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ニカモトハンナ
2016年5月16日 00:57
幼いころ、実家の屋上には温室があって、祖父が胡蝶蘭を育てていた。両親や祖母はめったに上がってこなかったけれど、私は屋上に出る重い扉をこっそり開けて、よく温室を覗きに行った。外から見るとただの透明な部屋なのに、中に入ると、むわっと暑い湿気に襲われる。肌にはすぐに水滴がこびりついてきて、自分の体がこの小さな空間に飲み込まれて溶けていくような気がした。庭とも家の中とも違う温室の匂いは、それま