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ニカモトハンナ
2016年4月16日 22:12
バイト先で、先週もらったお祝いの花を処分するように言われた。あまりに大きくて、解体しないと捨てられない。一本一本花を抜きながら、ゴミ袋に入れていく。それまで「お花」という塊だと思っていたものが、それぞれに顔を持っていたことを知る。お前こんなところにいたのか、もうそろそろ寿命なのかなあ。そんなこと思いながらひとつひとつ覗いていると、まだもう少し元気のありそうな花もいくつかいた。「これ
2016年4月11日 01:05
静かな夜の住宅街。前を通り過ぎた家から、水の音がする。きっとこのあたりにお風呂があって、誰かがシャワーを浴びている。閉じていればただの箱のように見えるそれが、ひとつの家族を覆う「家」なのだということを思い出させる。あの家も、その家も。以前住んでいたアパートは1階にあったので、2階に住む人が洗い物をしたりシャワーを浴びていると、壁を伝って水の音がした。はじめはこの水はどこを流れている
2016年4月7日 02:02
引っ越した部屋は、すぐ裏手に中学校がある。朝はチャイムの音で目が覚めて、昼間は目の前のグラウンドで体育の授業の声。「早くしろー」男の先生の太い声がこの部屋にもずかずかと入ってくる。放課後になると部活が始まって、運動部のかけ声や吹奏楽部の音色で充満する。夜、ベランダに出ると、このアパートと隣の家の横からのぞくグラウンドは昼間の出来事がまるで嘘みたいに静かだ。夜のグラウンドをながめ
2016年4月5日 22:50
その日はいつもより少しはやく家に帰って、夕飯をつくろうと決めていた。にんじんが3本くらい余っていたから、きんぴらで消費しようと細切りに。にんじんって固くて切りづらいし、単体だとボリュームはないし。主役にするには微妙だなと思いながらも、もうこれからスーパーに行く気分でもなくて、とりあえず切る。切る。切る。切る。あ。 まな板がぐらついて、左手の親指に当たった。つー..と