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もとジャズ研おじさんのつぶやき

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譜面とかが出てこない記事だけ抜粋しています。 「セッションの歩き方」「アドリブのいろんな考え方やコツ」「練習法」「アマチュアジャズマンとしていろいろ考えたこと」などをつぶやいてい…
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記事一覧

「理論的な正しさ」は求めない方がいい

アマチュアのジャズトロンボーン&ピアノとして30年くらい活動している自分の実感です。 すべての楽曲、すべてのアドリブソロに対し、理論的に過不足なく完璧に説明してくれる理論は、存在しない、と考えた方がいいです。 ひょっとしたらそういう統一理論は存在するかもしれない。 バークリーでやるAvailable Note Scale理論などはかなりそうした理論に迫っているとは思う。 けれど、体得するためのコストが引き合わない。と個人的には思う。 ボルヘスの小説「学問の厳密さについて

【資料】ジャズトロンボーンの練習:とりあえずこれやれば?

おじさんなので、こんな僕でも、「練習とかどうしたらいいですか?とか、そういう質問を時々うけます。 まとめて書いときます。トロンボーンの人向けの記事です。 練習 結局音色を決めるのはロングトーン 速いフレーズを吹きたければ丁寧にリップスラーを練習すべし 高い音を出したければ低い音を、速いフレーズをしたければゆっくりで精度を高める練習が必要 リップスラーは用量依存的に(やったらやっただけ)上達するけど、タンギングは練習量に依存しない(「正解」がわかると急にうまくなる。つ

プロってすごいよな

学生の時は、プロの奏者って、CDとかの音源やライブハウスで聴くだけの存在だった。そういう時は「プロの演奏はいい演奏」なんだけど、それをしごく当然に享受していた。 うまい演奏も「こんなもんか」って思っていた。 だってそれを比較して聴いている音源もみんなプロの音源(なんなら比較対象はレジェンドの名盤だったりする)だから。 自分とは無関係だから。 でも、社会人になって、プロの人の主催するセッションに参加したり、公開ワークショップとかで、プロミュージシャンと共演したりした。 その経

なぜジャズトロンボーンのソリストは育ちにくいのか(2)

(1)ではトロンボーンのアドリブソロは難しく、やる人も少ないと書きました。 人前に出せる完成度の高いアドリブには時間がかかります。サックスやトランペットのような完全な花形のソリストになるには時間も必要ですし研鑽を積んでも楽器の限界もある。 では、どうしたらいいでしょう? 次善の策として限定的な形のソリストをまずはめざそう、という提案です。 ハードルの低い演奏形態トロンボーンはソロという分野では不得手です。 しかしそんなトロンボーンでもなんとかなるフィールドを考えてみました

なぜジャズトロンボーンのソリストは育ちにくいのか(1)

私はコンボやセッションを主戦場とするトロンボニストです。 ジャズ研学生とかのレベルでは(プロはしらん)フロント楽器の方がリズム楽器よりも仕上がるのに時間がかかるということを以前書きました。また、そんな楽器群のなかでもトロンボーンは際立って時間がかかることも。 アドリブをきちんととれるトロンボーンの人ってすごく少ない。 楽しんでアドリブを演奏できるレベルの人はもっと少ない。 この構図は私の観察しているここ30年ばかり変わっていません。 いったいなぜなんでしょうか? むずか

セッションにおける酒の効用

お店のジャムセッションで演奏者の飲酒はどうなの? 時々話題になります。 結論を言っちゃえば「好きにすれば?」と思う。 自動車と違って、演奏中の飲酒を禁止する法律などありませんしね。 アルコールの効用事実として、アルコールは意識や感覚に影響を及ぼします。 アルコール(エタノール)は中枢神経を抑制します。一定量以上とると感情、思考、行動、認知機能に影響します。 運動や感覚に影響します。楽器のコントロールには繊細な協調運動が必要なので、アルコールは演奏に負の影響を与える可能性

村上春樹『職業としての小説家』からクリエイターのありかたを考察する

村上春樹氏が、小説家について書いた本。 自分のありようと小説家としての成立過程を語っている。 小説家にとってはもちろんですが、少し範囲を広げてなんらかのクリエイションをする人にとっても参考になる言葉が散りばめられていました。 少し引用してみます。 小説家(クリエイター)の資質 おそらくジャズの演奏も、小説と同じく泥臭い領域の創作作業。 キレキレの頭脳や論理性は創作に絶対必要なものではない。 実践ならではの「鈍さ」が必要とされる。 やってみないと、向いているかどうかはわ

