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濹東綺譚

濹東綺譚ぼくとうきだん 1937(昭和12)
永井荷風 1879〜1959

秀選名著復刻全集 近代文学館

永井荷風 58歳。
濹東綺譚ぼくとうきだん =隅田川東側の話

向島区むこうじまく(現・墨田区)にある私娼街、玉の井が舞台。小説家(永井自身といわれている)と若い娼婦との出会いと別れのストーリー。

表紙カバーがなく、白と黒のみ。挿絵に白黒写真。本全体に鮮やかな色彩はありません。

この本が出版されたのは1937年。盧溝橋事件がきっかけで日中戦争が始まった年になります。

玉の井

わたくしは殆ど活動写真を見に行つたことがない。・・・

濹東綺譚 P1、1行目
 

この時代、すでに活動写真という言葉は廃れ「映画」と呼ばれていました。そこをあえて昔の言葉を使う荷風。昔を懐かしんでいるのがわかります。

・・・スポーツの流行、ダンスの流行、旅行登山の流行、競馬その他博亦ぼくえきの流行みんな欲望の発展する現象だ。この現象には現代固有の特徴があります。それは個人がめいめいに、他人より自分の方が優れているという事を人にも思はせ、また自分でもさう信じたいと思っている。ーその心持ちです。優越を感じたいと思っている欲望です。明治時代に成長したわたくしにはこの心持ちがない。あつたとしても非常にすくないのです。これが大正時代に成長した現代人と、われわれとの違ふところですよ。

濹東綺譚 P173、3〜9行

大正時代に育った人たちとの違い・・世代間ギャップ。いつの時代にも*あるある*ですね

著作&発行人 永井荷風 *自費出版

大学との対立で教授を辞める、家庭を持つことを拒否する、などひとり暮らしで自由に生きた荷風。

玉の井での写真を見ていると笑顔いっぱいですごく楽しそう。笑 今の時代に生きていたらもっとはじけていたかも!?

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▶︎amazonで視聴できます *prime会員は無料
玉の井、荷風の邸宅、銀座のカフェなど。荷風の価値観や当時の様子を知ることができます。

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