わかりやすい!中医学の基礎講座Vo.3
体の細胞の隅々まで滋養する『血(けつ)』のお話
中医学では、「血」は、「ち」ではなく「けつ」と呼び、血液そのものよりももう少し範囲が広い意味を持っています。
「血」の中には栄養物質が溶け込んでおり、全身に栄養素を送るはたらきをしていていると同時に、精神的な活動をコントールしてるとも考えられているのですね。
血が不足するとイライラや眠れないなどの神経活動にも影響すると考えられています。
「血」は、私たちが食べたものからか脾胃で作られて全身に運ばれるとされています。
脾胃は、中医学では胃腸機能全般を含み、消化に関わる膵臓なども含まれています。
この脾胃で作られた精微物質(血の素となるもの)が、体内の陽気で温められて赤くなり、「血」となると考えられてています。
女性は、月経や出産などで男性よりも「血」が失われやすい状況にあります。
「血」を補うことは、体内の細胞を活性化し、新陳代謝をよくして新しい元気な細胞を保つためにもとても大切です。
また、感情に左右されずに精神的に安定した毎日を過ごすためにも、「血」を補うことはとても大切なのです。
気と血の関係
『気は血の帥(すい)』
これは気は血の管理者であることを指す言葉で、『気』のエネルギーがなければ胃腸の働きが衰えて『血』を生み出すことができず、また血が全身をくまなくめぐるためには、『気』がめぐっていることが大切だということです。また、『気』には、統摂(とうせつ)といって、血が外部(血管外)に漏れ出ないようにコントロールする働きがあります。
『津血同源』
からだを潤すもう一つの成分「津液」も「血」と同じように、飲食物が脾胃で精微物質となったものから作られます。
「血」と「津液」は、もともと同じもであることを「津血同源」と言います。
温かくてたっぷりした血で、からだが満たされると、細胞も精神も潤います。
『血虚(けっきょ)』=『血』が不足した状態
「血」が不足した状態は、中医学では『血虚(けっきょ)』と呼ばれています。
具体的な症状は
●顔色が悪い(青白い)
●爪が割れやすい
●皮膚や髪の毛がパサパサする
●めまいや動悸、睡眠トラブル(眠れないなど)
●手足のしびれ
●筋肉がつりやすい(こむらがえりなど)
などです。
『血瘀(けつお)』=古い血の滞り
血の流れが悪くなった状態は、『血瘀(けつお)』といいます。
血の流れが悪くなった状態では 、古い血がいつまでもそこにどどまり栄養豊富な血の流れが滞っていますので、
●シミやくすみが気になる
●肩こりや首のこりがある(同じところが痛い)
●月経痛がひどい(刺すような痛み)
などの症状が起こります。
血瘀(けつお)と瘀血(おけつ)の違いについて
中医学の教科書では、血瘀は血の流れが滞った状態を指し、瘀血は、
滞った結果、生じる病理的な物質(血腫、凝塊、血栓など)を指します。
日本漢方では、この区別はされていません。
どっちなの??と混乱することあるかもしれませんが、臨床上は特に区別しなくてもいいかと思います。
中医学で使われる用語について
中医学の用語は、難しいく、読みづらいものが多いのですが、一度覚えてしまえば、共通の言語としてとても使いやすいものです。
例えば、知識を深めたくて中医学の講演会などに行った場合、
『この方は血虚の症状があって・・・』などと普通に話をされるのですが、『血虚』というのがどういう状態を指すのかがわかっていないと、話についていくことができません。
また、中医学を学ぶもの同志の会話であれば、症状をいちいち述べるより『血虚』という言葉を使えば、上のような症状を一言で述べることができるのです。