『ムカつく』ほど愛おしいコントライブ
(※『栗鼠のセンチメンタル』全体のネタバレを含みます。寧ろそれが主です)
男性ブランコのコントライブ 「栗鼠のセンチメンタル」
2021年2月20日(土) 紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA
15:30過ぎ
ギターの音が消えると、漫才衣装というか宣材写真のあのおじいちゃんみたいな、肌に直接着るとチクチクするベストを着た二人が行進して登場。
向かって右側の平井さんがコロコロ(カーペットクリーナー)を持っている。
床をコロコロしだす。
向かって左の浦井さんは行進しながら指示を出す。
無音の中、コロコロのカラカラカラという乾いた音が響く。コロコロのカラカラカラ
コミカルな動きをする二人。観客は何が起こっているのかわからないまま、舞台のふたりの挙動に注目しつつ、少しの緊張の中笑う。
すると二人は態勢を整え、呼吸を合わせる
コントのリストを勢いよく、交互に読み上げる
まさに息ぴったり。少しほどけていた会場の空気がまた張る。
「コントのリスト」
「見たことのない景色」
「怪物のメランコリー」
「花のない世界」
「父のプライド」
「犬のペットショップ」
「博士の純情な愛情」
「男性ブランコのコントライブ」
「栗鼠のセンチメンタル」
呆気にとられていると間髪入れずに激しいバンドサウンドが流れ、舞台の正面にOP映像が映し出される。これがまたかっこいい。
この単独だけでなく去年から毎月やっていたコントライブで使用される映像を制作しているのは、男性ブランコのスーパー作家のひとり、大澤紀佳さん。今回の単独のOPは今のところ公開されていないが、男性ブランコのYouTubeチャンネルにいくつかコントライブのOPが公開されているのでぜひ見てみてほしい。
図形や幾何学模様、テキスト・フォントの使い方が好き。
そんなスタイリッシュでクールなOP映像が終わると、舞台上で普通の浦井さんと黄色の体のラインがよく出るワンピースを身にまとったロングヘアの女性が睨み合っている。
平井さんと言えば女装、女装と言えば平井さん
女装で有名な芸人さんといえばレインボーの池田さんや空気階段のかたまりさん、かもめんたるの槙尾さんなど、女の子よりかわいい!人が多いなか、
平井さんが演じるのはクールビューティー、切れ長の目に紅引いて、長い黒髪が印象的な淑やかな、艶やかな女性。
か、もしくはとにかく変な子。素直じゃないけど真っ直ぐな子。
今回の単独では『見たことのない景色』『父のプライド』『犬のペットショップ』で平井さんは女性を演じていた。すべて淑やかタイプ。というか姉御肌?
平井さんの演じる女性は顔だけじゃない、衣装も素晴らしい。幕間で早く着替えるためかアイテムを減らすためかワンピースが多いイメージ。もちろんどれもキャラクターや場面にぴったり。さらにイヤリングもつける。たしかにキャラクター的に大ぶりのイヤリングしてそう。
そして一番は靴だろう。ヒール高め細めのパンプスやショートブーツを履いていたりする。たしかにキャラクター的にピンヒール履きそう。
そしてそして平井さんの演じる女性は見た目だけじゃない、一挙手一投足美しい。平井さんは女性を演じるとき手首を見せる動きをよくしている。肘や膝も左右寄って寄って。一歩前に出るときつま先で蹴り上げるような動きも決まりで入っている気がする。長い髪の扱い方もすごく綺麗でリアル。
言葉も美しい。綺麗な言葉だけを使うというわけではない。
なんなら江戸言葉遣いがちなそんなイメージ。淑やかな女性が会話で江戸言葉遣ってきたらそらわろてまいますわ。
男性ブランコは関西出身で元々大阪所属だったが2016年に東京に来た。
浦井さんは普段もコントでも関西弁を使っているようだが、平井さんはイントネーション以外は標準語でボケとして関西弁を使う気がする。あくまで気がする程度。この4行まじでいらん。
ここまで平井さんの女性役に対してかなりの熱量で書いてしまったが、そこら辺は男性ブランコや無限大ホールのYouTubeで観てほしい。
各コントの話
見たことのない景色
じゃんけん
↓
「じゃんけんで負けた方がこいつを埋めるって」
↓
でっかい豆
ここの緩急緩えぐかったー。最初3分くらいじゃんけんのくだりでポカポカ笑っていたら突然の「こいつを埋める」のセリフと不穏な照明と音楽で生唾を飲む。その瞬間こいつは豆のことだとわかってからの豆の木メインの話。なにこれ。会場であれを体感できて本当に良かったと思う。
「見たことのない景色が見たい」って自分も思うし好奇心ってやつなんだろうけど、見たことのない景色はもしかしたら毎日見てるんだよな
1本目なのに「ノウハウ」やら「ミカつく」やらのワードが、これを書いているこの公演の一週間後でも頭に残っている。
怪物のメランコリー
怪物ゼゼと人間の亀山くんの話。
ゼゼかあいい。ときどき非力な人間に対するコメントが恐ろしい、けどかあいい。
「ねぇ、無力なドアストッパー」の言い方
あるあるが何個か出てくるが、このコント全体が怪物と人間あるあるみたいなところあるよな。実際はないないだけど
亀山くんの「そんな言葉に本当はないよ」って優しすぎるセリフ。
「ぷんぷんだよ!」「(※下ネタ注意)盛岡冷麺」
(プンプンステッカー買いました。かあいい)
花のない世界
花のない世界で博士が作った一輪の花の蕾
それを咲かせるため一所懸命にお世話する花を知らない僕
正しい花の咲かせ方を指南する花の妖精フラー
花以外にも知らないことが多くてうまく会話にならない二人
愛情を与えるマイムがかわいい。
花の妖精が親戚のちょっと怖いけど面倒見がいいおじさんみたいなのもいいよね。
ツーステップの楽しいダンスで花を咲かせようとする二人
花を生き返らせるために目の前から消えてしまうフラー
話と途中で充電し始める僕
ソーラーパワー!
