【読書感想文】うつくしい人
うつくしい人 西加奈子さん
自分の声を聴くのって難しいよね。口と耳の距離はいちばん近いはずなのに。
”社会に”、”周りに”合わせて生きているのは、その時々は楽なのかもしれない。けど、「あれっ?」ってなる瞬間あるよね。
自分の心の奥底、無意識の深いところにある存在。そこに自然と寄せていってしまっている感覚。そんなことないと思ってたのに、ふと気づいたときは「あの人はどう言うかな?」って考えてしまっている、そんな自分が嫌になる。
この本は、重い。主人公の百合は、自意識過剰だ。
「そんなにあなたのこと見てないって。」「あなたが好きなようにすればいいんだよ。」「その怒りはあなたへじゃなくて他の人へだよ、大丈夫。」
こんな言葉をかけたくなる。でもきっと、もうすでに言われてきたのかな。ちょっとやそっと他人から言われた位で変わる程のものじゃないんだろうな。
そんな百合が、ある離島へ一人旅に出る。滞在先の海が見えるすてきなホテルで出会ったバーテンダーとドイツ人の青年。彼らと交流していく中で百合の心に変化が生まれていく‥。という話。
重いで始まって重いで続いていたお話が、最後はちょっと、いやだいぶ軽くなった。よかった。
百合ほどまではいかなくとも、自意識過剰な部分、きっと多くの人にもあるのかなと思う。
大きな判断をする時。
例えば、学校、仕事、お付き合いする相手、住む場所、結婚する相手を決める時。自分の決断軸で決めているつもりでも、「社会的に」「周りの人は」の軸が入ってきてしまう時がある。
選んだ道を正解にしていく
という言葉がある。
でもその「正解」って、何ですか?人それぞれじゃん?だからやっぱり自分の決断軸における「正解」を持っておく必要があるじゃん。
え、じゃあ自分の正解を持っている人が選んだ道なんてさ、正解なんじゃないの??
とかちょっとひねくれたくなっちゃう笑。
「社会」の環境によって、たやすく自分を見失ってしまうわたし。ただそこに「自分」として立っていることが、出来ないということ。
自分のことを見ている自分の目が、何重にもありすぎて、自分が自分でいることがどういうことか、分からなくなるんです。分からないんです。だから、誰の目も気にせずに、自由に、行動している人を、私は本当に羨ましいと思うんです。
もうわかんない!!!!(泣怒)ってなった時に、
「え、あなたが何にそんな悩んでるのかわからないっす。そんなことよりビール飲みましょ」
って言ってくれるような存在が大事なのかもしれない。もし本当にそうゆう場面に出くわしたら、「真面目に聞いてよ!!」って怒っちゃうかもしれないけど笑。
でもね、人なんて違うし。分かろうとすることはできるけど、完全理解なんかできないし。全く同じ経験をした人もいないしね。
だから、まぁまぁって言ってくれるような、そんないい意味ですごく他人事でいてくれるような。そんな存在が大切なのかもしれないなって思った。
海も変わるのだ。こんな立派な海が。では、私が変わることくらい、環境によって自分を見失ってしまうことくらい、起こりうることなのではないか。
百合が元気になれそうでよかった!って読み終わった後はとても安心した。
わたしも自意識を少し解放できた気もするし、
周りで悩んでいる人がいたら、ぜひこの本をおすすめしたい。
そして、「そんなことより、とりあえず甘いものを食べようぜっ」と言える適当な人でもありたい。
さらっと読めて、すっきりほんわか暖かくなる一冊。
またよむぞ~~♩
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