アフガニスタン情勢(続編)
アフガニスタンで今起きていることを様々な方々と意見交換しました。この問題は、現段階で我々日本人にとって遠い中央アジアの国で起きていることとしてまた、ワイドショーネタとしての位置付けなど殆ど関心がない状態ではありますが「風が吹けば・・・」の桶屋理論で言えば多かれ少なかれ、遅かれ早かれ否が応でも安全保障、難民(受け入れ)対策などに対応せざるを得ないのではないかという話で盛り上がりました。
1 日本のメディアが報道するコンテンツ
どうしても米国経由或いは米国発情報に頼らざるを得ない部分があり、メディアが発信する内容はかなり米国寄りのステレオタイプ化されたコンテンツになりがちな気がします。
🔹 タリバンをテロリスト扱い
🔹 過去のタリバンによる遺跡破壊や公開処刑、婦女子に対する蛮行を全面に押し出して悪役として宣伝
するなどして今起きていること、これから起きようとすることを判断する判断材料としてはニュートラルではない、ある意味不適切な内容になっていることは否めないかと。
2 世界はタリバンをどうみているのか?
今回のタリバンが電光石火の如く首都カブールを陥落した背景には様々な専門家がそれぞれの知見で発信していますね。ロシア・中国の思惑、カタールなど湾岸諸国による新米仲介工作などなど。以下は、国連を含む世界の国々がタリバンについてどうみているかを公開情報を元に取りまとめてみました。
🔹 EU(欧州連合)ボレル外交安保上級代表の言
「タリバンは、戦争に勝った。彼らと協議する必要がある」
🔹 カナダ トルドー首相の言
「タリバンを政府として承認する予定なし」
🔹 米国国務省のネッド・プライス報道官の言
「(タリバンが)国民の基本的人権や女性・少女の権利を守る政権なら一緒に仕事が出来る。タリバンの行動にかかっている」
🔹 国連安保理
「交渉を通じ女性の参加を含めた団結した新政府の樹立を求める」
🔹 中国政府 華報道官の言(少し長いですが)
「中国はアフガニスタンの国家主権及び国内各派の意向を十分に尊重した上で、アフガニスタンのタリバン等と連絡・意思疎通を維持しており、アフガニスタン問題の政治的解決を後押しするために建設的な役割を果たし続けている。7月28日に王毅国務委員兼外交部長(外相)がアフガニスタン・タリバンの政治委員会トップのバラダル氏一行と天津で会談した。我々はアフガニスタンのタリバンが各党派、各民族と団結して、アフガニスタン自身の国情に合った、幅広く包摂的な政治的枠組を構築し、アフガニスタンの永続的平和の実現に向けて基礎を固めることを希望する。
アフガニスタン・タリバンは、中国との良好な関係の発展を望み、アフガニスタンの復興と発展への中国の参加を期待していること、いかなる勢力がアフガニスタンの領土を利用して中国に危害を加える事も決して認めないことを、繰り返し表明している。我々はこれを歓迎する。中国は長期にわたり、一貫してアフガニスタンの主権と独立、領土保全を尊重し、アフガニスタンの内政に干渉せず、アフガニスタンの全ての人々に対する友好政策を遂行してきた。中国は、アフガニスタンの人々が自らの運命と未来を決定する権利を尊重しており、アフガニスタンとの善隣友好協力関係を引き続き発展させ、アフガニスタンの平和と復興のために建設的な役割を果たしていきたい」
いずれのコメントもかつてアフガニスタンを実効支配していた頃のタリバンに対する辛辣で否定的な見方ばかりではないことがお分かりかと思います。
3 タリバンとIS(イスラム国)、アルカーイダとの関係は?
ある参加者からこの問題が指摘されました。かつて(と言いますか今でもかもしれません)タリバンはアルカーイダの幹部を匿ったり、軍事キャンプの場を提供したりイスラム国との共闘を画策した時期がありました。
この点についてBBCは次のように報じています。
「ドーハで失敗に終わった和平交渉では、タリバンが欲している国際的な承認について、アルカイダとの関係を完全に断った場合にのみ与えられることが明確にされた。
これに対しタリバンは、アルカイダとはすでに断絶していると説明した。しかし、最近の国連報告によると、両組織が部族や婚姻に基づいた緊密な関係を保っているという。」
つまり、表向きはイスラム国やアルカーイダとの関係を断絶しているとしていても内実はそうではない危険性も孕んでいるということです。他方で現在アフガニスタンに駐留するアルカーイダの勢力は200−300と言われ今後アフガニスタン国内にて主体的に活動する勢力として見做されていないとする米情報筋の話もあり、またここでタリバンが以前犯した過ちを繰り返し轍を踏めば中国アメリカをはじめとする世界の国々からの協調・援助を得られなくなるということはタリバン自身が知悉しているはずです。
他方で、どこの組織でもそうですがタリバンも統制が取れた一枚岩でないことは明らかであり今後一部の跳ね上がりがアフガニスタン国内のイスラム過激派勢力と結託して・・というシナリオも否定できないことも事実かと。
4 最後は民族意識か?
今回のタリバンによる電光石火、疾風の如くの席巻の背景にはアフガニスタン国民の米国支配或いは米国に媚びを売る親米傀儡政権への厭世観とアフガニスタンは我々の手で再構築するとした民族意識、回帰意識が大きく作用したことは否めないと思われます。例えそれが恐怖政治を敷いた過去を持つタリバン主導であったとしても。彼らにとって「よりマシな政府」とはアメリカ流の押し付け近代化ではなかったのかもしれません。
今後アフガニスタンがどの方向に向かっていくかは今後の情勢を見極めていくことになりますが、今は純粋にアフガニスタン国民の安寧と幸福を心から願うばかりです。
ここまでお読みくださって、ありがとうございました。
この話につきましては、今後とも注視してゆきたいと思っております。引き続きよろしくお願い申し上げます。
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