ここでしばらく休憩
父のプライド
氷の女帝と呼ばれるファッションデザイナーの顔と父ちゃんの娘のえっちゃん
関西弁ってなんでこんなにおもろいん?
552の豚まんちゃんと作ってるのおもろい
最後はけていく父ちゃんを見つめるえっちゃん
あの暗転が意図したタイミングだとしたらあの最後は意味が含まれているよな。
タイトルがそういうことなのかな
(大澤さんのTwitterより)
犬のペットショップ
前回のコントライブ『ねてもさめても宇宙人』の三つ目のコント『ラクーンホテルの受付』と同じオチ、おそらく役も同じだろう。(販売開始された台本を確認したら同じ名前だった)
ねてさめで一番好きかもしれんと思ったコントだったからまた別のバージョンが見られてうれしかったな。これからもやってくれるのかな?
「あんた狸だろ」のセリフの瞬間の会場の空気ったら。
一緒に見に行った友人は男性ブランコをもぐ殺で初めて見たひとだが、あのとき会場の雰囲気が「これ知ってる…!」感じだったらしい
ちょっと申し訳ない
「お客様も負けてないですよ!」
博士の純情な愛情
「バッカも~~~ん!!!」
「ツーステップ踏んだら楽しいねん、逆もまた然りや」
『花のない世界』の僕がデル太と呼ばれるAIロボットらしい
デル太を作ったアルファ博士と二人でこの世界にいて、博士から学んでいる。
知識を記憶して、感情を覚え、興味を持ったデル太
「(『ムカつく』という)この感情はもう懲り懲りだな」好きなシーン
ー 『ムカつき』について ー
「これからしょっちゅう出会う感情」
「できれば出会いたくない」
これまでのコントで何度も出てきた『ムカつく』というセリフを思い出させる。
いろんな登場人物がいろんなところで『ムカつ』いていた。
台本を読むとより気がつく『ムカつき』の多さ。
そして『比喩』、愛おしい
デル太の反抗期もかわいいよなー。平井さんが女性役じゃないときかわいい人間以外の役なんだな。
博士が語っているときの笑う練習をするデル太かあいい。よくない笑い方をするデル太ムカつく。
一本取られたのくだりも好き。
デル太が好きな絵本は『ジャックと豆の木』
今日読んでくれる絵本は"怪物"が出てくる話
博士が作ってくれた花の蕾
博士が最後にデル太にかけた言葉の中の
「これから自分で世界を切り拓いていくねん、そんなもん、生きるやろ」ってセリフ、強くてかっけぇ、沁みる
あの二人が埋めたでっかいそら豆、それだけ時間をかけて養分をためたから、でっかくでっかくなったのかな~
博士が作った花の蕾を、デル太が咲かせ、それに応えるように自然が生まれる
デル太も見たことのない景色が見られた
楽しいときはツーステップ
でも回るのはあかん、目回るゲエ出る
最後のセリフ、ツーステップからストップして向かい合うタイミング、ゲエ
音楽と花吹雪とぴっっっっったりで本当に本当に圧巻のラスト
感動ってこれだよな
両脇のお客さんラスト、EDで泣いてたもん
EDのトニーフランクさんの唄、魂震えますね
平井さんの詞、花の名前と色
この歌でこの日の全部を思い出せそうな、少し寂しいけど暖かくて輝いているように感じた。
何度も聴けるんだ。ありがたい。
アーカイブ配信期間は終わってしまったが、台本の第一稿を販売してくれる。
楽しみだ。
(発売されました!良すぎるだろ!会場で観てたものがここに!観ていない人も是非台本を!愛おしい!)
https://danbla.thebase.in/items/40695675
男性ブランコのコントライブは台本を電子版で販売してくれる。
今回の台本の装丁は川名潤さんがやってくれるらしい。
今回の単独のメインビジュアルも川名さんが手がけたそう。綺麗かっこいい。
川名さんも今回の単独を過去最高では、と大絶賛
他にも南キャンの山ちゃんとかもうとにかくみんな大絶賛なんす
もちろん笑えるけど涙腺に来る
(男性ブランコライブTwitterより)
最高のコントライブでした
あの公演自体が大切な思い出になりました
次も楽しみ、ツーステップ