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手軽なしあわせ

「こ、これだ……!!!」

弟は、待ち合わせに少し遅れると言った。
南町田の駅前は屋根がなくて暑いし、わたしは手近な雑貨屋に逃げ込んだ。
雑貨屋、かわいいものを見ていると、どうしてこう、気持ちが華やぐんだろう。
わたしはにこにこしながら、ひとつずつの商品を見つめ、にんまりしていた。

そうして、出会った。
ずっと欲しかったもの。

あとで弟に相談しようかな、とか
もう一度見てから決めようかな、とか
そんな考えもよぎったけれど、「キミにきめた!」という強い気持ちで、わたしはレジに向かった。


買ったものは、美容ローラー

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友達の家にあって、テーブルの上で見つけるたびに、顔をころころしていた。
毎回、とろけそうなくらい幸福だった。
わたしも欲しい、と思っていたのだけれど、「これは高価なもの(1万円以上)」という認識だった。

そうか、今では安価なものもあるのか!
3000円の、小さな美容ローラーを買った。
4000円の大きいものもあって、それもよさそうだなあ、と思ったんだけど
重くて、使うのが面倒になりそうだったので、小さなものを選んだ。
もう大人なので、それは関係ないこともわかっているけど、猫の絵のついたかわいいハコに入っているのにも、好感を持てた。


買ったものは、絶対的なしあわせだった。

ネイルみたいに、使い終わることもないし
ハンカチみたいに、がさがさになっちゃうこともない
ずっとずっと、わたしのそばで、わたしにしあわせをくれる。
こんなに劣化しない、勝算のある買い物があっていいのだろうか。


やりすぎはよくない、と書いてあるけれど、今日もコロコロしている。
身体の中で淀んでいたものが流れ出すような気がする。
実際にどうか、はどうせわからないので、気持ちが大切だと思う。


わたしはこれからも、手軽に、しあわせになりたい。




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松永ねる
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