【読書感想文】きいろいゾウ
きいろいゾウ 西加奈子さん
”ムコさん”、”ツマ”と呼び合う田舎でのんびりと暮らす夫婦。最初はびっくりするくらい穏やかでまったりとした夫婦の日常。でも後半になるに連れて、二人の過去にまつわる話で一気に物語が進んでいって、、、
その日の出来事が”ツマ”目線で書かれた後に、おんなじ日の”ムコさん”の日記で彼目線の出来事が書かれている形式。おんなじ出来事なのに二人の視点が違かったり、「この行動は、そんな想いがあったのね」って優しさにほっこりしたり。
本当に前半は、寝る前にちょうどいい感じのおだやか~にふたりの日常が送られていて。
個性は強いけど暖かさでいっぱいの村の人々
美味しそうなごはん
ゆったりとした時間の流れ
が、いいな~東京にはない暮らしだな~と少しうらやましくなる。
でも後半は、「やっぱり人生そんな簡単にいかないよね」というか。
考えたくもないような、目を背けちゃいけない過去とか、直視したくない自分の内面とか。そうゆうものってきっと誰でも持っているんだろうな。
そうゆう「逃げたくなるもの」に向き合おうって思えるのってなんでだろうって考えた時に。その理由はやっぱり、月並みなのかもしれないけど、「大切な人の存在」なのかもしれないな、と。
僕はツマに会えたことは奇跡だと思っている。そしてその奇跡を日常にできたことを、本当に幸せに思っています。
今、一枚の手紙と、そして一冊の日記で、僕らの丸かったバランスが少しずつ崩れていっています。でもそれは、決して絶望的な崩壊ではなく、また新しい形、どんな形であれ僕らがその真ん中でやはり一緒にいようと思うための、再生のための崩壊だと思っています。
そんな風に思えるムコさんは幸せ者だな~と思うと同時に、強い人だな。逃げなかったもんね。かっこいい。
でもたとえ、「逃げる」を選んだとしても、その選択で「じゃあ次にどうするの」を自分のものにできれば、それでおーるおっけい!!って思うしね。
こんなにふわふわした穏やかな夫婦の話で、こんなに「ぐっさりと暖かさ」が感じられるとは思わなかったな。
ちなみに、物語の中に出てくる食事もめっちゃ美味しそう…。味の詳細とか料理の様子が出てくるわけでは全くないんだけど、シンプルで、素朴な、優しい味なんだろうな~よだれじゅるり。ってなってまう。
良き本でした。
また読む!