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【ライブ感想文】 スガシカオ ~Acoustic Soul~

この記事は、スガシカオの2024年ライブツアー「Shikao & The Family Sugar TOUR ~Acoustic Soul~」のちょっとだけネタバレがあります(冒頭3曲+アンコール1曲)
それ以降の曲順は、感極まって全然覚えていないです。
プレイリスト作って振り返りたいので、曲順覚えている方がいたらぜひご連絡ください……!!

「あ、今日泣く予定だったのに、ハチワレのハンカチで来ちゃった」
 お気に入りなのに、ぐしょぐしょにしちゃう。ミスったなァ
「あ! 双眼鏡持ってくるの忘れた!」
「双眼鏡なくても見えるよ。きっと、ここからそこ(横断歩道の反対側)くらいの距離でしょ?」
 いやいや、それは言い過ぎだって……
 今回は運良く、比較的前のほうの席だったけど、さすがに、それは……と、思っていたのに。

 2024年12月9日 立川
 これは、スガシカオライブ「Shikao & The Family Sugar TOUR ~Acoustic Soul~」の断片的な感想文である。
 ライブ中は感極まって、曲順を記憶するようなアタマは働かなかったので、「あとで誰か親切な人が載せてくれるセットリストでも見ながら、自分の中で再上映して、記憶を焼き付けよう」と思っていたのに、セットリストがどこにもない。

 スガシカオ 立川
 スガシカオ ライブ
 スガシカオ セットリスト
 スガシカオ セトリ

 思い当たるすべてで、Xもウェブも検索したのに、見つけることができなかった。今回、冒頭の3曲だけ並べてみたのだけれど、どこにもセトリがないから、わたしの記憶の中だけで、もはや確認の術がない。(間違っていたらごめんなさい)

 今回のライブに関しては、信じられないことにスガシカオ本人が、演奏曲を公表していたのだけれど、あえて新譜「Acoustic Soul 2014-2024」以外はチェックせずに挑んだのが仇となった……
 っていうか、ライブ前にセットリスト公開しちゃう人っている!??
 びっくりしたよ……ちょっと笑っちゃった。言わないデショ、フツーは。
 いやでもフツーってなんだよ……むしろ、「あの曲行けるなら行きたい」ってなる人もいるから、セットリストを公表しない今の文化がおかしいのか!?? いやいや、「あの曲聞けるかな〜〜〜」って思いながら会場に行く楽しさもある。
 わたしが今回聞きたかったのは「Happy Birthday」だったのだけれど、事前に公開されたセットリストには入っていなかった。だからどうって、どうってことはない。

会場の、たましんRISURUホール

 記憶を、12月9日に戻す。
 おそらく、18時45分。開演の時間。
 だと思うのだけれど、ずいぶんと前から会場のデジタル時計が消えていたので、正確な時間はわからない。
 けれども客電がすうっと消えて、その人は現れた。

 見える。
 めっちゃ見える。
 いる、そこに。
 本物だ。

 スガシカオ!!!!!!

 今までライブっていうと、「あ〜〜〜出てきた〜〜〜本物動いてンな〜〜〜」って感じだったんだけど。
 いるのよ、そこに、スガシカオが。
 手を振ったら見つけてくれるんじゃないかとか、こっちを向いたとか錯覚しそうな距離に。きっと逆光で見えてないだろうけど、そんなふうに思わせてくれる距離に。

 その事実に動揺しているのも束の間、何やら聞き覚えのあるイントロが流れてきて……ああ、これはよく知っている。と気づいたら、もう泣いてた。
 たぶん会場で最速で泣いた。
 1曲目のイントロの、2小節目に入るところくらいで。

「8月のセレナーデ」は、大学生のときにコピーした曲で……

もしも君がいなくなってしまったら
たとえばネコやイモムシになってしまったら
メソメソと泣くよ
でもそのうち 都合の良いネタにしてしまうかも

スガシカオ "8月のセレナーデ"

 あれから十五年以上経った今でも、この曲を歌いながらいくつもの夜を越えてきたというのに。

▼スガシカオで7曲つくるプレイリストにも入れています

 間奏の鍵盤ソロ、すごい必死にコピーして、へたくそだったから7割くらいしか捕らえられなくて、それでも弾いていてすごく幸せだったあのフレーズを、鍵盤の美しさと面白さがギュッと詰まったフレーズを、いま、目の前で、まんま同じやつを、森俊之さんが弾いていると思うと!!!!!
 生きててよかった(号泣……)
 いま書きながら思い出してまたちょっとうるっとくるくらいの、だってもうそれは奇跡じゃないか……

 親切な同行者が「だいじょうぶ? そっちから見える? 場所変わる?」とか言ってくれていたのに、「うるせえっ、もう泣いてるから放っといてくれ!!!!!」って思ってた。ありがとう、ごめんね。バッチリ見えていました。


 2曲目は、新譜「Acoustic Soul 2014-2024」から「ゼロジュウ」

 待ってました!!
 新譜の1曲目!!

