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第1章:見つけた瞬間

ある日、私は日課となっているキーワード検索をしていた。著者として自分の本やメソッドが世間でどう使われているか確認することは、私のような一販促コンサルタントにとって欠かせない習慣だった。検索エンジンに「A4 1枚 アンケート 方法」と入力し、結果を眺めていると、あるブログ記事のタイトルが目に飛び込んできた。

「たった1枚のアンケートで競合他社に勝つ方法」

私の本「『A4』1枚アンケートで利益を5倍にする方法」によく似たタイトルだなと思い思わずクリックした。該当のブログ記事を読み進めるうちに、私は不安を覚えた。それは単なる偶然の一致では片付けられないほど、私の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』や『「A4」1枚アンケート実践バイブル』で詳しく解説しているメインの内容と一致していたからだ。

「たまたま似たようなアイデアが重なることはある」
そう思って、当初は慎重に分析を始めた。だが、記事を隅々まで読み込むうちに、その類似点の多さに驚かざるを得なかった。さらに、その内容が私のノウハウをまるで船井総合研究所自身の発案であるかのように紹介している点に、強い憤りを感じた。

見覚えのある表現とノウハウ

その記事では、私の書籍で提唱しているノウハウの核となる考え方、「顧客目線で作る販促」や「アンケート回答から得られるヒントを販促に活かす方法」が説明されていた。表現が私の本に記載したものと一致している部分がいくつもあったのである。

具体的には、

・顧客に「どんなことに悩んでいたのか?」「何で知ったか?」「購入前にどんな不安があったのか?」「何が決め手となったのか?「使用してみてどう思ったのか?」の5つを尋ね、下記の様に広告のコンセプトを作成。
 「(①悩み/Q1の回答)を持っていませんか?」
あなたと同じように(①悩み/Q1の回答)を持っていた人が、この商品(サービス)を購入して、今では(⑤感想/Q5の回答)と思っています。この商品は(④決め手/Q4の回答)がお勧めです。
 とはいっても、(③すぐに買わなかった理由/Q3の回答)が不安ですよね。そこで当社(当店)では、○○○という特典や対策を用意しました。

私は「偶然ではない」と直感した。もちろん、世の中には似たようなアイデアが存在することは珍しくない。しかし、この場合、内容が私の本と一致しすぎていた。「これは無断利用ではないか」という疑念が湧き上がった。

誰が見ても「参考」では済まされない類似性

これだけの一致点があると、単なる偶然の一致とは到底言えない。内容の具体性や、使用されている言葉の表現までが私の書籍に酷似しており、どの角度から見ても「私のノウハウがベースにされている」と確信せざるを得なかった。

特に問題だと感じたのは、この方法は船井総合研究所が提唱するものといったニュアンスが含まれていたことだ。読者がその記事を読むと、あたかもこのノウハウが船井総合研究所の独自の発案であるかのように誤解する可能性が高い。私の名前や著書についての記載は一切なく、これでは自分のノウハウが「盗まれた」と感じてもおかしくない状況だった。

このままでは、私の書籍を読んだり、セミナーに参加した人たちも、この記事を目にすることで「船井総合研究所が考案した方法だ」と誤解しかねない。私はこれが最も危険だと感じた。私のノウハウが他社のものとして認識されてしまえば、それは著者としての信用や私自身の事業基盤を揺るがす事態となり得る。

自分のノウハウを守るという責任

私は、この件に対して感情的にならず、冷静に考えようと努めた。しかし、それと同時に、著者として、自分のノウハウを守る責任があると感じた。これは単に私の仕事を守るだけではなく、これから同じような被害に遭うかもしれない他の小さな会社や個人を守るためでもある。

著作物が無断利用されることは、小さな会社にとって致命的な問題になり得る。大企業が持つ影響力の前に、私のような小さな会社が声を上げるのは簡単なことではない。それでも、ここで立ち止まってしまっては、今後さらに多くの無断使用が見逃されてしまうだろう。

迷いと決意

改めてブログの運営元を確認すると、それは中小企業向けのコンサルティングで名高い「株式会社船井総合研究所」だった。船井総合研究所は、コンサルティング業界で確固たる地位を持つ上場企業だ。

そんな企業が私のノウハウを無断で使用しているかもしれない——。この事実に驚きを隠せなかった。

「これは意図的な盗用なのか?」という思いが頭をよぎる一方で、「もしかしたら単なるミスかもしれない」とも考えた。実際、世の中の多くの人は著作権の重要性や他人のノウハウを使う際のルールを意識していない場合がある。何より、船井総合研究所のような大企業が、私のような小さな会社の著作物を意図的に利用するとは考えにくい。

