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研究ノート①

4月9日、新年度が始まり、研究室のゼミが行われ、昨年から長らく休止していた大学院での研究活動が再開されると考えていた矢先、今月中にも、大阪府下に緊急事態宣言が発令される予感。
今年度も、研究活動は自宅での作業がメインとなりそうです。

いまさらながら、僕は大阪市内の大学で建築学分野を専攻する、修士2年の者です。今年度は修士論文を提出せねばなりません。研究内容は、建築デザイン・歴史学のなかの、旧日本陸軍の倉庫建築についてです。特に故郷、広島に残る旧陸軍の赤レンガ倉庫、旧廣島陸軍被服支廠倉庫(以下、出汐(でしお)倉庫)について昨年から調査してきました。

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こちらの倉庫、広島市民の間では通勤通学風景のひとコマとして、夜一人で近くを通るには怖い建物として、さらに被爆建物として、広く知られていました。赤煉瓦の外観の倉庫が4棟現存し、原爆の爆風で折れ曲がったままの鉄扉が連続する光景で、有名です。

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この建物が全国区で話題となったのは、2019年も暮れに迫った12月3日。現存する4棟のうち3棟を所有する広島県が、1棟保存、2棟解体の方針を発表したのです。直後から多くの市民、被爆者、それらの団体から、解体反対と4棟保存を要望する声が上がります。

前年6月の大阪府北部地震でブロック塀が倒壊し、小学生の女の子が下敷きとなり、亡くなる災害がありました。南海トラフ地震の来襲が囁かれる中、倒壊の危険が潜む建築物に対して緊急の調査がなされたのは、この出汐倉庫も同じでした。そして結果は、「本件建物は、震度6強規模の大地震が発生すれば、その震動で倒壊等する危険性が高い。」東京駅ほどの規模を持つこの建物群の近隣には、幅わずか4mほどの道路を挟んで住宅街が広がります。住宅街に向けて建物が倒壊した場合その責任を問われるのは行政ですから、2棟解体の説明には十分でした。1棟保存の判断は、県が感じているせめてもの両立の気持ちの現れ、と感じるほど、難しい判断だったのだと思います。

保存か、解体か。今、日本の各地で、多くの歴史的な文化・文化財が難しい判断を迫られていることと思います。いずれにせよ、出汐倉庫に関して、未だ広く流布していない情報を収集・整理・発表することは、喫緊の課題であると感じました。今日から、noteを研究ノートとしても使っていこうと思います。

(20210419)


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