専門家目線になる漢方薬の使い分け⑦花粉症 V0.2 〜
前回に続き、花粉症に使える漢方薬を少し専門的にみていきます。
今回は、『小青竜湯』が効果的な『寒証タイプ』についてです。
寒証タイプの花粉症
『寒証タイプ』では、『冷え』が症状の原因となっていることが多いタイプです。
この冷えは、余分な水分が体内の局部に過剰にたまったものが原因となっています。
もともと、陽虚(体を温める力が不足しているタイプ)体質の方や、胃腸の働きが低下しているが花粉症になると、この『寒証タイプ』の症状が表れやすくなります。
花粉症の症状(水っぽい鼻水がタラタラと出るなど)とともに、体の重だるさや局部(手足など)の冷えも見られるのが特徴です。
主に、鼻水がタラタラとでたり、鼻がグシュグシュするなどの症状がメインの場合には、体を温めてこれらの表証(体の外側に出る症状)を解消するのに役立つ「小青竜湯」が効果的です。
小青竜湯以外の『寒証タイプ』に使える漢方薬
鼻づまりや頭や体の重だるさ、冷えが強い場合には「麻黄附子細辛湯」を用いると良いでしょう。
さらに冷えが強く、冷えによるむくみがあって体のだるさや疲れが顕著な場合、また冬にしもやけ(末梢循環障害)になりやすいタイプでは、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が効果的です。
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麻黄湯や葛根湯、小青竜湯などの麻黄が含まれる漢方薬は、高齢者や心疾患、循環器疾患、高血圧などの疾患をお持ちの方は服用には注意が必要ですが、「麻黄附子細辛湯」は、麻黄と附子が同時に配合されており、両者の悪い面をお互いに相殺するためにご高齢の方にも服用できる漢方薬です。
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水分代謝・脾胃のはたらきをサポートする漢方薬
小青竜湯や麻黄附子細辛湯は、基本的にはシーズンを通して飲むというよりは、症状がひどいときに飲む方が良いでしょう。(体質改善としては使えません)
体質改善的に使うのなら、当帰芍薬散(血虚・水滞)や六君子湯(脾気虚)、八味地黄丸(陽虚)などが良いかと思います。(体質に合わせて選びましょう)
花粉症の症状を和らげるための食養生
花粉症の症状は、
✔︎鼻水
✔︎鼻づまり
✔︎くしゃみ
✔︎咳
✔︎喉の痛みやイガイガ感
✔︎目のかゆみや鼻の奥がむずむずする
✔︎皮膚のかゆみ(特に顔)
✔︎頭やからだの重だるさ
など、特に顔を中心とした上部にあらわれやすいのが特徴です。
以前にご紹介したように、中医学ではからだの中の水分代謝の異常(不要なところに過剰に水分が溜まってしまっている状態)+花粉に反応して粘膜が炎症を起こしている状態が花粉症の症状としてあらわれています。
まず第一には、花粉が粘膜につくと、その部位がアレルギー反応を起こしてしまうため、できるだけ花粉がからだにつかないようにする(マスク・メガネ・帽子など)ことが大切です。
その上で、からだの水分代謝を正常にするような食材を食生活に取り入れることで、花粉症の症状を和らげることができると考えられています。
中医学での五臓(心・肝・脾・肺・腎)の役割は、西洋医学でのはたらきとは違うのですが、津液(体の中の正常な水分で、体を潤すもの)の代謝に関係する臓は、
「肺・脾・腎」
です。
これらのはたらきが低下した状態は、体の中に過剰な水分がたまってしまい、結果的に花粉症の症状をひどくすると考えます。
「肺・脾・腎」をサポートする食材
これらの臓のはたらきを補う食材を取ることで、津液の代謝がスムーズになり、結果的に花粉症の症状を和らげることができます。
肺の気を補う食材・・山芋・キャベツ・芋類・にんじん・豆類・鶏卵 など
脾の気を補う食材・・山芋・芋類・キャベツ・鶏卵 など
腎の気を補う食材・・黒胡ごま・くるみ・牡蠣・山芋・黒豆・栗・クコの実 など
特に、共通する「山芋」は消化も良く、ネバネバ成分が健康を維持するために大切な腸内環境を整えるためにとても役立つ食材です。
この時期には、特に山芋を意識して食べるようにしましょう。
スーパーでは、山芋よりも長芋の方が手に入りやすいですが、山芋の方が粘り気が強く、甘味もあり薬膳としてはよりよい食材です。
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