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はじめて働いた花屋さん

私が始めて働いた花屋さんの話。語ります。
その花屋は住宅街にポツンとある街の小さな花屋でした。

私が就職活動した時期はちょうど氷河期時代で
大学に来た設計の求人が1件だけ…。
是非とも働きたい!と熱意ある人に就職は決まり
入りたかったランドスケープの設計事務所は短期間の体験はできましたが、就職はできませんでした。(色々ありましたが端折ります)

造園会社は求人ありましたが、当時の私は庭師の道は考えておらず
偶然目にした新聞広告の花屋の求人が気になり
とりあえず面接へ…。

その花屋は設備関係の仕事をしている社長が花好きで開業した花屋でした。
父親くらいの歳の社長は履歴書の私の字が綺麗なのが気に入ったらしく
その場で採用になりました。

週5で朝から夜19時閉店まで。
ペーパードライバーなのに、社長に「乗れる」
と言われてハイエースで配達もしました。
当時はカーナビも付いてなくて、地図を確認してから出発するけど迷子…遠回りで配達に遅れたり、
大阪なのですが(自己紹介に書いてませんが大阪住まいです)
定期的に北新地の車線いっぱい車いっぱいタクシーの運チャン怖いみたいな道を走らねばならない事もあり
この配達から運転が苦手になり
今は完全にペーパードライバーです。

花の組み方は社長が教えてくれました。
今思えば、仏花の組み方みたいな
スパイラルとか全く関係のない
どうやっても花が平べったくなるような組み方…。
社長は花屋ではありません。
(スパイラルは花束の組み方の基本です)

当時はスパイラルという組み方がある事すら知らず私は平べったく長くしか組めないまま、花屋の店頭に立つ事になるのです…(恐ろしや)

一緒に働いていたのは少し年下の社長の息子と、私より少し先に入社したAさんという女性の2人。

私が入る前はベテランさんが働いていたけど出産のため辞めたらしい。

その少し年下の女性Aさんは
寡黙な感じで心をなかなか開かない人(社長の息子にはめっちゃ喋るが)
ほとんど2人で店内にいましたが毎日が苦痛でした…
(社長の息子は外回りとかが多い)
だいたい喋らず、たまに気分の良い日は喋る人。

花束の組み方とか花の技術を教えてくれる訳でもなかったし(Aさんも花屋歴が浅くてそんな技術はない)

そしてその花屋はお客様が少ない…
1日1〜2人…ゼロの日も…。
サカキや仏花を買いに近所の方がたまに来てくれる感じ。
3人で近所のマンションとかにチラシをポスティングに行ったりもしました。

そんな花屋でしたが、花はキーパーには入れず
綺麗に飾って種類色々販売していたなと思います。
余った花をアレンジにして店内に飾ってみたりしてました。

部屋に飾るための観葉植物を頻繁に買いに来てくれる新婚の若奥さんのために、観葉植物に育て方のポップを書いて付けたり、暇だったので店内を可愛く飾るのが楽しかったです。

そんな花屋に週1で通ってくる若い女性のお客様がいて必ず「青系の花束を下さい」と注文されます。

いつもAさんがお作りして
お客様は嬉しそうに花束を受取られるのですが
ある日、そのお客様がいらっしゃった時にAさんが私に「作って下さい」と言うのです。

ビックリして、練習しても平べったい花束しかできない私ができるのか自信ないまま
やるしかない…と、青と白のお花とグリーンを選び自信ないのを悟られないよう組みました。

出来上がったのは…
やはりボリュームのない、平べったい、メインの花も端っこに寄った花束…。
花屋が組んだとは言えない花束…。

それを受け取られた時の、悲しそうな複雑なお客様の表情は今も忘れられません。

できないと言えば良かったけど言えなかった自分にも腹が立ち。
それを見て腹の底で笑ってる感じのAさんにも腹が立ち…。
Aさんとは絶対分かり合えないなと思いました。

でも私はアレンジメントは得意だったようで
社長の奥さんも私のアレンジメントを見て
お!と褒められたり
お正月に飛び込みでアレンジメントを注文されたお客様が、凄く良いわとめちゃくちゃ喜んで帰ってくれたりして

お客様の反応がダイレクトに伝わるので
もっとスキルを上げたいな…と思っていました。
でも先輩は教える気のないAさんしかいないし
当時はYouTubeもSNSもないため、どう勉強すれば良いか分からなかったです。

ある日、私が翌日に配達するためのアレンジメントを作成したのですが
朝出勤したら、私が作ってたアレンジメントは跡形もなく崩されており社長の息子が作り直していた事がありました。

始め訳が分からず、息子に聞いたら
おかしいから作り直した、というのです。
私からみれば息子のアレンジメントも良いとは思えず若かった私は泣いてしまいました…。せめて、ここがおかしいからこうした方が良いとか教えてくれたら良かったのに…と。 

その事とか、Aさんとの仲とか、見本となる先輩がいない状況がしんどくなってきて1年くらいで辞める事にしました。

社長の息子も悪い人ではなかったし仲良くもしていたので、悪気はなかっただろうし
私も泣く事はなかったよな…と今は思いますが。
花は趣味が人それぞれあって難しいなと思いました。

退職の日、Aさんから思いがけないプレゼントを貰いました。
ヘアピンとかアクセサリー。
「今まで意地悪してごめんなさい」
と言われました。

(自覚あったんかい!)
と思いました。

花屋の仕事は面白かったからまた働きたいな…花を教えてくれる先輩がいる店で…。と思いました。

私の後に花の専門学校を卒業したという若い子が入社してましたが
その1年後くらいには花屋は閉店してました…。

写真は内容と関係のない去年11月のコスモス

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