重く、軽く

ジャズ界隈でアドリブのことを考えて、もう30年近く経つ。 はっきりいってアマチュアのアドリブなんて聞けたものではないのが大半。 そんな惨憺たる状況のなか、出来るだけきちんとしたソロを吹きたい。 できればぐっとくるソロを吹きたい、なんて思ってはいるのだ。 僕のソロは軽い 私はトロンボーンを吹く。 トロンボーンは取り回しの難しい楽器なのである。バップのフレーズを吹くのは一苦労。 それがスタート地点であったこともあり、なんとか他の楽器のソロに比べても見劣りしないように、という

USJ復活の立役者 森岡毅氏の本からジャズ界隈の性格類型を考察する(3)

続きです。 ジャズのコミュニティにおける性格別の特性を踏まえたうえで、ではコミュニティ自体にどのようなデザインを実装すればみんなが幸福になるだろうか、ということを考えてみました。 コミュニティにもいろいろありますが、ここでは大学のジャズ研に限定してみます。が、さまざまなコミュニティでも参考になるとは思います。 ジャズ研とは「ジャズ研」は「研究会」と命名されていながら、研究要素は案外少ない(「愛好会」でいいんじゃないか?)。 個人的な経験ではアドリブを体系的に学ぶこともあま

USJ再建の立役者 森岡毅氏の本からジャズ界隈の性格類型を考察する(2)

その1の続きです。 T=thinking(思考)の人、C=Communication(交流)の人、L=Leadership(達成)の人と、三つのタイプに分類してみる。 そうすると、ジャズ界隈のいろいろな現象をスッキリと説明できるんじゃないか。 ジャズは極端なT偏重社会 いきなり結論ですが、数ある音楽ジャンルの中でも、ジャズはT要素が高いような気がする。特にアドリブを独習するタイプはTの人が多いと思う。 例えば、自然科学を研究するのにTの要素が必須であるのと同様にジャ

USJ復活の立役者 森岡毅氏の本からジャズ界隈の性格類型を考察する(1)

苦しかったときの話をしようか この前USJ立て直しの森岡毅氏の本を読んだ。 社会人になる娘さんにあてて、親からのアドバイス、という体裁の本。 就職する娘に対し、先生が教えてくれない世の中の仕組みとか、自分の強みを見つける方法、戦略の立て方、それだけではなくて自分の経験や回顧録、ほろ苦い失敗談なども含む、若者どころか全世代のオトナに役立つ本だった。おすすめしたい。 その中で、自分の特性を「動詞」で考えよというアドバイスがあった。 自分の強み(特徴)を大まかに三つのタイ

練習しすぎるバンドの弊害

そりゃあ、練習必要だろうよ!…とは思いますが、練習を何回も何回も繰り返すバンドには、問題が含まれていることもあります。 初学の段階での練習 初学の段階では、練習は大事。これはまあ、ほぼ断言できる。 特に、グルーブ・リズムをあわせる部分ことは独習独学では得られない。 「気を合わせる」ことリズムをあわせることは、一緒に音を合わせることが必要。 日本人にとっては、スウィング時代のスウィング感は独特です。 特に吹奏楽出身の人が吹奏楽時代に習う「スウィング」は全然ニュアンスが違う

列伝 その1〜J.J.Johnson

ジャズ・トロンボニストのなかでも燦然と輝くレジェンド、ジェイジェイジョンソン。 みなさん、J.J.のこと好き? 嫌いな人も、むしろ大好きな人もいるでしょうね。 わたし個人のJ. J. Johnson観は、何周か「好き」と「嫌い」を行ったり来たりした挙げ句、今では「尊敬しかない」に落ち着いています。 (長くジャズに親しんでいると、結局そうなる) ちなみにCecil McBeeというジャズ・ベーシストの名前を勝手にアパレルブランドにしたという事件がありましたが、では雑誌「J

【資料】リズムのスタイルが題名に含まれる曲

ワルツとか、ボサノバとか、そういうリズムのスタイル。 それが題名に入っているような曲。 Recado Bossa Novaとか、そういうやつです。 Waltz for a Lovely wife Waltz for Debby Angelo's Waltz Booker's Waltz The Christmas Waltz Jitterbug Waltz Samba de Orfeu One note Samba So' Danco Samba Bossa Antigua