これらの疑問に答えを出すためには、行動を起こす必要があると感じた。「真実を明らかにし、自分の著作物の価値を守らなければならない」。その覚悟を胸に、私は次の一歩を踏み出す決意をした。

なぜ「無断利用」は許されないのか

ノウハウは、簡単に見えて多くの時間と労力をかけて磨き上げられたものだ。私自身、著書を執筆するために何十年もかけて現場で試行錯誤を繰り返し、ようやく形にしたものである。だからこそ、他者にその価値を軽視されることは、著者にとって深い傷となる。

船井総合研究所のような大企業が、その影響力を利用して中小企業のノウハウを「自分たちのもの」として使ってしまえば、私のような個人や中小企業は声を上げることすら難しくなる。
「このまま泣き寝入りしてはいけない」
そう思った。

初めてのメール

私はこの記事を書いた船井総合研究所のS氏宛にメールを送った。そのメールでは、以下の点を簡潔に記した。

・該当ブログ記事のリンク
・自分の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』や『実践バイブル』との類似性
・記事がこれらの著作物に基づく内容であれば、出典を明記してほしい旨

メールを送信する際、少し緊張した。上場企業に対して問題を指摘するのは簡単なことではない。しかし、自分のノウハウを守るためには、この一歩を踏み出す必要があった。

最初の応答

数時間後、S氏から返事が届いた。

「著書の方から引用させていただいた部分もたしかにあるなと確認させていただいております。改めて引用元ということで追記をさせていただこうと思っておりますのでよろしくお願いします。」

一見すると、誠実な対応のように思えた。彼は引用元を明記すると約束し、問題を迅速に解決しようとしているように感じられた。

しかし、心の奥底ではまだ不安が残っていた。なぜなら、どこか形式的な文であり、本当に深く問題を理解しているのか疑問が残ったからだ。

新たな疑念の始まり

さらに驚いたのは、その後だった。1週間後再度記事を確認すると、該当のブログが削除されていたのだ。「出典を追記する」と言っていたはずなのに、なぜ削除という対応になったのか?これでは、記事を読んでいた人々が元の情報を参照する機会すら失われるではないか。

「出典を明記するだけなら、なぜ記事を削除する必要があるのか?」
これが、私の中で最も大きな疑問となった。この削除は、出典を明記することでは解決できない「何か」を隠そうとしているようにも感じられた。

さらに、メールのやりとりの中で見え隠れする船井総合研究所の内部対応にも疑問が残った。例えば、「担当者レベルでの対応にとどまり、上層部への報告が行われていない」という状況は、大企業としての透明性や誠実さに欠けるように思えた。

私は再びメールを送り、
「編集作業が完了次第報告をいただくという約束になっていたのですが
1週間経っても報告も掲載もされていませんがどうなっているのでしょうか?出典を書くことはそんなに手間がかかる事だとは思えません。報告や掲載が遅れている理由を教えてください。」
と問いただした。

すると
「出典元を記載するにあたり、社内における申請等がございましたため遅くなっております。明日には編集完了し、公開できる手筈となっております。」
と返信があった。

この段階で、「単なるミスではないのではないか」という疑念がますます強まった。

そこで再度、
「ちなみに、 出典元が記載されていなかったブログは 社内の方には確認されなかったのですか?」
と聞いてみた。

すると
「この記事を執筆いたしました当時は、まだチェック体制が整っておらず、出典元の記載がないまま公開をしてしまっておりました。 今回ご指摘いただきましたことで、社内で、これまでの記事をすべて確認するように進めております。 今後このようなことが起こらないように気を付けてまいります。」
と返事が来た。

小さな企業でも声を上げる意味

この時点で私は確信していた。「ここで諦めてはいけない」と。一販促コンサルタントである私が、上場企業のような大きな存在に声を上げることは、一見不釣り合いに思えるかもしれない。しかし、自分のノウハウや著作物を守ることは、私にとって譲れない正義だった。

次に何をするべきかを考え始めた私は、意識的に冷静さを保ちつつ、この問題にどう向き合うべきかを模索していた。

この瞬間から、私の戦いが本格的に始まった。

※ご注意:記憶を頼りに書いておりますので、内容が変更される可能性があります。ご了承ください。


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