうなくらい、汗でべたべたに!気持ち悪くって仕方ない。  
 まるで興味の無かったブレスレットぐらいなら、ちょこっと付けてみようかと思う程度。
 積極的に…というか、必要に迫られて…というか、私を飾る最大のアクセサリーと言えば、眼鏡ぐらいになっている気がする。
 何か切ない。
 
 きらきらぶらぶらの友達を見ていると、やっぱりイヤリングに憧れた乙女時代の気持ちになる。痛くならない方法を相談する。
 先ず、重たすぎるものは選ばないこと。そして、ノンホールピアスならどうかと提案された。ノンホールピアスとは、留め具の部分が透明プラスチックのばねで出来ており、金属よりも、耳への負担が少ないらしい。着け外しの際に、パキッと折れてしまいそうな繊細さであるが、先ずは三百均から試してみようという気になっているものの、未だ気に入ったデザインに巡り合えていない。予定は未定である。
 これでダメだったら、きっと耳たぶの厚さが問題なのかもなぁ…。

いいなと思ったら応援しよう!