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私 心の内
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2023年1月の記事一覧

【詩】サラサラと

心の奥から風が吹き 少しずつ映るものが 乾燥していく   動かなくなった感動は 砕けて砂へと散っていく   一瞬のやすらぎに眠った夜も もう遠く   流せる涙もあと僅か   このままサラサラと  サラサラと 乾燥地帯の長い旅

【詩】路地

あの角を曲がった路地は 名残り道   心澄ませば 灯る記憶のまぶしさに 歩が緩まる 名残り道   ずっとずっとが無いように あの先からは一人道 夢から覚めて振り向けば 足跡だけはついてくる   あの頃があるから今がある そういってずっと続いてくる

【詩】いつも通り

いつも通りを連れて 心は安心する   いつも通りを連れて 心は無表情になっていく いつも通りを連れて 心は眠ってしまう   いつもの先に触れるには 時折りは 心を手ぶらに歩いてみる きっと真新しい感情を連れて来てくれる

【詩】しばらく

肩をぶつけて進む空気を 揺れながら見送っている   それでいい   無造作に変わりゆく景色を ゆっくりここで眺めている   それでいい     止まった時間のその先に 触れる何かが沸き立つまで 今はしばらくそのままでいい

【詩】往き方知れず

水を踏む足跡のように そっと私を残さず 街を歩く 見えない空気を食むように そっと影を残さず 街を出る 誰にも気づかれない安心 誰にも見つけてもらえない寂寥 どちらも私 往き方知れず

【詩】雪道

時の上に 乗っかっている 踊るように吹く粉雪が 冷たさもなく通り過ぎる   私の足では刻んでいない そんな時間が往くところ   寒ささえ焦がれ始める 感覚のない温室から   そろそろ私を 動き出そう また雪道を転びながら 泣きながらでも

【詩】わたしとわたし

いつか触れることを 一輪の花に願いながら 届かないまま枯れ落ちぬよう 夢を見る   足らない何かを望む前に 奥深く閉じ込めた 心を忘れてしまった影を それも私だと 共に行くしかないのだと   そこから新たな今日を見る 届くことを願いながら

【詩】晴れ

深呼吸 吸い込む陽射しの明るさは 心の焦燥を 生み出す私を捉えては 僅かであっても あたためる 曇りも雨も雪の日も 自分らしく在りたいと 光を求め もがく私をなだめては また訪れる 晴れを乞う

【詩】今日と明日と

窮屈な心の生き場所は あきらめに似た笑い顔   作り笑いと本物を 見分ける涙の分量は その日砕けた私の欠片   欠片と涙が巡り合う また今日を繰り返す いつか明日が来るように

【詩】つま先

ふっと冷たくなる瞬間 焦がれる世界に つま先が向く   つまづく覚悟もないままに 見送り見送り 流れゆく景色に酔いながら   また冷たくなる瞬間を待つ つま先が動くまで 背伸びをして立ち尽くす

【詩】ぽつりぽつり

泣き出した魂の果てに あると思っていた心   自分で握りつぶした その欠片に ぽつりぽつり落ちてゆく   ぽつりぽつり 生暖かいしめっぽさが 人の気配に似て   また私を探し出す