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ジョージ・オーウェルによるイギリス料理考

ジョージ・オーウェルといえば、『1984』や『動物農場』といったディストピア小説、はたまた『パリ・ロンドン放浪記』『カタロニア讃歌』『ウィガン波止場への道』などのノンフィクションが挙げらますが、エッセイもいろいろ残していて、そのひとつが『In Defence of English Cooking』。
日本語にすると、“イギリス料理は悪くない”“イギリス料理を弁護する”といったところでしょうか。

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10年ほど前だったと思います。
2000年代半ば、ペーパーバックで知られるペンギンブックス/Penguin Booksが70周年を迎えた際に発売(再編集、もしくは装丁を変更しただけなのかな)されたものにジョージ・オーウェルの『In Defence of English Cooking』もあり、これ、わずか60ページほどの薄い本。
4つのエッセイが収められており、トリに登場するのが、本のタイトルにもなっている「In Defence of English Cooking」です。


イギリスの生活では一般的な、でもそれ以外の国々ではさほど知られていないであろう食べ物の賛歌、それはキッパー(ニシンの燻製)だったり、スティルトン(ブルーチーズの一種)だったり、コックス(・オレンジ・ピピン ※リンゴの1種)だったり。
そして、レストラン事情で締めくくっています。

特に、このエッセイの大部分を占めるイギリスの食べ物賛歌は、作品が発表されて70年以上(!)経った今でも十分通用します。
締めのレストラン事情は、今は違います!と言いたいところですが、実は本質的な部分では変わっていないのでしょうか。もしくはもがき続けているのかもしれません。
私は疑ってかかるところから始めるクセがあるので、本当に変わったのかもしれないけれど。

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さて、「In Defence of English Cooking」はたった3ページのエッセイです。
しかも、平易な文章なので、読みやすい。
私は、ジョージ・オーウェルの作品が好きで、同時に深〜く影響を受けているのですが、エッセイを読むと、その文体から、一言でいうと、誠実な人だったんだなぁ、と感じます。

目線が上からじゃないのよ。偉そぶったところがなく、言葉を変にこねくり回すこともなく、それでいて情景がまざまざと浮かんできて、とても好感の持てる文体です。考え込むことなく、さらっと読めるのもいい。


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