 さっきより少し落ち着いて、冷静に音を吸い込む。

 たいへんに、音が良い。

 その、「音が良い」の概念は人それぞれで、それこそ「個人の感想です」になってしまう場合が多いのだけれど、今日は言語化に挑みたい。

 まず、会場に入った瞬間「これ、地方の市民ホールみたいな感じ……?」「音とか照明とか、もしかしたら控えめかもネ」なんて言っていたことを侘びたい。後述するけど照明もすごーーーくよかった。

 全体的な音量はちょっと小さめだったかな。後半につれてまた少しバランスは変わって、音量も上がった(あるいは上がったように”聞こえた”)けれど、全体的に「轟音」というよりも、映画を見ているような、小説をめくるような、繊細な音作りでありながら、もちろんライブ感も損なわない。ちょう絶妙。漂うように心地良い。


 音に揺られていたら、また懐かしいイントロが流れてきて泣いちゃった。

 これも、大学時代に弾いたことのある曲で。
 もう、アタマの3曲のうち、2曲も自分が弾いた曲ってそんな奇跡ある??
 弾いた曲っていうのは、たくさん聞いた曲でもあって、もう代えがたい特別な思いで……

 3曲目が終わったとき、「ああもうわたし今日帰っていいかも」って思った。
 すごい充実感と満足感だった。

 もちろん、ライブは最後までずっと最高だったのだけれど、わたしに曲名を覚える才能がないので、セットリストを覚えていられるはずもなく……
 1曲ずつの感想を書けないので、ライブを通じて思ったこと書いてみようと思う。というか、そのスガシカオの確固たる意志というか、音と音楽が、とにかく素晴らしかった。

 ライブに期待するものは人それぞれだけれど(だからライブの良さ、音の良さも個人の感想になってしまう)
 なんとなーーーく、「推しと同じ空気が吸えて幸せ」というところに比重が置かれがちで、演奏の内容にはあまり触れられない傾向にある……好きな人がすることはなんでも嬉しい(当たり前)なので、それもよくわかる。
 あるいはMCとか、風船を飛ばしてみるといったエンタメ性とか(高校生のとき、東京ドームでGACKTさんのライブを見たとき、本人が宙に浮いていた。あの感動は一生忘れない)
 コールアンドレスポンスとか、一体感とか、
 もうぜんぜん違うところで、ファン同士が集えるとか、ライブに行くまでの道のりが楽しいとか、もう色々あると思う。
 ぜんぶ良い。全部最高だ。
 基本的に、推しが動いているところを見られるだけで最高なのだ。そこに、居合わせられることは奇跡。

 だからスガシカオが何をやったって、わたしは絶対に幸せになれるというのに
 スガシカオの何が良いかって、音楽とファンに対してあぐらをかかないというか、徹底的に真摯なのである。
 スガシカオは、音楽で勝負してくる。わたしは今日それを見届けにきた。

 ここからは個人的な話だけれど、ライブと音楽に於いてわたしが嫌いなモノっていうのがあって、それが「轟音」というと、「ライブって音が大きいものでしょ?」とお思いになるかと思うんですが、
 全体的に音が大きすぎて耳が痛いとか、ギターがうるさくて歌が聞こえないとか、音がデカイ=ライブとか、リアルとか、現地にいる感覚だと錯覚しているアレが、どうも好かん……
 空気も吸いに来ている。けれども演奏を聞きに来ている。(野外とかなら話は違うかもだけれど、わたしが選んでいるようなホールのライブでは特に)

 その対岸にあるような、整列された音が美しいと思う。
 ひとつひとつの音が、ピンと貼られた線のようにまっすぐ。
 ボリュームもあるけれど、苦しさがない感じ。

 今回の新譜「Acoustic Soul 2014-2024」をヘッドフォンで聞いたとき、スネアのリリースの音がちょうきれい……と、うっとりした。
 スネアって、ドラムのたくさんある太鼓のひとつなわけだけど、その音の本体どころではなく、スティックが離れたあとの余韻が美しいって……
 もちろんこれは「わたしそんなとこまで聞いてまっせ」という自慢ではなく、そこまで丁寧に音が作られているということである。このCDの細部に関しては、誰でも耳をすませば聞こえる。

 ライブなのに、まるでCDを聞いているかのような美しさ……
 言葉にすると「え〜〜〜じゃあCDと一緒でいいじゃ〜〜〜ん」とお思いになるかもしれないけれど、そうではナイ。だっているからそこに、スガシカオ。
 その指先から音が出ている、それが見える。
 いま掻き鳴らした音がアンプを通って、スピーカーの音と混ざって飛んでくる。音は空気を震わせて、わたしの髪の先をたしかに揺らしている。

 誰が、何をしているかよくわかるライブだった。もちろん、比較的近くの席から見ていたので、「見えていた」というのもあるのだけれど、そういう音作りだった。
 同行者は、「アコギのアルペジオが聞こえた」と感動し、
 わたしは、「コーラスの人が振ってるシェイカーの音……が、聞こえてる?マジ?」と自分の耳を疑った。
 多くの場合、轟音に掻き消されて聞こえなくなってしまう音が、それはもう鮮明に鳴っているのである。スゴイ。スゴすぎる。スゴすぎて、ちょっと笑っちゃった。

 もちろん、後半になっても熱さを勢いで誤魔化したりしない。
 やたらとデカイ音で掻き鳴らしたり、盛り上がっていることを装ってやたらとテンポが上がることはない。
 繊細な料理を、丁寧にをサーブしてもらうかのよう……


 もうひとつ、”歌もの”における「良い音」って、ものすごーーーくシンプルに「歌が聞こえる」ことだと思う。もっといえば、歌詞が聞こえること。
 自分がバンドをやっていると、なんとなく自分の爪痕を残そうとして、デカイ音で弾いてみたり、目立つ音色や音程で弾いてみたり(それが不協和音になっちゃったりして、あげく格好いいと思ったりして。不協だから目立つのは当然だ!) 今思えば、歌の邪魔ばかりしていたと思う。
 あーーー思い出すだけでも恥ずかしい。

 その人が、そのバンドが、何を目標にしているかにもよるだろうけれど
 わたしはやっぱり言葉が好きで、歌が好きだから。
 ライブだと、「歌や歌詞はつぶれて聞き取れないもの」「推しと同じ空気を吸うことが目的であって、音楽そのものを聴くならCDのほうがいい」っていう諦めがあったりしたけれど、今回はそれがゼンッゼンなかった。
 聞こえる、スガシカオの声が、歌が……
 わたし、マスクの下でずっと一緒に歌ったよ(歌詞ぜんぜん覚えてないのに。聞き取れて歌えた)


 良い映画を一本見たような、すごく洗練された、プロフェッショナルなライブでした。バケモノ(褒めてる)

 良い意味で、途中ちょっと寝そうだったもん……

 例えるなら、よく行くプラネタリウム。あそこは録音された音声じゃなくて、科学館のお姉さんが読んでくれるタイプなんだけど、うまいお姉さんが読んでるときって、心地よくって眠くなっちゃうんだよね。
 読んでる人が、たどたどしかったり、つまずいちゃったり、へんなイントネーションがあったりすると気になって眠れない。あの感じ。
 上質なものほど、つっかかる部分がなくて、なめらかで、トリップするような幸福がある。そんなライブでした。


 あと、照明フェチのわたしとしては、照明もすごーーーーーくよかった!! まず、設備がすばらしかったこと(あんなにムービングがあると思っていなかった)
 前半から、ストロボなど攻めた演出が多かったのも、めっちゃめちゃ格好良かった。
 照明って、曲でいうならサビが盛り上がるように。ライブを通していうならば、クライマックスで最高潮になるように作り上げてゆくように作るので、ライブ前半はちょっと控えめだったり、隠し玉を取っておいたりするんだけど、最初からガシガシ光っていて
 でも、後半ではもっと光ってたので、ずっと「うへええ〜〜〜」って奇声を発し続けることになってしまった……

 今回のツアーメンバーは、デビュー当時のメンバーということで、ライブを通じて安心感というか、安定感というか。
 誰にも遠慮がない感じっていうのかな。みんながみんな、適切に支え合いながら、シンプルに音が遠くまで届いているというか
 心地の良い水槽を泳いでいるような気分でした。


 アンコールの「Progress」にも、ちょっと泣いちゃった。

 良い曲だってわかってたのに。
 もう聞き飽きたくらい聞いたのに。
 それでも、

ずっと探していた 理想の自分って
もうちょっとカッコよかったけれど
ぼくが歩いてきた日々と道のりを
ほんとは”ジブン”っていうらしい

世界中にあふれているため息と
君とぼくの甘酸っぱい挫折に捧ぐ…
”あと一歩だけ、前に進もう”

スガシカオ ”Progress”

 懐古厨と言われても仕方がないし、これを言ってしまったら……ていうところもあるのはわかっているんだけど
 それは、「やっぱり昔から聞いている曲のほうがすばらしい」とか、古参ファンのほうがすばらしいとか、そういうことではなくて

 ただ事実として
 もう、十五年以上。わたしはこの曲に励まされていて
 スガシカオが歌ってくれていたから、乗り越えられた夜があって
 その曲をいま、まだ、スガシカオが歌ってくれていると思うと。
 もう、何にも変え難くて
 実家の味が変わらないみたいに、時間が経ってもくつがえらないものってあるから。

 ああ、また励まされちゃったなぁ。
 大袈裟かもしれないけれど、スガシカオに救ってもらった命だから
 この命で何をしようって思ったときに、「スガシカオって格好いいんだぜ」ってことを、言葉で残そうと思ったんです。

 ありがとう、スガシカオ。
 今日もまた、歌ってくれて。
 まだ、音楽を選び続けてくれて
 近年、定期的に新譜を出して、ライブツアーをしてくれて、
 気がついたら、3年連続であなたに会いに来ています。

 苦しい3年でした。
 でも、生きています。
 いろいろなものが混ざり合ってここまで来たけれど
 そのうちのひとりが、あなたです。

 少し前にファンレターを書こうと思ったら送り先がなかったので、感謝の言葉をここに残しておきます。
 それがどんな未来かわからないけれど、今よりもうちょっとマシな人間になれたら、「スガシカオに救われた命なんで」って言います。いまでも言うけど。 

 あと、ライブの帰りに感想文をXに書こうと思っていたんですが、現地で「スガシカオのライブ行ったぜ!」ってアピールできるものがほとんどなくて

 そう、過去のライブでいうとこういうスポット!!

2022年 国際フォーラム
2023年 LINE CUBE SHIBUYA


 今回、小さく「スガシカオ」って書いてある表示を一瞬見たんだけど、列に並んでいてまたたくまに過ぎ去ってしまって
 もうね、リスしかないのよ。

リス
中もリス


 行った証拠となるのは、チケットくらい……


 やっぱり、推しを「好き」と言いながら行きていきたいので
 今後はフォトスポットというか、新譜のポスターとか、既存のものでいいので、ぜひ何か貼ってもらえると嬉しいです……会場の都合等あると思うので、難しいこともあると思いますが
 みんなの感想見たくて(セットリストあげてる人も探したくて)Xを徘徊したんだけど、ほとんどみんなリスの写真ばっかりで笑ってしまった。やっぱりみんな、リス撮るよね。わたしもリスでした。


 最後に。
 これを読んで、やっぱりあなたのことを好きだなあ、と思いました。

Acoustic Soul Tour 初日@立川たましんRISURUホール、来ていただいた皆様、ありがとうございました!
古いけど良い音の会場、まるでアナログレコードのような心地よい音響でお届けすることができたかと!
我々バンドは26年ぶりの初日で、もうちょっといけたなーという感じでした。「演奏や歌が上手い」のは当然のこと、さらにその先の先へみんなを連れて行けるよう、次回からも精進していきます!

Instagramの投稿を引用

「演奏や歌が上手い」は、当然かも知れないけれど、当たり前ではなくて
「上手い」にたどり着いたらずっと上手いわけじゃなくて、練り続けなければいけないものに、向き合い続けるスガシカオは、やっぱり「すげ〜」です。すごいカッコ良いです。
 今回、ライブ終わったあとの第一声は「スガシカオ、やっぱり歌うまいな〜〜〜」でした。カッコ良いところを見せてくれてありがとう。
 わたしはこれから、音楽の面白さを教えてくれたのはスガシカオです、って言います。


 それでは、また次の音を楽しみにしています。
 ずっと、これからも


 2024年12月14日 ねる

 2024年12月9日、37歳になりました。
 当時付き合っていた恋人の家で、スガシカオのベスト盤を見つけて、持ち帰ったのは19歳のときでした。あなたに生かされた命です。


◆2023年のライブ感想文

◆2022年のライブ感想文

◆ライブ同行者用に書いた記事

◆その他、記事内にスガシカオが出てくる話


▼好きになった子の話



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松永ねる
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